1日の疲れと全身の汚れを洗い流してくれるお風呂は、私たちの日常生活において欠かせないものです。「入浴時間は1日の中でも特に大好きな時間」だと言う人も多いと思います。
しかし毎日のように身体を清潔にする目的で入っているにも関わらず、逆に身体が大幅に汚れてしまっている可能性について考えたことはありませんか?気を付けないと配管が雑菌だらけになっていて、そのせいで入浴後の身体が雑菌だらけになってしまっているかもしれません。
そこで今回は、普段は掃除することがないお風呂の配管内の掃除の仕方を含め、意外と知らない「お風呂は雑菌だらけの事実」ついてご紹介したいと思います。
意外と知らないお風呂のお湯のあれこれ
お風呂のお湯は原則「毎日交換」が望ましい
衛生上の問題から、お風呂のお湯は毎日交換したいところです。しかし「2人しか入ってないから」とか「あまり汗をかいてないから」などの理由で、2日連続で同じお湯を使うというご家庭も多いと思います。
毎日お湯を交換するのが当たり前という人にとっては「そんな不潔なことってあるの!?」と驚いてしまうかもしれませんが、意外とこういう家庭は少なくないんです。私の実家はまさにそんな感じでした。
ですがお風呂の中の雑菌は1日経つとものすごい勢いで繁殖するので、肉眼で汚れていないように見えても実際は雑菌だらけというのが現実です。あくまで目安ですが4人家族の場合だと、数十万もの雑菌が繁殖していることも珍しくありません。
雑菌は20℃~40℃が最も繁殖しやすいと言われているので、お風呂のお湯はまさに雑菌にとって繁殖しやすい環境ということになります。
お風呂水中の細菌は入浴直後ではなく、一晩放置で爆発的に増加する
上記は風呂水中の細菌数の推移を表した表です。お風呂のお湯を宵越しで使用するリスクが分かるかと思います。
誰しもが「体を綺麗にするお風呂(湯舟)では実際には体が汚れている」という事実は理解しているかと思いますが、実際に細菌の個数としてデータを見てしまうと、あまり気分の良いものではないでしょう。しかし実際には、これだけ細菌が増えているんです。
そしてこの風呂水は浴槽内だけでなく、給湯器内や追い炊き配管内にも存在します。これは浴槽の水を抜くだけでは完全に排出されないため、次に湯船に張る綺麗なお湯の中には、これらの雑菌まみれのふろ水が入っていることになるので注意してください。
レジオネラ菌の恐怖
お風呂を不衛生な環境にしてしまうことで一番恐ろしいのがレジオネラ菌です。屋外の土や水に生息しているレジオネラ菌が人間の体に付くことで家に持ち帰られ、お風呂の中で繁殖します。
レジオネラ菌に感染するとレジオネラ症を引き起こしてしまい、免疫力が低い人(乳幼児、高齢者、病気の方など)が感染してしまった場合、ひどいケースだと死亡者も出ているので決して侮ってはいけない存在です。
本来、レジオネラ菌は「周りの生活環境の中でも多数生息している菌」なので、普通の生活中に感染症を引き起こすことはほとんどありませんが、不衛生なお風呂などで爆発的に増殖すると危険度が高まってしまいます。
循環式浴槽(追い炊き機能付き風呂・24 時間風呂など)を備え付けている場合は、レジオネラ症を予防するため、浴槽内に汚れやバイオフィルム(生物膜。細菌で形成される「ぬめり」。)が生じないよう定期的に洗浄等を行うなど、取扱説明書に従って維持管理しましょう。汚れや「ぬめり」を落としてレジオネラ属菌が増殖しやすい環境をなくすことが大切です。
加湿器などからの感染を防ぐためにはどうしたらよいですか? – 厚生労働省
2日以上に渡って使用したい場合
どうしても「最低でも2回は同じお湯を使いたい!」という方は、上記の商品を試してみるといいかもしれません。使用後のお風呂に浮かべておくだけで、銀イオンが浴槽内に浸透し除菌してくれるのだそうです。
