『日々、蝶々』は感情移入できない少女漫画だけど面白い

2012年~2015年頃までマーガレットで連載されていた作品で、元々は読み切り作品だったものが、後に連載作品となった『日々蝶々(全12巻)』ですが、これまた新しいタイプの少女漫画で、とても面白く読ませていただきました。

通常、恋愛漫画・少女漫画のセオリーと言えば「自分がその登場人物になったような感覚」という部分が大きいように思えます。基本的には「憧れの対象」じゃないかと思うんですけど、本作で描かれている恋模様は憧れとはまた違うんですよね。なんとなく応援したくなる感じ・・・とでも言いましょうか。

というわけで今回は、ノイズの少ない少女漫画『日々蝶々』について紹介します。

目次

どんなマンガ?

コミックス1巻

極度の人見知りで異性はおろか同性とも上手く喋れない女の子と、同性とは喋れるものの女の子との接し方がわからない男の子が織りなす青春ラブストーリーです。

人見知り&恋愛に消極的な姿勢が全面的に押し出されているので、いわゆる「次々とライバルが現れて不安になったり、ケンカをしたり、仲直りをしたり・・・」というお約束の展開はほとんどありません。

恋に奥手な人が読んだら感情移入できないこともないかもしれませんが、通常のそれとはレベルが違うほどの人見知りなので、読む人にとっては「読んでてイライラする」という気持ちもわからなくもありません。

個人的にはスローテンポでじっくり進んでいく感じが非常に好きで、イライラするというよりは応援したくなるという想いの方が強く感じた作品でした。

 

タイトルの由来

まず第一に『日々蝶々』というタイトルが秀逸だと思ったんですけど、主人公の柴石すいれんが学校中の男子からモテまくる『高嶺の花』に起因するものと思われます。名前もまた「すいれん」ですし・・・。

それに対して恋のライバルが言い放った「高嶺の花より蝶々の方が好きな所へ行けるんだからね」という言葉にも大きな意味がありそうです。私は「蝶々のようになろうとしている日々」という意味合いに捉えましたが、読者によって色んな見方ができるような気がしました。

見所

典型的な純情恋愛のステップ

コミックス1巻

自分が中学生の頃なんかを思い出すとまさにそうなんですけど、最初は毎日会えるだけで良くて、それが他愛のない会話ができるようになってきたりすると、今度はあーしたいこーしたいって徐々にワガママになっていく感じって言うんですかね。

「異性で喋れるのは自分だけ」って状況に、「自分が特別な存在だから?」というのと「異性として意識されていないから?」というのの両方で揺れ動く感じ。ここがメチャクチャ共感できました。

敬語で喋ってるのも名前の呼び方にしても、少しずつ親密になっていく感じが駆け足じゃないので、大事にしてる感もあってメッチャ好きです。・・・まぁ人によっては「ちんたらしすぎてイライラする」って感想が出るのもわかりますけど。

 

純愛ならではの表現

コミックス1巻

自分の気持ちを上手く伝えられないという前提があるからこそ生きる描写・シーンがあって、例えば上記画像のシーンなんかがそうですね。

黙って大好きな彼を眺めてはいるものの、やはり根底には「こっちを振り向いて欲しい」という想いがあって、それを表現するのに「後姿はいや、横顔もいや」と言っています。そのあとで上記画像のシーンがくるんですけど、一種の文学作品のような感じと言うか「純愛ならではの表現だなぁ」と思いました。

 

強く握った手

コミックス2巻

例えば、勢いに任せて強い力で相手の手を握ってしまったときに、何を思うかって部分なんですけど、「嫌がられないだろうか?」って不安もありつつ「このまま握っていたい」って気持ちもあったりして、最終的には手汗が気になって振りほどいてしまうこともあると思うんです。

すごい ものすごく恥ずかしいけど もっと一緒にいたいって 伝わるのならいい

コミックス2巻

それが本作では相手がどう思うかというよりも、そもそもの意思疎通が上手くできないという前提があるので、なんとかして想いを伝えたいという部分から始まってまして・・・。

言葉足らずだからこその切り込み方というか、実際に言葉にできないシャイな部分みたいなのが、非常に面白く読み進められました。ここは間違いなく大きな見所だと思います。

感情移入できない部分には注意

ここがまた少女漫画としては珍しい部分なんですけど、感情移入はほとんどの人ができないと思います。桁外れにシャイな人でも「部分的に気持ちが分かる」って程度なので、いわゆる普通の人からは共感が得られないと言っても過言ではありません。

屁理屈を言えば「なんで男の子が、すいれんみたいな女の子を好きになったのか」もよくわからないというか、「可愛いから好きになっただけ?」って感じがしてしまうのも残念です。

「底抜けの明るさに惹かれた」とか「強がりの裏側に見えた女らしさ」というものが一切ない主人公なので、そのあたりを描いてくれていたらもっと良かったと思いました。

 

最後に

Amazonのレビューなんかを見ていると、称賛の声よりも酷評されているイメージを受けましたが、なんだかんだ言いながらも個人的には楽しむことができました。

実際にこのような恋愛に直面したら面倒に感じるでしょうけど、心の中の声が文字として書き起こされているので、足りない情報はしっかりと補完されていますし、素直に読み進めることができましたね。

絵のほんわかした雰囲気も世界観とマッチしていて、取っ付きにくさのようなものは無いと思います。興味のある人はぜひ読んでみてください。

 

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