格闘技の世界には『Pound for pound』と呼ばれる最強の称号、いわゆる「全選手に体重差がなかったら、1番強いのは誰か?」という永遠のテーマがあります。格闘技ファンたちは、決して答えの出ない疑問について「この選手じゃないか?」「いいや、こっちの選手だ!」などと、熱く語ったりするものです。
記録に残る快挙を成し遂げた名選手、長らくPound for poundと呼ばれている選手、無敗でリングを去った選手など実に多くの選手がいますが、記憶に残る選手と言ったら間違いなくこの人「ナジーム・ハメド選手」ではないでしょうか。
素人目に見ても、ことパフォーマンスという分野に関しては突出していて、おまけに実力も伴った名選手です。というわけで、今回は「ナジーム・ハメドの魅力」について語りたいと思います。
ナジーム・ハメドとは?
ボクシングのセオリーを完全に無視した、まさに「マンガのような戦い方」で相手を翻弄する選手です。ノーガードで相手を挑発したり、ジャブを打たない、ガードを上げないなどの、一見「相手を舐めているんじゃないか?」と思う行動を取る一方、超人的な反射神経と野生動物にも似た瞬発力でKOの山を築きました。
通算戦績は36勝1敗(31KO)で、元IBF・WBO・WBC世界フェザー級王者です。KO率が86%という数字も立派ですが、ガードをしないくせにほとんどダウンをしたことがないというのも大きな特徴なんですよね。
ちなみに誰もが知ってるマイク・タイソンのKO率が75%、モハメド・アリで60%です。それを踏まえると、ハメドの残した成績がいかに凄いものだったかがお分かりになるかと思います。
実際の試合
実際の試合を見てもらったら手っ取り早いと思います。「こんなふざけた試合をする選手がいるのか!」と思うくらいですが、実際に残した戦績も素晴らしいものなので、賛否両論がありながらも、彼が名王者であることには変わりありません(2014年に殿堂入りしました)。
入場シーンでもアクロバティックなリングインや、試合中のよそ見なんかは当たり前のようにしますし、その様子はまるでマンガの世界のようです。踊りながら戦うなんて前代未聞ですよ。こんな戦い方でも最終的には勝っていますし、そりゃ見ているファンは喜びますよね。
実際に上記の動画でも観客席は盛り上がりを見せていて、前列のお客さんには笑顔も見えます。色んな意味でプロだと言えるのではないでしょうか。
唯一の敗戦
彼が唯一負けた試合がこちらです。完敗と言えば完敗の内容で負けはしましたが、相手のバレラも相当強い選手(世界3階級制覇王者)ですから、まぁ仕方ない部分もあるのかなぁと。いつもなら相手のパンチをうまく避けるハメドも、1Rからカウンターもらって何回かグラついてますし。
このとき、ハメドがガードを上げて戦ったことに驚いたのを覚えています。「あ、本気出す時はやっぱガード上げるんだ」って思いました。それにしても戦い方が相当噛み合ったのか、それとも研究し尽くされたのか、面白いものでこの試合だけはハメドがそんなに強くないように見えてしまいますね。
マンガに登場
ハメドの戦い方を形容するには「マンガみたい」と表現するのが1番しっくりくるのですが、実はマンガに登場しているんです。
ボクシング漫画の『はじめの一歩』には、ハメドを元ネタにしたという『ブライアン・ホーク』と呼ばれるキャラクターが登場します。階級や言動、外観こそは違いますが、戦い方なんかは完全にハメドそのものですよ。
この頃の『はじめの一歩』は本当に面白かったので、興味のある人は読んでみてください。確か42巻前後だったと思いますが、ノーガードで戦うキャラクターが出てきますので、ハメドに興味を持った人は要チェックです。
【関連記事】
人気ボクシング漫画『はじめの一歩』が面白くないと感じたのは、いつからだろう – はてなの果てに。
最後に
スポーツという観点から考えると、あくまでスポーツマンシップに則って相手を称えるべきだと思いますが、格闘技となれば盛り上げるために相手を挑発したり、様々なパフォーマンスをするのも1つの面白みだと思っています。
そういう意味でも、今後2度とハメドのような選手は現れないだろうなぁというのが残念で仕方ないです。同時多発テロの影響でバレラとの再戦が流れてしまったことも、「もし再戦していたら・・・」という絵空事を描かずにはいられません。
本音を言うと厳しかったとは思いますが、あれだけの名選手がたった1回の敗戦でリングを去ってしまうというのは寂しいですね(敗戦後に1年のブランクが明けてから復帰していますが、バレラとの再戦は叶いませんでした)。
個人的には大好きなボクサーの1人です。Youtubeにも数多くの動画がアップされていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。