健康を気遣うのであればバランスの良い食事が必須です。ただ、いくらバランスの良い食事を心がけていても、実際に必要な栄養素を摂取できるかと言ったら、非常に難しい問題だと思います。
そんな時に便利なのが野菜ジュースの存在なのですが、市販されている野菜ジュースで野菜を摂ったことになるのでしょうか。「これ1本で1日に必要な野菜が含まれています!」と言うようなネーミングの商品が多いので、非常に気になる部分ですよね。
「野菜ジュースを飲む=野菜を食べたこと」になれば、これ以上ないくらいの頼もしい存在なのですが、栄養素の中には熱を加えると壊れてしまうものも存在しています。
そのため「カタチある野菜をジュースに加工する過程で、それらの栄養素が失われているのではないか?」と不安になる気持ちは否めません。
というわけで今回は『野菜ジュースで野菜の栄養は摂れるのか』を題材にして、まとめてみようと思います。
看板商品の紹介
『1日分の野菜(伊藤園)』と『野菜一日これ一本(カゴメ)』の2品が、よく飲まれている野菜ジュースの代表格だと思います。スーパーだけでなく、コンビニなんかでもよく見ますよね。
個人的には、この2つの商品が「わりと飲みやすく、野菜が摂れているという実感もある」という部分で気に入っているため、高頻度で愛飲しています。野菜ジュースの中には「確かに栄養はありそうだけど飲みづらい」という商品や「ジュースみたいに美味しいけど、野菜が摂れている実感が全く無い」という商品も多いです。
その点で上記の2品は砂糖・食塩不使用を謳っていますし、味も飲みやすく丁度いいと言えるでしょう。本記事ではこの2つの商品について、引き合いに出しながら進めていきますので、あらかじめご了承ください。
適正な摂取量
1日当たりの摂取目標
みなさんは1日にどの程度の量の野菜を摂ればいいかご存知でしょうか?
厚生労働省では1日当たり350g以上の野菜を食べることを推奨しています。しかし推奨こそしているものの、実際の統計では350gの野菜を摂取できている年代は皆無というのが現状です。
20代~30代の若い世代で顕著に野菜不足の構図が見られ、年を増すごとに徐々に摂取量は増えていく兆候にありますが、1番ピークの60代でさえ約330gと目標を下回っています(参照:厚生労働省 平成26年国民健康栄養調査)。
野菜ジュースに含まれる野菜量
『1日分の野菜(伊藤園)』と『野菜一日これ一本(カゴメ)』の両者に共通して言えるのが、パッケージにて「この1本でOK」というようなニュアンスの名称であること、それから、どちらも30種類の野菜350gを200mlに凝縮させているということです。
一見すると、350gの野菜を摂ることを推奨されていて、それだけの野菜を使ったジュース(しかも食塩・砂糖無添加)を飲んでいるわけですから、条件は満たしているように思えなくもありません。
ショ糖
砂糖不使用を謳っていても、本来の野菜が持つショ糖という成分は含まれており『1日分の野菜(伊藤園)』で3.7g~12.1g、『野菜一日これ一本(カゴメ)』で3.0g~5.4gのショ糖が含まれています。
砂糖が使われていないとは言え、糖質の一種であるショ糖の摂り過ぎが体に良いわけがありません。また、ナトリウムに関しても同じことがいえるでしょう。
特に注意したいのが、市販されている野菜ジュースの中には砂糖や果物類が多く使われていて、飲みやすいあまり「本物のジュース」のように感じる商品もありますが、もしかすると糖分の量が過度に入っているかもしれません。
「野菜ジュースの飲み過ぎは体に悪い」と言われる所以は、どうやらここにありそうです。
ジュースになったことによる弊害
濃縮還元
野菜ジュースの製造方法として濃縮還元という製法が有名です。海外で収穫した野菜を加熱して水分を飛ばし、ペースト状にすることで体積が減ります。
体積が減れば、それだけ輸送コストが安くなります。それを国内で水を加えて戻すのが濃縮還元(熱濃縮)の大まかな仕組みです。
国内で水を加えているので国内製造と記載されていますが、野菜自身の原産地は様々なのを確認しました。『1日分の野菜(伊藤園)』と『野菜一日これ一本(カゴメ)』に関しては、それぞれのホームページ上にて「どの野菜がどこのものか」という細かな記載がされています)
すべての原材料を国内の野菜で作ろうと思ったら、商品自体の金額がとんでもなく高くなってしまいそうですよね。
