販売開始以降、各給湯器メーカーが販売にチカラを入れていたこともあり、最近は高効率給湯器の修理が従来型給湯器の修理の数を上回ったように思います。特にガス給湯器は、もうエコジョーズが大半となりました。
このエコタイプの給湯器、お客さん自身「燃費がいいものを使用したい」という人が多いのはもちろんなんですが、確かに燃料費だけで見ればお得になることがほとんどです。
実際に燃費が良くなるというデータも出てますし、なによりもメーカーがそれを売りにしていますから、時代的にも燃費の良さに惹かれる時代なんでしょう。ただしエコじゃない従来型のボイラーも未だに販売されています。
燃費が普通のものと燃費がいいものであれば誰しも燃費がいいものを選ぶと思いますが、従来型が未だに存在している以上、従来型にも「エコタイプにはない魅力」があると言ってもいいのではないでしょうか。
そこで今回は「給湯器のエコタイプはお得?エコ型給湯器のコスパに迫る」というテーマで進めていこうと思います。
エコタイプ給湯器の種類
- エコ型石油給湯器:エコフィール
- エコ型ガス給湯器:エコジョーズ
エコタイプの給湯器にはそれぞれ名前が付いていて、石油給湯器ならエコフィール、ガス給湯器ならエコジョーズという名前を持っています。2002年頃から販売が開始されたエコ型給湯器ですが、今ではガス給湯器のほとんどがエコジョーズと言っても過言ではありません。
ユーザーからすれば毎日使用する給湯器のことですから「燃費やコスパの良い方がいい」と考えるのが必然です。ただし、それが金銭的な要因だけの場合は少し考えた方がいいかもしれません。
というのも、エコ型給湯器には大きなメリットだけでなく、その裏に隠されたデメリットもあるからです。これは各メーカーの営業担当者もちゃんと説明してくれるとは限らないため、今一度「エコタイプ給湯器のメリットとデメリット」についてご紹介したいと思います。
エコタイプ給湯器のメリット
- 燃料費(灯油代やガス代)が安くなる
- CO2の軽減、環境に配慮された構造になっている
燃料費(灯油代やガス代)が安くなる
燃費効率が良くなった理由
ユーザーにとってエコタイプの給湯器を採用する1番のメリットはここです。というかこれ以外にないと言ってもいいくらい、エコタイプ給湯器の魅力は燃費効率の良さという1点に集約されていると言っても過言ではありません。
燃費が良くなる仕組みは「本来捨てていた排ガスを再び熱交換に使う」というもので、当然ながら燃費はそれなりに良くなります。本来であれば煙突から出る排気ガスは熱いんですけど、エコタイプの場合は排気ガスが熱くないんです。
今までは給湯器の排気等を触って火傷するなんてこともありましたが、エコタイプ給湯器の煙突は火傷するほど熱くなく、排ガスも60℃くらいになってます。ここまで熱を搾り取っているわけですから、それなりに燃費が良くなったことは間違いないでしょう。
どのくらいガス代、灯油代がお得になるか
肝心の燃費について実際どの程度安くなるかについては、取り付ける機器の熱効率とお住いの地域のガス料金(ガス給湯器の場合)、普段の使用量にも大きく左右されるので一概に言うことはできません。4人家族で通常の使用量だとすれば、年間10,000円程度の燃料費節約にはつながるんじゃないかと思います。
ちなみにリンナイの試算では、年間で約20,000円弱の節約になるということが公式サイトに書かれていますが、プロパンガスを普段から結構使っている家庭という前提の試算なので、都市ガスの場合だとそこまで節約できるケースは少ないのではないかと思います。
ノーリツ製エコジョーズの場合は、年間で30,000円以上のガス料金の節約ができるという記載がありますが、これは更に「エコスイッチと呼ばれる節水機能を利用した場合」という但し書きもあり、優良誤認を誘うとまでは言わないものの、かなり背伸びをしてアピールをしている感があります。
エコタイプ給湯器の燃費以外のメリット
エコタイプ給湯器に燃費以外のメリットは特にありません。
…というのは冗談で、CO2の削減や環境に対して配慮された構造になっているので従来の製品よりだいぶ地球に優しくなっています。以上です。
エコタイプ給湯器のデメリット
- 給湯機本体や施工費用など初期費用が高い
- 施工業者を正しく選ばないと施工ミスの可能性が高くなる
- 累計使用時間に応じて中和器の交換が必要になる
給湯器本体や施工費用など初期費用が高い