デオドラント製品なんかでもAgを採用している商品は少なくないので、菌に対しての効果は期待できるということなのでしょう。・・・ちょっと眉唾物のような気もしますし、私はここまでするくらいなら毎日お湯を交換しますけど。
何度も言うようにお風呂のお湯は毎日交換が望ましいのですが、どうしてもという場合は何かしらの対策をするのがいいでしょう。私自身は使用したことがありません(毎日交換派です)が、レビューを見てても「ぬめりや臭いは感じない」という意見が多いです。
正直、効果のほどを示してくれるデータは見つかりませんでしたが、何もしないよりは対策をした方がいいと思います。
浴室内の主な菌の住処
- 使用後1日以上経過した後のお風呂の残り湯
- お風呂配管(追い炊き配管)の中、給湯器のお風呂回路
- シャワーヘッドの内部、蛇口、排水溝
浴室内の主な菌の住処として気になるのは、特に上記の部分です。基本的にお風呂は全体的に注意しないとなりませんが、見えにくい部分は特に配慮することが必要です。
蛇口の内側なんて案外気付きにくい部分なのですが、黒カビが繁殖しているケースが少なくありません。湿気も高い場所ですし、なにより体内に入る可能性がある部分については特に注意してください。
お風呂の残り湯は洗濯に再利用しよう
お風呂の残り湯は捨てることが望ましいのですが、水道料金の兼ね合いもあって「毎日交換したいけど水道料金がもったいない!」という方も少なくないと思います。そんな人は洗濯に残り湯を使用してみてはいかがでしょうか?
1日経過することで雑菌は爆発的に増えるので「その前に洗濯用の水として使用してしまおう」という考えです。残り湯は洗いに使用し、すすぎは水道水で行うようにすることで洗濯物に菌が残るということは心配いりません。
配管内は定期的に洗浄しよう
お風呂配管の中は手が届かない部分なので薬剤の力を使います。「残り湯に薬剤を溶かし込んで追いだきする」タイプのものが簡単で使いやすいでしょう。有名な配管洗浄剤はジャバですね。
私は入浴剤を使用した際、ほとんど追いだきはしません。毎日お湯も取り替えていますが、配管洗浄は月に1回は行うようにしています。特に日常的に入浴剤を使用して追いだきしている方は、積極的に配管洗浄して欲しいと思います。
このジャバが優れている点は、誰でも簡単に手の届かない配管部分のメンテナンスが可能であるという部分です。浴槽自体に付いた汚れやぬめりは洗剤を付けたブラシで磨くことが可能ですが、お風呂の配管や給湯器の内部(循環ポンプや熱交換器など)はブラシで磨くことができません。
そこで追い炊き配管内を殺菌できるのが配管洗浄剤の力であり、その中で有名かつ安価に手に入りやすいのがジャバです。せっかく浴槽を清潔に保っていても、そこに流し込まれるお湯が清潔でなければ無意味なので、定期的に配管洗浄を心がけてください。
ちなみにジャバには1つ穴用と2つ穴用があります。大半のお家は1つ穴用だと思いますが、浴室に設置されているバランス釜で追い炊きしているという方は2つ穴タイプです。
手が届く部分は頻繁に掃除しよう
シャワーヘッドや蛇口などは手が届く部分なので、漂白剤や重曹を使用して清潔に保つようにしましょう。シャワーヘッドは取り外して漂白剤に付けるだけ、蛇口は水に重曹を溶かしたものをブラシに付けて磨くだけでも十分です。
この類の汚れは「頑固になってしまってからでは落とすのが大変」になってしまうため、頻繁に掃除してあげるといいでしょう。シャワーヘッドは内部に水が溜まるので、どうしてもカビが繁殖しやすいのが特徴です。
カビだらけのところを通ったお湯で顔や体を洗ったりすることを避けるためにも、定期的にチェックするよう心がけてください。
