私は格闘技全般が大好きで、ボクシングを始めとする格闘技がテレビ放送されるときは、必ずと言っていいほど視聴しています。
最近は日本でもK-1やRIZINが盛り上がりを見せている他、先日は遂に井上尚弥選手がアメリカで鮮烈デビューしましたね。格闘技ファンとしては、非常に嬉しい限りです。
一方で、不可解な判定というかスッキリしない展開が目立つような気もしています。なんで、こんなことが起こるのでしょうか。
というわけで今回は「ボクシングの判定って色々おかしくない?」というテーマに沿って、私なりに思うことを書いていきたいと思います。
※本記事はボクシングを熟知している人ではなく、初心者向けの記事です。
格闘技の決着は、基本的にKOか判定
ボクシング、UFC、K-1…なんでもいいのですが、格闘技の決着は基本的にKOか判定によって決まります。
KOの中には「10カウント中に立ち上がれない」「レフェリーが危険だと判断して試合を止める」「相手の試合放棄」などがあり、それらで決着がつかない場合は判定によって勝敗が決まります。
KOは誰の目から見ても勝ち負けがハッキリするので分かりやすくていいんですけど、判定になってしまうと素人目線では少し厄介です。
ボクシングの基本的な事項
日本が認めているボクシング団体は4つ
- 世界ボクシング協会(WBA)
- 世界ボクシング評議会(WBC)
- 国際ボクシング連盟(IBF)
- 世界ボクシング機構(WBO)
ボクシングの世界チャンピオンと聞くと、普通に考えたら「世界で1番強い人」ですが、正確には「その団体で1番強い人」ということになります。日本で認められているボクシングの団体は上記の4つです。
例えば、現在の日本のボクシング界を牽引している王者の1人でもある井上尚弥選手は、WBO世界スーパーフライ級のチャンピオン(2017/09/19現在)です。スーパーフライ級かつWBOの中で1番強い人ということですね。
つまり同じスーパーフライ級の中に、世界チャンピオンとされている人物が井上選手の他に3人いるということです。
一定条件下で兼任も可能
先ほど「井上選手も世界王者だが、4人のうちの1人しかすぎない」というニュアンスのことを書きましたが、中には1人で複数のベルトを持つ選手もいます。
ちなみに超有名なボクサーであるマイク・タイソン氏は、WBA・WBC・IBFの3団体統一王者として有名です。「WBOは獲れなかったの?」と思うかもしれませんが、WBOは新しい団体なので、タイソン氏の全盛期にはまだ設立されていなかったように記憶しています。
先日(2017/8/19)、アメリカのテレンス・クロフォード選手がスーパーライト級4団体の統一王者となりました。
団体によって微妙にルールが違う
WBAとWBCなど団体が変われば、微妙にルールも変わります。当然ながら「キックOK」とか「裏拳OK」というものではありません。ボクシングの基本的なルールはそのままに、採点方法や倒れていい回数などが変わります。
分かりやすい部分で言ったら、WBCは「オープン・スコアリング・システム」というものを採用していて、試合中(4Rと8Rの終了時)に採点を公開しています。
個人的にはこれが分かりやすくていいと思うんですけど、WBC以外の3団体では採用されていません。
公開採点制度(オープン・スコアリング・システム)について
メリット
- 観客にとって戦況が的確に把握できる。
- セコンドも以降のラウンドの作戦が立てやすくなる。
- ポイントで挽回することが困難になった選手は積極的にノックダウンを狙わざるを得なくなり、アグレッシブな試合を観戦できる。
- 3人のジャッジがどのような傾向で評価しているかを掴むことが出来、いわゆる「不可解な判定」が少なくなる。
大きなメリットとして言われているのは、上記の4点です。第一に、ボクシングを見ている観客が戦況を判断できるというのが大きなポイントと言えるでしょう。
あとはジャッジにも「積極的な選手を評価する」とか「あくまで有効打にこだわる」などの好みがあるので、それを試合の途中で選手が気付けるというのも大きいと思いますね。
「勝ってると思ったのに、いざ判定になったら負けてしまった」ということが、比較的起こりにくいと言えるでしょう。
デメリット
- ノックダウンではなく、ポイントアウトを狙った試合運びが容易になってしまう。
- ポイントの挽回もダウンを奪うことも困難になった選手は、諦めてしまい試合を投げ出してしまう。
- ポイントで優勢になった選手は守りの姿勢になってしまい、アグレッシブさがなくなり「倒されなければよい」というボクシングになってしまう。
基本的にはメリットとデメリットは表裏一体と言えそうな内容です。
まぁサッカーなどでも残り時間と現在の得点差によって戦い方を変えるのはセオリーなので、個人的には途中の点数を知ることで消極的な選手が出てくることよりも、結果発表になってワケのわからない結果を下されることの方が嫌だと思うんですけどね。
ボクシングの採点方法について
10ポイント・マスト・システム
ボクシングの試合では「10ポイント・マスト・システム」と呼ばれる採点方法が採用されており、ラウンドごとに優位な方を10点とする減点方式となっています。よくテレビで放送されている世界戦は12Rですから、120点満点で採点されているということですね。
ラウンドごとに見てみると、どちらも優劣つけがたい場合は「10-10」で、どちらか一方が優勢だと判断した場合は「10-9」や「10-8」となります。
基本的には「玄人や素人にしかわからないような差」や「素人目に見ても優勢なのはわかるけど、ダウンがないしダウンしそうな気配もない」という場合は1ポイント差、ダウンがあれば2ポイント差、2回ダウンすれば3ポイント差と点数差がついていきます。
ラウンド・マスト・システム
これが非常に厄介です。素人はおろか、ボクシングのプロが試合を見ていても、採点した点数に差が生まれる大きな要因となっているのが、この「ラウンド・マスト・システム」です。
簡単に言うと「優劣つけにくいからって10-10ばっかりにするんじゃねーよ」というシステムです。ジャッジは「少しでも差があるなら10-9にしなさい」と暗に言われているんですね。特にWBAに関しては、この制度が厳格です。
2017/5/20の村田諒太選手とアッサン・エンダム選手の試合における疑惑の判定は記憶に新しいですが、おそらくこれが原因でひらいた点数差ではないかと思っています。
各ラウンドの採点基準
採点基準は大きく分けて次の4項目があります。
① 有効なパンチによって、どちらが相手により深いダメージを与えたか。
② どちらが、より攻撃的だったか。ただし、有効なパンチを伴わない単なる前進は評価の対象となりません。
③ どちらがよりディフェンス技術を駆使して相手の攻撃を防いだか。ただし、これも攻撃に結びつかない単なる防御は評価の対象とはなりません。
④ リング・ジェネラルシップといって、どちらの試合態度が堂々としていて、戦術的に優れていたか。どちらが主導権を握っていたか。
各ラウンドの採点基準に関しては上記の通りです。見てもらったら分かるように、素人にはよくわかりません。というか、ジャッジ以外にはわかりません。
というのも、ゲームとは違って与えたダメージを数値化できるわけではないので、採点の基準に「有効な」「深い」と言われると、もうワケがわからなくなると思うんですよね。ボクサーだってパンチをもらってそれが効いたとしても、効いたと相手に悟られないようにするわけで…。
極端に言うと「全然効いていないけど確かに当たっているパンチ数発」と「かなりクリーンにヒットしたパンチ1発」のどちらを重んじるかは、レフェリーの好みによる部分もあるということです。
ボクシングの判定がおかしいように思う理由
2017/5/20、WBA世界ミドル級タイトルマッチ