ただ、パッケージを見ただけでは国内製造と書かれていますし、使われている野菜の記載はあっても原産地までの記載はありません。
こういうカラクリを理解しているのと理解していないのとでは大きく変わってきますので、覚えておくのがいいと思います。
ちなみにストレートタイプでも搾汁・殺菌の過程で一部の栄養が失われてしまうため「濃縮還元だからストレートタイプに栄養が劣る」ということはなさそうです。
水溶性ビタミン
ビタミンB群やビタミンCは言わずと知れた水溶性ビタミンの一種で、水に溶けやすく熱に弱いという性質を持っています。野菜ジュースは製造の段階(搾汁・加熱殺菌)で、ビタミンCや食物繊維など一部の栄養が失われているのも事実です。
当然「どの野菜に含まれている何の栄養素か」も重要なので一概には言い切れませんが、野菜ジュースからビタミンCを摂るのは難しそうだと言えるでしょう。
食物繊維
また、野菜から摂りたい栄養の代表格の1つである食物繊維に関しても一緒です。食物繊維の中にも水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があるのですが、野菜ジュースには不溶性食物繊維がほとんど含まれていません。
水溶性:不溶性は1:2の割合でバランス良く摂取するのが理想とされていますので、野菜ジュースだけでは補えない部分ということになります。
食物繊維は1日に20g~25g摂ることを推奨されています。『1日分の野菜(伊藤園)』で2.0g~4.2g、『野菜一日これ一本(カゴメ)』で1.2g~2.9gの食物繊維が含まれているということですが、1日の摂取量に対して大きく不足していることがわかります。
野菜ジュースの栄養素
多く含まれている栄養
そもそも野菜には様々なビタミンのほか、カリウムや亜鉛、リコピンなど数多くの栄養素が含まれていますが、何の栄養素が含まれているかは野菜の種類にもよります。
例えば厚生労働省では1日当たり350g以上の野菜を摂取することを推奨してはいますが、キャベツだけで350g摂る場合とトマトだけで350g摂る場合では意味が大きく異なることがわかります。まして、キュウリを350g摂ったとしてもほとんどが水分です。
そう考えると一部の栄養は失われているものの、βカロテンなどの野菜に多く含まれている栄養に関しては、野菜ジュースから摂取することも大いに可能だということが言えるでしょう。
失われている栄養素
これまでの話の流れの中で、失われている栄養素として大きく取り上げたのがビタミンCと食物繊維です。柿、キウイ、イチゴなどの果物類にも多く含まれているので、一緒に摂ることで簡単にカバーすることができます。
食物繊維に関してはやはり野菜から摂るのが理想で、野菜ジュースからの摂取は難しいです。「野菜ジュースで野菜の栄養が摂れるのか」という本題に「完全には摂れない」という答えを出してくれる部分だと言えるでしょう。
自作の野菜ジュース
ミキサーかなんかで野菜ジュースやスムージーを手作りするのであれば、加熱処理などを施していないためビタミンも含まれたままですし、食物繊維も豊富に摂ることができます。
便秘に悩んでいる方は食物繊維が摂りたいと思うので、本物の野菜を手作りでジュースにしてあげることで、調理の手間を大幅に減らしながら野菜そのままの栄養が摂ることが可能です。
逆に下痢で悩んでいる方は、腸内環境が改善されるまでの野菜摂取に『1日分の野菜(伊藤園)』や『野菜一日これ一本(カゴメ)』のような野菜ジュースが最適だと思います。付き合い方を間違わなければ、非常に便利で素晴らしい商品です。
最後に
野菜ジュースはどこでも簡単に安く手に入れることが可能ですし、手軽に野菜が摂れるというのは非常に大きなメリットです。
野菜は収穫量によって価格が高騰することも多いですし、調理に手間もかかります。また、一人暮らしをしている場合だと「食べるのが追い付かずにダメにしてしまう」という方も多いのではないでしょうか。
あくまで野菜は直接食べた方がいいことは間違いありません。ただし推奨されている350gを摂取することが難しいのも1つの事実です。そんなときに『1日分の野菜(伊藤園)』や『野菜一日これ一本(カゴメ)』がサポート役として最適だと言えるでしょう。
野菜の摂取をこういった野菜ジュースに依存するのではなく、あくまで補助的な立ち位置として付き合うのであれば、これ以上に頼もしい存在はありません。うまく利用して、野菜と向き合っていきましょう。