関連:シャワー水栓のカビ、水垢汚れを落として清潔なシャワーを浴びよう
排水口にはなるべく水以外を流さないように
排水口に流れてしまう髪の毛なんかも、対策するのとしないのとでは大幅に変わってきます。髪の毛は「汚れが絡みつきやすい」ため、そのまま流してしまうと配管詰まりの原因になってしまうことも多いです。
1枚フィルターを置いておくだけでも充分な効果が得られますので、対策しておくと日々のお手入れも楽になると思います。上記のようなヘアキャッチャーなら繰り返し使用できるので、コストパフォーマンスが優秀です。
意外と多い詰まりの原因は「シャンプー詰め替え用などの切れ端」で、これらは配管洗浄剤などの薬剤でも除去できないため、詰まらせてしまった場合は直接取り除かなければならないので注意してください。
浴室全体のカビの防止
浴室はどうしても湿気や温度の観点から、カビが繁殖しやすいという特徴を持っています。シャワー同様、しばらく放置してしまったカビ汚れは落とすのが大変です。
そんな時は上記の「おふろの防カビくん」などのアイテムが有効です。面倒くさがりな人でも、これを定期的に使うだけで浴室内の壁や天井にカビが生えにくくなります。手軽に行える防カビ対策として非常におすすめです。
あとは頻繁に手を加えることが最終的な近道だったりするので、入浴が終わった後に水シャワーをかけて温度を下げるくらいのことはした方がいいでしょう。多少面倒にはなってしまいますが、さらにその水を切れば完璧です。
関連:※お風呂のカビ対策決定版※綺麗で快適な浴室を手に入れよう
入浴剤は使用していいの?給湯器に悪影響じゃない?
イオウなどはNG!
給湯器の修理をしていると、お客さんから「入浴剤って使用していいの?」と聞かれます。答えは「入浴剤の種類による」です。衛生面に関してだけ言えば、入浴剤に含まれていることが多い「炭酸水素ナトリウム(重曹)」や「塩化ナトリウム」は雑菌の繁殖を防いでくれるため非常に効果的です。
ただし入浴剤の種類によっては、給湯器に影響がある場合があります。特にイオウが使われているものは好ましくないどころか、機器内部の腐食や水漏れなどの故障に繋がってしまう可能性が高いです。
イオウがNGなワケ
家庭用ボイラーのほとんどが機器内部に銅を使用しています。この銅がイオウと化学反応を起こし、腐食してしまうのです。
通常だと7年~10年の耐用年数がある給湯器ですが、イオウ成分を含むお湯を通した場合は耐用年数や使用年数に関わらず、水漏れなどの故障に繋がる場合が多いので注意しましょう。
温泉街などで少し硫黄を含んでいるような水で給湯器を使用している現場は、1年も持たずに水漏れなどの症状が出ています。
乳白色系の物もNG
イオウ以外にも乳白色系の透明でない入浴剤は、機器内部の部品に膜を張って影響を及ぼしてしまったりすることが多いです(よくあるのはポンプの詰まりや水温を計るための部品の不具合)。
透明なもの(例えばバブなど)であれば、そこまで影響はありません。ただし全く影響がないわけではないので、使用後のケアは必要です。配管や給湯器の風呂水通路部は手で洗うことができないので、薬剤による洗浄をした方がいいと思います。
関連:入浴剤が給湯器に与える影響|風呂釜を傷めるイオウは入っておりませんという表記は勘違いしやすい
最後に
ただでさえ湿気が多くカビなども繁殖しやすいお風呂場ですし、何より「綺麗になったつもりなのに実は雑菌まみれになっていた」なんてことは避けたいものです。
水滴や蒸気が口に入ることも往々にしてあるので、特にお年寄りや小さいお子様がいるご家庭では、より一層気を遣っていくべきだと思います。この記事が皆さまの快適な生活に役立てれば幸いです。