もう10年以上前に連載されていた作品なのですが、未だに「あの少女漫画面白かったなー」と思い出すのは、中原アヤさんが描いた『ラブ★コン』です。個人的には、どんな角度から読んでも、かなりの満足感に繋がる名作中の名作だと思っています。
笑いに寄せれば寄せるほど肝心の恋愛部分が疎かになって、「笑えるけど、ときめかない」というジレンマのようなものを、見事に壊してくれた作品と言えるのではないでしょうか。というわけで今回は『ラブ★コン』について紹介したいと思います。
どんなマンガ?
夫婦漫才にも似た心地良いテンポの関西弁がクセになる、青春ラブコメディーです。身長が高い小泉リサと身長が低い大谷敦士が、抜群のコンビネーションを見せ、多くの笑いと感動を生んでいきます。
会えば喧嘩ばかりという2人も、音楽の趣味は合うし一緒に居たら楽しくもあり、お互いが「身長に対するコンプレックスを持っている」という共通点も存在していて、身長差という部分を除いてはお互いが理想の相手だと言えるでしょう。
終始コミカルなノリで進められる物語は、likeとloveの狭間で揺れる心情を巧みに描いていて、面白さと切なさの融合に成功していると言っても過言ではありません。多くの少女漫画を読んできた私にとっても、自信を持ってオススメしたい作品の1つです。
見所
夫婦漫才のようなノリ
コミックス1巻
普段の口調が関西弁ということもあり、この2人の会話はすべて漫才に聞こえてくると言っても過言ではありません。
デカイのが小泉で、ちっこいのが大谷ってのもエッジが効いてて面白いんですけど、大谷が「小さいから小谷です」という自虐ネタを言ったりするのも、普通の少女漫画では考えられないシーンではないでしょうか。
一見、開き直ってるかのようにも思えますが、たまにシリアスなトーンで身長について言及しているシーンも少なくないので、非常に大きなコンプレックスであることは間違いないのですが、それに目を背けることなく明るく振る舞っている姿には勇気を貰えると言ってもいいでしょう。
言葉巧みな言い回し
コミックス1巻
自虐ネタ以外にも言い回しが普通に上手いと感心してしまうような場面も数多く登場します。次から次へと「何、うまいこと言ってんの?」って言いたくなるようなシーンの数々に、終始頬が緩みっぱなしになってしまうことも珍しくありません。関西弁独特のリズムも相まって、より面白さに磨きがかかっているようにも思えます。
しかも、これまでマンガの中に地方性を全面的に出しているマンガは何作品か読んだことがありますが、どれも活字が読みにくかったのに対し、本作はスッと読み進めることが可能です。たぶん言葉と背景が非常にマッチしている結果ではないでしょうか。
キュンキュンするシーンもテンコ盛り
コミックス1巻
こんだけ笑える感じのマンガなんだったら、ちょっと恋愛に寄せるだけでも違和感みたいなものを感じそうですけど、本作は非常にメリハリが効いていて一切の違和感を感じることなく色んな場面が楽しめます。
こういうのを見ると、身体が大きくてゲームがどうのこうの言ってる小泉にも女の子らしさが垣間見えますし、身体が小さくて可愛い雰囲気の大谷にも男らしさを感じるんですよね。
しかも素直に話が進むので、変に笑いに持って行ったりってパターンもあまりありません。多分、ここが本作のすごい部分だと思います。
読了後、寂しさを感じるマンガ
コミックス2巻
本作は全17巻(本編16巻+番外編1巻)で構成されていて、お世辞にもサクッと読みやすいボリュームではありません。ただでさえ、恋愛もので長編になろうものなら、中だるみ期間と言うか「ちょっとしたマンネリ期間」が訪れても仕方ないような部分があると思いませんか?
本作は笑いなんかもふんだんに取り入れていて、恋愛一辺倒というような局地的なマンガでこそないものの、やはり途中の中だるみ感は拭えていないような気がしますね。それでも、結末はしっかりしたものに仕上がってますし、読了後の「あー、終わっちゃったんだ」という感じはハンパ無いです。
そういう意味では「途中から『ラブ★コンは面白くて当然!』と思っていたせいでマンネリを感じ、それがいざ終わってしまったら異様に寂しさを感じているのでは?」なんて思ったりもします。そう思うようなマンガってなかなかないですよ。
最後に
これほどまでにキュンキュンと笑いが融合している少女漫画は、後にも先にも本作だけのような気がします。やっぱ笑いに寄せすぎちゃうとドキドキしなくなっちゃいますし、複雑な恋愛感情みたいなものを描こうとすると笑いよりも共感が大きくなっちゃうんですよね。
私にとっても、10年以上経った今でも定期的に読み返したくなるマンガで、読んだことがないという人には絶対的にオススメしたいマンガです。興味のある人はぜひ読んでみてください。