名作と呼ばれるマンガやおすすめされているマンガに興味を持ったとして、連載当初から興味を持っていれば別としても「いきなり50巻を超えている長編漫画を読む気にはならない」という人も多いのではないでしょうか。そういう意味では上下巻で完結するなど短い巻数で完結している作品は、参入障壁が非常に低く「ちょっと読んでみようかな?」と思わせてくれます。
どうしても他のマンガに比べるとボリュームが薄いことから、名作と呼ばれたりおすすめされる機会は少ないように思いますが、意外と面白い作品がいっぱいあるんですよね。というわけで今回は、これまでに私が読んできたマンガの中から「1巻~3巻以内に完結した面白いマンガ」を厳選して紹介していきたいと思います(随時更新予定です)。
全1巻完結のおすすめマンガ
ルックバック
自分の才能に絶対の自信を持つ藤野と、引きこもりの京本。田舎町に住む2人の少女を引き合わせ、結びつけたのは漫画を描くことへのひたむきな思いだった。月日は流れても、背中を支えてくれたのはいつだって――。唯一無二の筆致で放つ青春長編読切。
読み切り作品として発表された直後に、良くも悪くもSNS上で超話題になった作品です。まぁ悪いっていうのは作品に対してというよりも、不適切な表現とされて単行本化される時に差し替えられてしまうシーンが出てきたっていう一連についてですが。
藤本タツキ先生の作品は「ファイアパンチ」も「チェンソーマン」も面白く読ませていただきましたが、この作品に関しては度肝を抜かれました。何がどう面白いのかを語ることすら許さない空気というか、魂が揺さぶられる作品っていう表現になるような気がします。
単なる青春物語っていうわけでもないし、素敵だなって思える一方では目を覆いたくなるようなシリアスな展開もあって・・・これは本当にすごい作品です。
金の国 水の国
昔々、隣り合う仲の悪い国がありました。 毎日毎日、つまらないことでいがみ合い、 とうとう犬のうんこの片づけの件で戦争になってしまい 慌てて仲裁に入った神様は2つの国の族長に言いました。 A国は国で一番美しい娘をB国に嫁にやり B国は国で一番賢い若者をA国に婿にやりなさい―――
「2017年このマンガがすごい!オンナ編 第1位」の作品です。女性からの支持が非常に高かった作品ですが、男性が読んでも普通に楽しめます。物語の根底には2つの国の戦争がありますが、決して殺伐とした世界観を持っているわけでなく、日本昔ばなしやイソップ物語のような雰囲気を持った作品です。
すごくハートウォーミングなストーリーなので「内容をもう少し簡略化すれば子供向けの絵本としても成立するんじゃないか?」と思えるくらい、優しい雰囲気を持った作品と言えるでしょう。
スピカ ~羽海野チカ初期短編集~
羽海野チカがデビュー当初、各誌に描いた珠玉の短編をついに集約して一冊に…。少年探偵・バレエ・ショートストーリー・エッセイなど様々なジャンルを集めた短編集!
「3月のライオン」や「ハチミツとクローバー」で知られる羽海野チカ先生が描いた短編集です。実に様々なストーリーが収録されており、どのストーリーも心に響くハートウォーミングなものに仕上がっているという印象を受けました。
何がすごいかって「どうやったら6ページでここまで人の心を動かせるのか」って部分です。少し文学作品にも似た訴えかけをしているような気もして、実のところものすごく深い物語だと思います。
どの話もサクサク進んでいくので、あっという間に読破してしまうことでしょう。それでいて心に響いた部分も考慮すると1巻完結のボリュームではありません。色んな物語が読みたいという人におすすめです。
セツナフリック
運が数値となって現れる世界「ラッキーポイント」。遺伝子で結婚相手を選ぶ世界「たかが運命」。完全監視の保育システム「完璧な保育」。自分で自分を介護する自己介護ロボット「ピンチヒッター」。そして禁断の疑似体験アプリ「セツナフリック」。実力派作家の珠玉SF短編、表題作ほか描き下ろし含む全8編収録。いつかの未来、異常進化を遂げた世界で人間の在り方は…!?
目まぐるしいほど技術が発展した未来を題材にした8つの短編集で、そう遠くない未来に実現しそうな感じの高度な技術に興味を惹かれます。特に「運が数値化されて、自分の好きなタイミングで使用できる」とか「自分の魂を別の肉体に降ろして自分を介護する」みたいな、いいんだか悪いんだか分からない世界観が最高です。
個人的には本作最後のエピソードにあった「自分の能力をチートで増やせる」的な物語がすごく好きでした。世にも奇妙な物語に出てきそうなストーリーだったので、そういう不思議な物語が好きな人なら楽しめると思います。
ヘウレーカ
紀元前二百余年、天才数学者が超大国・ローマ軍を震撼させた巨大軍事プロジェクトとは!?古代シチリアを舞台に、一大歴史ロマンが幕あける──!
紀元前3世紀後半の古代ローマ時代を舞台にした歴史漫画です。特に英雄というわけでもない1人の青年が主人公で、当時の歴史に大きな影響を与えていたという流れが面白く、親近感を持って読み進めることができます。
私は歴史に疎く、これが史実に基づくものなのかどうかはわかりませんが、楽しく読むことが出来ました。若干、絵にクセがありますが、絵が好みでないという理由だけで読まず嫌いをしてしまうのは勿体ないように思います。
歴史に興味が無い人でも普通に読めますし、世界史に興味がある人にとっては超楽しめる作品だと言っていいでしょう。
ネコマジン
ちょっとだけ魔法が使える不思議な生き物・ネコマジン。次々と巻き起こる珍騒動を、お気楽マイペースなネコマジンが解決する(!?)ほのぼのギャグマンガ!!
マンガ好きの人もそうでない人も、もはや「絵を見ただけで誰が描いているかわかるレベル」の作品です。ドラゴンボールのような世界観において、非常に可愛らしいネコマジンというキャラが活躍する物語になっています。
ドラゴンボール本編の後半でピッコロにギャグ要素が取り入れられていたように、本作でもベジータにギャグ要素が取り入れられているシーンがあるのは衝撃的でした。鳥山明ファンならたまらない内容になっていると言っても過言ではありません。
バトルものが好きな人、可愛いキャラに目が無い人、鳥山ワールドが好きな人・・・。マンガを愛する全ての人におすすめしたい作品です。
式の前日
双子の兄弟、ワケありの親子、結婚をひかえた男と女…。“ふたりきり”という情景を温かく、鮮やかに切り取った珠玉の短編よみきり集。新進気鋭の著者・穂積のデビューコミックスにて最高傑作。
短編の読み切り集なのですが、最初の「式の前日」「あずさ2号で再会」が持つ魅力がハンパ無いです。ここがすごすぎて竜頭蛇尾のような感じになってしまっている感はありますが、どのストーリーも短いページ数で起承転結がビシッと決まっています。
なにより本作を読んで「先入観って怖いなぁ」と心から思いました。最後にはハートフルな気持ちになれたり、どんでん返しが待っていたり・・・色んな感情が巻き起こる作品です。この1冊で何度も美味しいので読まなきゃ損だと思います。
山羊座の友人
松田ユウヤはある夜、同級生の若槻ナオトが殺人を犯した現場に遭遇する。陰惨ないじめの標的になっていた若槻は、追い詰められ相手を殺してしまったのだった。今までいじめを見て見ぬふりをしてきた罪悪感から、ユウヤは彼と逃げる決意をするが!? 少年二人の逃避行の果てに待つ、衝撃の真実。そしてあまりに切ない結末とは――
有名小説家の乙一氏が書いた小説がマンガ化された作品なのですが、謎めいた世界観と目を背けたくなる現実が上手く融合したサスペンス×青春モノです。一言で言い表すなら「後悔、先に立たず」と言ったところでしょうか。
簡単に内容を説明すると「未来の新聞を読んだ主人公が殺人事件の犯人を匿ってなんとか未来を変えようとする物語」なのですが、単行本1巻完結とは思えないくらいの読了感を得られました。とにかく内容が濃い!
私は原作を知りませんでしたが、存分に楽しませていただきました。どんでん返し的な結末も魅力的で終始圧倒された作品です。「運命に抗う」とか「未来を変える」などの発想が好きな人におすすめします。
外天楼
外天楼と呼ばれる建物にまつわるヘンな人々。エロ本を探す少年がいて、宇宙刑事がいて、ロボットがいて、殺人事件が起こって……?謎を秘めた姉弟を追い、刑事・桜場冴子は自分勝手な捜査を開始する。“迷”推理が解き明かすのは、外天楼に隠された驚愕の真実……!?奇妙にねじれて、愉快に切ない――石黒正数が描く不思議系ミステリ!!
初めて読んだときにオムニバス形式の漫画だと思って読み進めていたら、とてつもない衝撃に襲われました。読了後の「あー、そういうことね!」が超気持ちいい作品です。大まかなジャンルとしてはミステリーだと思われます。
色んなジャンルの話が展開されるのですが、最初の「エロ本の話」なんかは、非常に秀逸な表現をするギャグ漫画のようです。「悪魔の羽ばたき」ってネーミングがまた上手すぎるでしょ。
どの話もなんとなく「世にも奇妙な物語」のような世界観を感じましたが、とりあえず最後まで読んでみてください。本作に関しては多くは語りません。とにかく読んでくれ!って感じです。
ネムルバカ
大学の女子寮で同室のセンパイ&コウハイ。バンド活動に打ち込むセンパイは、いつも金欠ピーピー状態。これといって打ち込むもののないコウハイは、とりあえず「古本MAX」でバイト中。ぬるま湯に頭まで浸かったような、でも当人にはそれなりに切実だったりもする「大学生」という不思議な時間…。ぐるぐる廻る青春のアレやコレやを描いた大学生日常ストーリー♪
とある女子大生2人の日常生活を描いたマンガで、その2人は先輩と後輩の関係にあります。音楽活動に勤しむセンパイと、古本屋で働くコウハイのコンビが見ていて非常に微笑ましいです。
非常にテンポ良く進んでいくので、なんで1巻で完結してしまうのかが本当に謎なんですよね。続編というか2巻、3巻と書き続けることもできたでしょうに・・・。長く続けることでマンネリ化していく作品は山ほど見てきましたけど、本作は普通に描こうと思ったら描けそうな印象を受けました。
良くも悪くも自由奔放な先輩の生き方は見ていて清々しくもあり、一種の憧れに近いような感情さえ起こってくると言っても過言ではないでしょう。良い意味で「恋愛要素のない少女漫画」みたいな雰囲気が大好きです。
スキエンティア
灯がともる。涙があふれる。『世にも奇妙な物語』にてドラマ化された一編を含む、名手の傑作ヒューマンSFシリーズ!街がある。その街には、「スキエンティア(科学の女神)」と呼ばれる像が掲げられた超高層タワーが立っている。ひときわ高く、あたかも人々の営みを見つめるように。主人公はその街に生きる彷徨える者たち。彼らは今日も、己の人生を一変させたいと願い、「禁断の科学」にすがる…自殺願望のある女が、車椅子の老婆に身体をレンタルする『ボディレンタル』飲ませた相手に必ず惚れられるクスリ『媚薬』母親が死んだ娘のクローンを育てる『クローン』愛が見えると噂のドラッグを女子高生が求める『ドラッグ』それを使うと誰もが「天才」になれる『覚醒機』ほか、全7編を収録。
初めて読んだときは「世にも奇妙な物語っぽい作風だなー」と思いながら読み進めましたが、どうやら実際に採用されたストーリーもあるようですね。とある町で繰り広げられる7つのストーリーが収録されている短編集です。
ジャンルはヒューマンSFとのことですが、非常に不思議な世界観を持っていて思わず引き込まれてしまいます。「世にも奇妙な物語」が好きだという人なら間違いなくハマってしまうことでしょう。
最初は暗い感じの雰囲気を纏いながらも最終的にはほっこりできるような話もあったりして、何と言っても余韻を残して終わるような感じがたまりません。少し不思議なヒューマンドラマを覗いてみたい人はぜひ読んでみてください。
友だちの話
英子は地味な外見で弱気な性格、逆に親友のもえは誰もが振り返る美少女。お互い全然違うタイプなのに、2人の絆はとてつもなく固い。色んな男子から告白されるもえだけど、付き合う条件は「自分より英子を大事にすること」!?しかし、そんな条件を満たす男子・土田が現れる。変化し始める親友との関係に英子がとった行動は?
俗に親友と呼ばれるような性格が真逆の2人の女子高生のお話で、実際にいたらと思うとモヤモヤ感みたいなものがあるんですが、マンガの中では「こういうのもいいなぁ」と思ったりします。
最初こそ「この変人キャラはどうにかならんかね?」と思ったりもして取っ付きにくい部分があったにもかかわらず、気付いたら一気に読んでしまいました。途中から加速的に面白くなる作品ですね。
少女漫画なんだけど少女漫画にあらず「恋愛<友情」というような珍しい着眼点で描かれた作品です。少女漫画が苦手だという人も読めると思います。
ミッドナイトブルー
『ミッドナイトブルー:色の名称。「真夜中の青」と形容される、ほとんど黒に近い青のこと。濃紺よりも暗い紫みの青。中国明朝の磁器に用いられた釉薬から名前がついた「ミンブルー」に由来するという説もある。』 ――それは高3の夏「卒業しても2年ごとに集まって4人で火星観測をしよう」そう約束した2日後に、彼女は交通事故で死んでしまった。天文部の同級生だった僕たち3人は彼女との約束を守り、2年に1度集まっている。そこには、僕にしか見えていない彼女も来ているけれど―――…。
戻れない青春の日々をテーマに描かれた全7話が収録されている短編集です。どこかノスタルジックな雰囲気を漂わせている本作は、ぜひとも青春時代を振り返ることが多くなった世代の人に読んでもらいたい作品ですね。
青春時代を思わせる作品とは言いつつも、本作で描かれている世界観は淡い思い出とは対照的にあります。本のタイトルにもあるように、どこか深海を彷彿とさせるような「とにかく黒に近い青」を感じさせる作風です。
単純な「好き・嫌い」という恋愛漫画ではないので、恋愛漫画が苦手な人も読みやすい作品だと言えるでしょう。色んな恋愛をしてきた人にとっては鉄板になり得そうな作品のように感じました。
ちーちゃんはちょっと足りない
あれも欲しい、これも欲しい…。いつも何か物足りない気がする中2女子、ちーちゃんとナツ。少し不満で平凡な毎日は、ある事件をきっかけに揺らぎ始めて?
タイトルと表紙の絵だけで勝手に可哀想な物語だと勘違いし、しばらく読むのを躊躇っていました。いわゆる知恵遅れが原因でクラスのみんなからイジめられて・・・みたいな話だったら嫌だなぁと。
結果的にはそんな不安なんか感じないで読んでおけば良かったと思いました。確かにちーちゃんはちょっと足りないけど、そんなもん満たされている人の方が少ないですから。絵の雰囲気に反して、内容は非常に濃い物語なんじゃないかと思います。
全1巻でここまで描けるなんてもはや脱帽です。ちょっと不思議なトリックのような魅力を感じる作品と言ってもいいかもしれません。言葉では言い表せない心地良さを感じる作品でした。
告白~コンフェッション~
J大学山岳部OBの浅井と石倉は、尾張山3200メートル地点で遭難をした。事故によって死を覚悟した石倉は、自分が過去に犯した“殺人”を告白してしまう。しかし、その時、眼前に山小屋が出現し、二人は一命を取り留めるが……。尾張の冬山を舞台にした緊張と恐怖の密室サスペンス。名匠の華麗な共演が生み出した最高のスリルと興奮!
カイジで知られる福本伸行先生と、ジパングで知られるかわぐちかいじ先生の両者によって描かれる緊張と恐怖の密室サスペンスです。雪山で遭難した2人の男のうち片方の男がした告白によって物語は急展開を迎えるのですが、2人の駆け引きやジワジワ迫ってくる恐怖感が巧みに描かれています。
極端に言えば夢に出てきそうなくらい怖いです。本作が持つスリルはハンパ無いので、終始気が気でない状況で読み進めることになるでしょう。
最後の最後まで結末が読めない感じもいいですね。ある意味1巻で完結してくれて良かったと思える作品です。たぶん長編だったら身が持ちません。
遠い食卓
月刊アフタヌーンに連載されていた好評読み切りシリーズが単行本化! カップラーメン、コーヒー、糠漬け、餃子などの身近な食べ物をテーマに新人ながらすでに名手のたたずまいを持つイシダナオキが9つのストーリーを編み出した! くすっと笑えたり、ちょっとジーンとしたり、そんなお話が詰まっております。ぜひご一読を!
一般的なグルメ漫画とは違って「身近な食べ物」にスポットを当てつつ、それにまつわるヒューマンドラマのような流れの短編集です。有名店の〇〇とかではなくてチェーン店の餃子や自分で漬ける漬物なんかが登場します。
私はカップ麺がすごく好きなので、料理研究家の母を持っている主人公が流行のカップ麺を食べようと必死になっているエピソードには思わず笑ってしまいました。食い意地って意外とすごいもんで、カップ麺の口になってしまうともはやそれ以外のことが考えられなくなったりもするんですよね。
8編のショートエピソード+前後編なので、この1冊で10編のエピソードが楽しめます。身近にあるドラマを楽しみたいという人はぜひ読んでみてください。
死刑執行中脱獄進行中
死刑の判決を受けた、ある囚人が投獄された監獄。そこは囚人を傷つける色々な仕掛けが施された“処刑のため”の部屋だった…!? 衝撃の表題作をはじめ、中期以降の読切作品を網羅した傑作短編集!!
ジョジョの奇妙な冒険でお馴染みの荒木飛呂彦先生が描きあげた短編集で、非常に内容が濃くて読み応えのある1冊です。「岸部露伴は動かない」も好きですが、どちらかと言えば万人受けしそうなのはコチラだと思います。
荒木テイストがふんだんに堪能できるのでジョジョファンにはたまらないデキになっていますし、ジョジョを知らない人が読んでも圧倒されてしまうほどの世界観を持っていると言っても過言ではないでしょう。少し不思議で少し怖い、そんなミステリアスな世界観を求める人にとっては至極の1冊です。
バオー来訪者
秘密機関“ドレス”が創り出した最強の生物兵器・バオー。橋沢育朗に寄生し、超能力少女・スミレと共にドレスから脱走したバオーに、暗殺者たちが次々と襲いかかる。その時、育朗の中に眠る無敵の生命・バオーが覚醒する!!
こちらも荒木飛呂彦先生の作品ですが、どちらかというとジョジョの原点と言うべき作品で、ジョジョ1部のようなタッチの絵が特徴的です。サスペンス、アクション、SFなどの数多くの要素が詰め込まれていて、あっという間に読み終わってしまうこと間違いありません。
物語には秘密機関や生物兵器などが登場しますが、読み進めながら「この独特な世界観がジョジョの石仮面に繋がっていったのかなぁ…」などと想像しながら読むと、より一層楽しめるでしょう。
脳男
江戸川乱歩賞受賞のサイコ・ミステリーの傑作を、鬼才・外薗昌也が描き下ろし漫画化!心を持たない連続殺人鬼=脳男とは、何者なのか!?――連続爆弾事件の容疑者として逮捕された、謎の男・鈴木一郎(すずき・いちろう)。警視庁から、鈴木一郎の精神鑑定を依頼された精神科医・鷲谷真梨子(わしや・まりこ)は、彼こそが、心を持たない、脳だけの男、「脳男」であると知る。そして、脳男が、凶悪犯罪者を次々と殺し続けていることも!神か?悪魔か?裁きの時が、近づく!
私は原作を知りませんが、とにかく結末が非常に気になる物語で一気に読み終わってしまいました。とある事件で逮捕された男が精神鑑定などを通じて感情を持っていないことが判明し、さらには「身元が不明」だとか「凶悪犯罪者を葬っていたのでは?」などの情報も出てきます。とにかく謎めいた魅力がハンパ無かったです。
結末に余韻を残す感じも好きですし、最後の一連の行動にも意味があって納得のいくフィナーレでした。Kindleのレビューを見ていると「映画の方が良かった」という意見もあったので、映画も見てみたくなった作品です。
志乃ちