「RAINBOW -二舎六房の七人-」という青年マンガをご存知でしょうか?私の中では「ザ・青年漫画」という位置付けに長らく君臨し続け、とにかく読了後に押し寄せる「良い意味でのモヤモヤ感」というか「何かを考えずにはいられない感」みたいなものが、これまで読んだ作品の中でも桁違いに凄かった作品です。
話のテーマが非常に重く、読み進めると夢中になっていくことは間違いないのですが、それを面白いという言葉で括ってしまうのには語弊があるというか・・・。とにかく悲しくもあり、そして残酷な物語なんです(なのに読んじゃう)。
もしテーマが重いマンガとかダークな世界観を持ったマンガを探している人がいたら、ピッタリのマンガじゃないかなぁと思います。というわけで、今回は「RAINBOW -二舎六房の七人-」というマンガの紹介です。
物語
コミックス1巻
戦後まもなくの荒んでいた日本という設定の下、それぞれ異なる罪状で湘南特別少年院に収監されることになった七人の男たちが繰り広げる「世の中の不条理」や「逃れられない苦しみ」などをテーマに描かれている作品です。
普通に考えたら「悪いことをしたんだから、捕まって当然」ってところなんですけど、七人が犯した罪と言うのが「正当防衛」だったりするので、この時点で既に不条理さみたいなものが伝わってきます。
二舎六房というのは、少年院におけるクラスみたいなものなんでしょうかね。新たに収監されることになった六人と先に入っていた先輩一人の合計七人が、教官のイジメに耐えたり、お互いの痛みを共有し合ったり、時に脱走を企てたりする「アンダーグラウンド感が満載」のストーリーと言っていいでしょう。
本作の魅力
表現力という言葉を超越しているナレーション
物語の途中途中で入るナレーション(登場人物の誰の発言でもない状況解説のようなもの)が、とにかく秀逸で驚かされます。例えば私が最初に度肝を抜かれたナレーションはコチラです。
少年たちは寄生虫の検査という名目で、逆らうこともできずに尻の穴に硝子棒を突き込まれた。どんなに傲慢な政治家でも、これをやられた途端に虚脱して、官に反抗する気力を喪うのだから、少年たちがどんな想いだったか、想像に余りある。この時、少年たちは、地獄の釜の底を見た。
コミックス1巻
ちょっと変態気質な医者に弄ばれるという、物語の最初に行われた「寄生虫の検査を終えた後のナレーション」なんですが、マンガであるにも関わらずイマジネーションを刺激される語彙力というか、表現の仕方の秀逸さというか・・・とにかく重いです。
「地獄の釜の底を見た」って一文は、おそらく「これ以上、堕ちる所がない場所まで来た」という意味なんでしょうけど、なかなか表現できませんよ。こういった秀逸なナレーションが随所に放り込まれていて、そのクオリティは思わず唸ってしまうレベルです。絵も上手い作品なんでアレですけど、これだけ上手い表現ができるなら小説としても楽しめるんじゃないかと思いますね。
スリル溢れる数々のシーン
コミックス1巻
「ステルスゲームをプレイしているドキドキ感」に近いスリルを感じられる場面が多々あります。最初にそれが訪れるのは「脱走(脱獄?)」のシーンです。
七人のうちの一人が「家族にどうしても会いたい」と言えば、それを残りの六人が全力でサポートして脱走させるというシーンがあるのですが、常に「そろそろ捕まるんじゃないだろうか?」というスリル・緊張感が付きまといます。
ここでの教官は非人道的な行いをすることが多く、収監されている人間たちに対して人間とは思っていないフシがあるので、これまでの描写からも「捕まったらどんな目に遭うか」が容易に想像できるという点でも、緊張感を増していると言っていいでしょう。良い意味で終始落ち着かないというか、ドキドキしながら読むことができます。
腹が立つほどの陰湿な所業
コミックス2巻
色んなドラマなどで見たことがあるんですけど、実際に仮釈放というか「外に出られる日」が近くなると、いわゆる「ちょっかいを出してくる人間」というのがいて、そいつらの腹の立つ感じも完璧です。
実は彼らは教官の差し金だったりするんですけど、黙って耐えていたにも関わらず、ある事がキッカケでこれまでのうっぷんが晴れたときの爽快感のようなものは、どこぞのスッキリバラエティーよりも遥かにスッキリします。
熱い友情
二舎六房の七人は「とてつもなく大きな絆」で結ばれていて、この七人のほとんどには血の繋がった親こそ居ないものの、この七人がある種の家族なんじゃないかと思えるくらいです。誰かが困ってたら命を張って助けたり、誰かが虐げられたら全力で報復をしに行きます。
例えばですけど、クラスの誰かが風邪をひいて学校を休んでいるときに、届け物をしなきゃいけないという状況があったとしましょう。みんな放課後に遊ぶ約束をしていて、一目散に遊びに行きたいのに「クラスの誰かが学校を休んでいるアイツに届け物をしなきゃいけない」という場面で「ジャンケンに勝った人が届ける」ってなると、なんだか絆みたいなものを感じませんか?
普通であれば貧乏くじを引いたと言ってもいいような役回りを、全員が取り合うという・・・。なんとも言えない、気を抜いていると涙すら出てきそうな友情の数々も本作の魅力の一つです。
少年院を出てからが本番
これまではほぼ少年院の中で起こる出来事にスポットを当てて紹介してきましたが、全22巻というボリュームの中で少年院が描かれているのは5巻程度ですし、あくまで少年院を出てからが本作の本番です。
しかし、理不尽に虐げられていた日々が劇的に変わるということもなく、少し残酷で目を背けたくなるような背景は、外の世界に出ても一切変わることはありません(むしろひどくなったかも)。
もちろん「色んな意味でお世話になった教官たちに対する報復」なんかもありつつ、それぞれが夢に向かって邁進していく姿も描かれていて、生きていく力強さが感じられる場面は増えたように思います。
逆に言うと「光が濃くなった分、影もまた・・・」という表現がピッタリですかね。全22巻というボリュームも長すぎず短すぎず、お腹一杯にさせてくれるでしょう。
アニメ化
本作はアニメ化もされています。「アニメになることで、本来の残酷な雰囲気が損なわれていないだろうか?」という心配が懸念されましたが、特に世界観が損なわれているような違和感みたいなものは感じませんでした。
有名な声優さん(俳優さん&女優さん)も数多く出演されていて、素晴らしい仕上がりだと思います。活字が苦手だと言う方や「アニメも見てみたい!」という方は、こちらもチェックしてみてください。
(2017/02/15追記分)
現在『U-NEXT』という動画配信サービスでアニメが視聴できます。U-NEXTは有料サービスですが1ヶ月間であれば無料体験できますので、興味のある方は視聴してみてはいかがでしょうか。
ナレーションを担当しているのが林原めぐみさん(綾波レイの声優さん)で、なんとも良い味を出していました。他のアニメも豊富なので、興味のある方はぜひ無料体験してみてください。
※内容は時期によって変更している可能性があります。
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最後に
ちょっと怖いもの見たさのような部分がありますけど、非常に面白い作品だと思います。なにより少年院から出ているにも関わらず、様々な困難が待ち受けているという部分に関しては「もうこいつら幸せにしてやってくれよ!」と思わざるを得ません。
そして物語序盤の出来事が数年後の伏線になっていたりもするので、良い意味で読むのが疲れるマンガだと感じました。「ありきたりのハッピーエンドなんか見たくない!」という方に心の底からおすすめします。
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