エコ型ガス給湯器の価格
- 24号:481,580円
- 20号:457,380円
従来型ガス給湯器の価格
- 24号:423,500円
- 20号:399,300円
使われている部品の数が従来型の給湯器よりも多いので、エコ型給湯器の方が本体価格が高いです。2021年現在は本体の価格差は随分と縮まりましたが、それでも本体の価格差はそれなりに残っています。
また、従来型からエコ型給湯器に移行する際に配管を1本増やす必要があるため、そのための経費もかかります。エコ機能を引き出すためのリモコン料金も高く、排気筒もエコ給湯器専用の物があったりするので、トータルの初期費用だけで見ると従来型よりも2万円~3万円ほど高くなるのが相場だと思います。
メーカー希望小売価格の時点では60,000円弱の金額差がありますが、実際に施工する場合はここから大幅値引きがあります。
マンションでエコジョーズに変更する場合は注意が必要
マンションにエコジョーズを設置する場合、ドレン排水の処理方法についても考えなくてはなりません。ドレン排水というのはエコ型給湯器内で発生する結露のことで、適切に処理する必要がある液体です。
屋内に設置されている場合は床に穴を開けて、床下で排水管と接続することになるでしょうが、マンションの場合は大抵お家の外の壁内に設置されているケースが多く、排水を取れるかどうかが重要になってきます。
排水が取れないような場合、別売り部材を使って「ユニットバスの排水設備を利用してドレンを捨てる」ということをするのですが、この別売り部材が15,000円~20,000円くらいするので、ここも痛い出費となるでしょう。
施工業者によってはエコ給湯器の正しい施工方法を知らない
エコタイプの給湯器を従来型の給湯器と同じように設置してしまうと後々困る場合があります。例えば上でも説明したドレン配管の施工を忘れてしまうととんでもないことになりますし、寒冷地の外置き給湯器の場合はドレン配管にも凍結予防をする必要があります。
最近はエコ給湯器の正しい施工方法も浸透してきましたが、未だに施工ミスをする業者がいるのも事実で、そのミスが給湯器の故障に繋がることも考えられます。お客さん自身は何も悪くないのですが、修理にはお金がかかってしまうことも考えられるでしょう。
あまり大きな声では言えませんが、良心的な設置業者さんであれば「修理料金はこっちで払う」と言ってくれる場合もあるのに対し、一部では「こっちのミスってことは伏せて上手いことやって」と言われることも多いです(自社の施工ミスなら責任を取るべきで、良心的というか当然のことなんですけどね)。
何社か給湯器交換業者を比較すると、頼りになりそうな業者は雰囲気でもある程度見抜くことができます。
一定時間の使用で交換が必要になる中和器の存在
当ブログでは給湯器の寿命も7年を超えたら覚悟した方がいいと言ってきましたが、エコタイプも寿命が長くなっているわけではありませんし、むしろエコタイプには「7年ほど経過したら必ず交換しなくてはならない部品」が存在します。
役割としてはドレン排水を中和する役割を持っているのですが、簡単に言うと「機器がかいた汗は酸性でそのまま捨てると配管を腐食させてしまうので、中和してから捨てるための部品」になります。中和する効果は薄れてくるので、そうなったら部品交換をしなければなりません。かかる費用の相場は、その部分の交換だけで15,000円~20,000円程度です。
燃料費を節約したくてコスパを追い求め、採用することになったエコ型給湯器でしか発生しない修理費用なので、多くのユーザーの不満に繋がる点と言えるでしょう。ちなみに交換しなければ給湯器は完全に停止してしまうため、中和器のエラー(E920)を出したら注意してください。
最後に
エコタイプ給湯器はお得になることが多いのは間違いないですが、各メーカーが言うほどお得になるかは微妙じゃないかと思います。よほどお湯を大量に使うという過程ならまだしも、多くの家庭において「初期費用+消耗部品の交換費用」を考えたときに、エコタイプにしたからと言って大きく得できるケースは稀でしょう。
それに純粋な部品数は増えているので、言い方を変えると壊れる場所が増えたという言い方もできます。お金の面だけを考えるのであれば「初期費用の段階で、従来型とエコタイプの金額差がどれだけあるか」で結果が分かれそうなので、2種類の見積もりをもらうのがいいと思います。そのうえで検討してみてはいかがでしょうか。