2009年~2012年まで別冊フレンドにて連載されていた『隣のあたし』ですが、絵に惹かれてジャケ買いしてしまいました。Amazonにてそこそこ手厳しいレビューが連なっていたので期待せずに読んだところ、個人的には(よくわからない部分もあったけど)普通に面白かったです。
何が面白かったかって話に関しては、本記事で掘り下げていきたいと思いますけど、まず「これまでにあまり見てこなかったパターンの少女漫画」っていう部分が大きいですね。大人からは共感が得にくいタイプのマンガだとは思いますが、若いコたちには受け入れられるんじゃないかと思いました。
というわけで今回は、なるべくネタバレ無しで『隣のあたし』を個人的に良かったと思う部分とイマイチに感じた部分を交えながら紹介したいと思います。
あらすじ
中学3年生の主人公・仁菜は、マンションで隣に住んでいる1個上の幼馴染・京介に恋愛感情を抱いていました。ある時、京介が同じ野球部に所属している女子マネージャーとキスしている現場を目撃してしまいます。
仁菜は京介に詰め寄りますが返って来た答えは芳しいものではなく、「付き合ってもいない人とキスをする」ということが全く理解できない仁菜は、これを機会にすこしずつ京介の隣にいられなくなっていきました。
隣りにいられなくなっていっても、消え去ることのない恋愛感情。「終わり」から始まる、切なくも青春の空気がたまらない恋愛ストーリーです。
二言目には「キス」
主人公が中学3年生の女の子ということもあってか、二言目にはキスがどーこー言ってる印象です。「なんでキスしたの?」「付き合ってないのにキスできるの?」みたいな。中高生独特の「先に進みたい感」って言うんでしょうかね。読んでいて、それを大きく感じました。
そういうことに対して好奇心旺盛に見られる人、話を聞ける人、ドキドキできる人なら楽しめるんじゃないかと思います。なので比較的若い層は楽しめて、大人になってから楽しむのは難しいような印象ですね。・・・私は若くないですけど。
珍しい感じの主人公
コミックス1巻
ありがちな設定としては、主人公って自分に自信が無い系の女の子が比較的多くて、自分の言いたいことを幼馴染相手でもなかなか言えなかったりするケースが多いじゃないですか?本作では「幼馴染のキスの相手」に、結構辛辣な言葉を浴びせたりします。
中学生とか高校生の頃って、1つの年齢差がかなり大きいものだったりもするので、1個上の女の子に向かって言いたいことをずけずけ言うってのは、かなり新しいパターンじゃないかと思いましたよ。ここには非常に斬新さを感じました。
ヒーローの魅力
コミックス2巻
あんまヒーローって言い方好きじゃないんですけど「女の子=ヒロイン」なら「男の子=ヒーロー」ですよね?とりあえず本作で言うところの京介(主人公の仁菜が好きな男の子)です。通常、少女漫画に出てくる男の子って、相場が「頭が良い」か「勉強できる」か「その両方」が関の山じゃないですか?個人的にはそういう設定を見ては「バカのひとつ覚えもいいとこ・・・」なんて思ってたんですけど、意外と初期設定って重要なんだなぁって思いました。
というのも、本作に登場する京介は学年が違うこともありますし、同じ高校の1年と2年ならまだいいんですけど、中3と高1ですから接点が少ないんですよね。野球部のイイ選手ではあるみたいなんですけど、イマイチ魅力が伝わってこなくて・・・極端に言うと「仁菜はなんでこの男に好感を持っているのかがわかりにくい」です。
京介の守備位置はセンターなので「俊足・巧打」なことは予想できるんですけど、ここは「エースで4番」のありがちな設定ってのも重要なんだなぁと。「自分を大事にしてくれる優しい男の子」って雰囲気もありませんからね。なんで仁菜が京介のことを好きなのかは、最後の最後まで不思議でした。
第三のキャラ
麻生 結衣子
コミックス2巻
京介にキスをした張本人で、後に京介と付き合うことになる野球部マネージャーです。絵の感じはメチャクチャ可愛いですし、正直言って「ビジュアル的にはコッチが主人公じゃね?」って思ったりもします。
京介と付き合っている一方で、OBの久米川と京介を天秤に掛けているような描写も伺えるので、「もしかすると京介とは遊びなのかな?」と思う部分もあり、よくわからないキャラでした。
久米川 瑛児
コミックス2巻
京介が所属している野球部のOBで、麻生の元カレ。元なのかな?現かもしれないけど・・・。彼もよく分からないキャラでしたね。麻生に対して執着こそしていないものの、都合の良いときだけ利用しているって感じでしょうか。
高校時代は名選手だったみたいですが、大学では開花せずに埋もれてしまっているようです。ことあるごとに母校に顔を出しては偉ぶっていた気がするので、嫌なヤツというイメージしかありません。
三宅 瞬
コミックス4巻
仁菜に想いを寄せるバスケ部所属の好青年です。私は彼に助演男優賞みたいなものを贈りたいです。基本的に少女漫画の三角関係を成立させるための「第2の男」ポジションの男の子は、総じて仏と見間違うくらいのイイ奴であることが多いですが、こと彼に関しては非の打ちどころがありません。すっげーイイ奴です。
イイ奴すぎて実際にいたら、引いてしまうレベルですね。ぜひとも彼には幸せになってほしいと思います。
恋の行方に注目
今作でもアッチコッチに矢印が向いてますけど、最終的に向かう位置がハッキリしたら、あとは結末を見届けるのみです。個人的には本作の結末は非常に好きですね。粗削りな感じは否めないですけど、恐れていたことが起きなかっただけでも良しとしましょう。
私の足りない理解力では「結局アレはなんだったの?」って場面も少なくなかったので、機会があれば考察していきたいと思いますが、恋の行方に関して軽く言及するとすれば、あまり見ないタイプの終わり方だと思うので、私としては満足です。
最後に
絵が可愛くて非常に読みやすい少女マンガでした。最初は「やたらキスに執着するマンガだなー」って少しウザったかった部分もあったんですけど、そんなん言ってたら全部が同じような作品になっちゃう気もしたので、これはこれでイイんだと思うことにします。
次から次へと恋敵が出てきて・・・みたいな、ありきたりな展開じゃないから粗が目立っているだけのような気がしないわけでもないので、私としては「面白かった」と言いたいですね。もし興味がありましたら、ぜひ手に取ってみてください。