ボブ・サップという格闘家は異端であり、偉大だ

最近はテレビであまり見なくなってしまいましたけど『ボブ・サップ』っていたじゃないですか?サップと言えば、彗星の如く格闘技界に現れ、スターダムにのし上がり、各バラエティー番組の出演からCDデビューまでをこなした『お茶の間の人気者』です。

彼が日本の格闘技界、そしてエンターテイメントを盛り上げたのは揺るがない事実なのですが、彼のような格闘家は唯一無二だと言っても過言ではないでしょう。今でも当時の映像を見たりしてしまうのですが、今回は『ボブ・サップの魅力』について大いに語りたいと思います。

目次

ボブ・サップの魅力

元NFL選手

K-1という格闘技は、キックボクシングのプラットフォームであり、1つの格闘技ブランドです。

空手、キックボクシング、拳法、カンフーなどの頭文字であり『格闘技』の頭文字のKと、それらの頂点(KING)を意味しており、立ち技におけるナンバー1を決めるというのがコンセプトとなって、爆発的な人気を誇りました。

周りがキックボクサーや空手家、ボクシングの元世界王者などが多い中で「いくら体格が大きく、プロレス経験者とは言え『元NFL選手』という異色の経歴を持ったサップが、K-1で活躍するのは絶対に無理だ!」と思ったのは、昨日のことのように覚えています。

 

圧倒的なパワー

最近でこそ2メーターを軽く超えるような選手が出てきて、ヘビー級の上に更にスーパーヘビー級を設けたりしましたが、当時、2メーターの巨体でリングに上がるサップの姿は『ザ・ビースト』と評され、周りの選手と比べても明らかに規格外でした。

「ガードを固めて突進し、長く太い腕で相手をコーナーに押し込み、パンチを叩きつける」という、なんの工夫もない単純な戦い方ですが、圧倒的なパワーで多くの選手をマットに沈めていきます。

ただでさえ迫力があって人気があったK-1人気を更に加速させたのが、このサップの圧倒的なパワーだったことは言うまでもないでしょう。

 

チャーミングな一面

試合前の『煽りPV(お前なんか1RでKOしてやるぜ!フハハハハとか言うやつ)』で、派手なパフォーマンスをしつつも、どこか「やらされてる感」を感じずにはいられないほどの愛嬌がある選手です。試合中の目もどこか可愛らしさを感じます。

少なくともサップ以外の選手で、明らかに「ボディー効いてるんでやめてもらっていいですか?」とか「ローキックは勘弁してください」のように『明らかに痛い顔をする格闘家』は見たことがありません。きっとコレが『ギャップ萌え』というやつではないでしょうか。

普通は「効いているけど、効いていないフリをする」のがセオリーで、たまに「わざと効いているフリをして、相手を呼び込む」という選手はいるかもしれないですけど、効いているのをまんまバラしたら意味ないでしょ。この辺も愛されキャラの要素です。

主な戦績

VS 中迫剛

今見ると少し『ヤラセ』というか『一種のパフォーマンス』っぽい感もありますが、ボブ・サップの野獣っぽさが存分に発揮された試合でした。

結果的には反則負けになってしまいますが、当時は物凄い衝撃を受けたのを覚えています。というか、レフェリー仕事できてないですね(笑)

 

VS アーネスト・ホースト

1回目

(ゴングは7分30秒頃)

シリル・アビディに完勝した後、遂にK-1王者のアーネスト・ホーストと試合をすることに。この試合が後のボブ・サップブームに火を付けることになります。

確かに、両者が並ぶとホーストが細く見えてしまう程の体格差があり、一見するとサップ有利のようにも思えますが、サップは格闘技のタイトルを獲ってきたというような実績もありませんし、映像中の煽りにもあったように『格闘技初心者』と言っても過言ではないくらい、パワーだけの選手です。

いくら体重差があるとは言え、ホーストもヘビー級の選手ですし、ましてK-1の頂点に君臨する選手ですから、負けるわけがないだろうと思っていました。それゆえに結果は衝撃的でしたよね。

この試合で衝撃的だったのは結果だけではありません。それまでの格闘家たちは、例え攻撃が効いていても「効いていないよ」とアピールする選手ばかりだったのに対し、サップは素人目に見ても明らかに効いています。それでもパワーでゴリ押しする姿、今考えても人気が出ないワケがありません。

2回目

(ゴングは7分10秒頃)

『K-1 WORLD GP 2002』における決勝トーナメントの準決勝で、両者は再び拳を交えます。ホーストからしたら4度目のK-1王者になれるかどうかの試合ですし、サップに対してのリベンジ戦でもありますから、当然「負けられない試合」と言えるでしょう。

ホーストからのローキックの雨、的確なボディーブローでダウンを喫するも、持ち前の突進力と絶大なパワーで再びホーストを粉砕したサップ。

当時は試合を見ていて「サップはダウンもしているし、ボディーもローキックも効いているのに、なんでホーストはガンガン攻撃しないんだろう?」と思っていましたが、お構いなしに突っ込んできた直後にハンマーみたいなパンチが飛んでくると思ったら、それも簡単ではないですよね。

ガードだって両手でしても吹き飛ばされてるのに・・・。「1発でも貰えば終わり」という状況下で、KOに結び付きにくいローキックとボディーブロウはカウンターを貰う危険性が高いのでしょう。

結果的にサップはホーストをKOで返り討ちにするわけですが、ケガでトーナメントを辞退します。急遽、リザーバーとしてリングに上がったホーストが4度目の世界王者になりました。

前代未聞の4回制覇の称号を手にした王者が誕生したとは言え、主役は完全にボブ・サップと言っても間違いないでしょう。K-1新時代の幕開けです。そして、サップがK-1を制覇するのも時間の問題だと思っていました。

VS ミルコ・クロコップ

(ゴングは9分30秒頃)

ミルコ・クロコップは当時、ホーストにこそ3敗を喫しているものの、ジェロム・レ・バンナやマイク・ベルナルド、ピーター・アーツなど、いずれもK-1を代表する選手たちを数々撃破してきた実績があり、K-1最強選手の一角を担う選手でした。

しかし、ミルコが3回戦って1度も勝っていないホーストと2回戦って両方勝っているサップ、どちらが有利かと聞かれたら間違いなくサップだったのではないでしょうか。

しかし、試合はミルコのパンチ1発で終わります。良く言えばフットワークを駆使したということになりますが、悪く言えば「逃げ回っている」とも表現できそうなシーンが散見されました。逃げきれないと思ったときには何度かクリンチもしています。

思えば、サップがミルコより優れているポイントは『パワーと突進力』だけですから、本来であればサップと戦うファイターは、こういう試合展開(足を使って相手を翻弄しつつ、テクニックで対抗する戦い方)をするべきだとも思いました。

ホーストがサップと正面から打ち合ったのは、K-1王者としての意地だったのか、それともサップに対して「勝てるだろう」と言う慢心からだったのかはわかりません。もしかしたら両方だったのかもしれませんね。結果が出ていないのでアレなんですけど、私はホーストもミルコみたいな戦い方をしていれば勝てたんじゃないかと思ってます。

この試合後、サップは『右眼窩内側壁骨折および右眼窩壁骨折』と診断され、格闘家としての大きな分岐点に立つことになります。

 

VS 曙

日本人であれば、この人を知らない人はいないでしょう。相撲で1つの時代を築いたといっても過言ではない1人の男、第64代横綱『曙太郎』です。『目には目を、歯には歯を』という言葉があるように、圧倒的なパワーを誇るサップと、同じく圧倒的なパワーを持つ曙が、2003年の大晦日にぶつかり合いました。

相撲界からの格闘技参戦ということもあり、この試合は非常に大きな注目を浴びることになります。しかし、蓋を開けてみれば結果はサップの圧勝です。K-1に参戦した当初、圧倒的なパワーだけでK-1選手をバッタバッタと倒していったサップが、力だけでは勝てないことを証明した試合とも言えるでしょう。

ちなみに曙は全盛期ならまだしも、相撲で勝てなくなったから引退したわけであって、ピークを過ぎた状態で格闘技に参戦したのは無理があったのか、全くイイ結果を残すことができずにプロレスに転向することになります。

 

VS 藤田和之

元々、PRIDEなど総合ルールにおいてもアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラに負けたくらいで、絶大な強さを誇っていたサップが、藤田和之選手に好き勝手やられて1RでKO負けを喫します。

K-1参戦直後の中迫選手および『K-1 WORLD GP 2003』の開幕戦でレミー・ボンヤスキーに反則負けこそしていたものの、これまで純粋な負け試合はノゲイラ&ミルコとの2試合だけでした。

それが遂に、圧倒的な力の差を見せつけられた上での敗戦を迎えてしまい、徐々にサップ人気が陰りを見せ始めることとなります。

VS レイ・セフォー

(ゴングは3分50秒ほど)

K-1の人気選手レイ・セフォーとの試合です。一昔前と違ってK-1や総合の試合に慣れてきたのか、サップが重そうなキックやヒザを放つシーンが多々見られます。

しかし、私にはホーストとやった頃の勢いがなくなったように思えました。小手先の技術を学んだせいで、本来の長所が影を潜めてしまったというか、私としてはサップ時代の終わりを感じてしまった試合です。

セフォーもパンチの技術が高く、パワーを売りにしている選手ではありますが、サップと比べると体格も小さいですし、昔のサップなら負けていないような気がします。ミルコに負けてからパンチが怖くなってしまったのでしょうか。

少なくともプロとしてリングに立って、王者を含め多くの格闘家たちを倒してきた選手が、試合後に解説者から「すごい頑張りました」と言われる試合をしてしまう時点で、なんとなく思う部分がありますよね。

 

VS 曙(2回目)

セフォーに負けてからというもの、スタンディングルールではJAPAN GPでしか勝利できず、総合ルールにおいてはタレントとして有名なボビー・オロゴンを始めとする格下選手に対しては勝利したものの「試合をすれば負け」という展開が続くようになります。

そんな中、格闘技というよりも一種の『パフォーマンス』としての意味合いが強いと思いますが、曙と再戦することになりました。

曙は1回目と比べると体が小さくなりましたね。なんとか見せ場を作ろうとしているのはわかりますが、非常に「しょっぱい試合」になってしまっています。サップにとっては2年ぶりの試合だったので、仕方ないのかもしれません。

 

VS アオルコロ

『ROAD FC 032』という大会で2016年7月2日、久々のリングに立ったサップ。しかし、試合の内容は『ひどい』としか言いようがないものでした。

なんか色々疑ってしまいますけど、とにかく残念としか言いようがないです。かつて『野獣』と評され恐れられた力強さが微塵も感じられません。ちなみに相手の選手、自分のことを『カンフーパンダ』と称している188cm、148kgで21歳の若者だそうです。

 

最後に

ボブ・サップ選手は、間違いなくK-1を始めとする格闘技界を盛り上げた功績者の1人だと思います。

最初は反則負けなんかもして、戦略的にダーティーなイメージ作りをしていたのかもしれませんが、バラエティー番組なんかでおちゃらけている姿には誰もが魅了されたものです。

今後、格闘技を盛り上げるサップのような選手が再び現れれば、格闘技人気が蘇るキッカケとなるかもしれませんね。

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