ここからは個人的に思っている部分ですが、2017/5/20の村田諒太選手とアッサン・エンダム選手の試合を例に書きたいと思います。この試合は12ラウンドを戦い抜いて、判定勝負にもつれ込んでいます。
村田選手はダウンも取っていて、明らかな有効打を何発もヒットさせていました。しかし全体的に手数は少なく、エンダム選手はダウンこそしたものの全体的に足を使って立ち回りながら、明らかに多くの手数を出していました。
結果は2-1で村田選手の負け
私の中ではダウンも取っている村田選手が勝ったと思いましたが、結果は以下の通り。
- 111-116
- 112-115
- 117-110
素人目に見てもエンダム選手のダメージは大きいものでしたし、何よりエンダム選手はダウンしています。
上にも書いたように1度ダウンを取れば10-8とされることが多いわけですが、2人のジャッジが「あと1回、村田選手がエンダム選手をダウンさせていたとしても、エンダム選手を支持していた」ということになるのには驚きです。
最終的にWBAの会長が「この判定はおかしい」ということで、エンダム選手を支持した2名のジャッジに6ヵ月の資格停止処分を与えています。しかし個人的には誤審というよりも、ジャッジの好みが大きく表れただけのようにも思えるんですよね。
村田選手は的確にダメージを与えるパンチを打っていましたが、全体的に消極的に見られたのは言うまでもありません。パンチの数は明らかに相手の方が多かったですから(「じゃあリングの端でシャドーボクシングしてたら勝てるのか?」って説もありますけど)。
ラウンド・マスト・システムと公開採点制度
恐らくですが、村田選手の手数があまりにも少なかったということで、ダウンを取ったラウンド以外のほとんどがエンダム選手に流れてしまったと考えるのが自然でしょう。
本来であれば10-10にしたかったところが、WBAのルールで10-9とエンダム選手を支持しなくてはならなかったのではないかと。
もしこれで公開採点がされていれば、村田選手のセコンドも「手数でポイントを取られている」ということで、ダウンを奪った時にKOを狙いに攻めていたかもしれませんね。
この採点の大きな問題
個人的には「WBAは有効打やダメージよりも、手数や積極性を重んじる団体なのね」ということで、次こそ勝ってくれという感じだったんですけど、スコアを見ると大きな問題に気付きます。
WBAのジャッジ3人が同じ試合を見て、なぜ1人は7ポイント差で村田選手を支持しているのに対し、かたや5ポイント差でエンダム選手を支持しているジャッジがいるのかという点です。
拮抗した試合で三者三様の判定になるのは分かるとして、大差でAが勝ったという人と大差でBが勝ったという人が出ちゃいかんでしょ。
世紀の一戦でも問題が浮き彫りに
2017/9/17に行われたWBA、WBC、IBF世界ミドル級タイトルマッチ、ゲンナジー・ゴロフキン選手vsサウル・アルバレス選手ですが、ここでも不可解とされる判定が出ました。結果は三者三様のドロー、ただしその内容は…。
- 115-113
- 114-114
- 110-118
「110-118」ってなんやねーん!!!ちなみにこのジャッジを下した人物(アドレイド・バード氏)は、どうやらいわく付きの人物だという噂も。…そんな奴を世界タイトルマッチでジャッジさせないでくれ。
あ、ちなみに現WBA世界ミドル級王者は村田選手に勝ったエンダム選手ですが、現WBA世界ミドル級スーパー王者はゴロフキン選手です。この辺も素人にしてみたらワケわからなくて嫌ですよね。
まとめ
個人的にはボクシングが大好きですが、ここまでワケのわからない判定が続くと「なんだかつまらないなぁ」と思ってしまいます。
最悪、自分にはわからなくてもジャッジの人たちがちゃんとした結果を出してくれればいいんですよ。プロが見ても結果に大きな違いが出るというのは、もはや致命的ではないでしょうか。
素人考えですが、ジャッジの人数を5人以上にするとか、おかしな判定をしたジャッジには重いペナルティを与えるとかして欲しいものです。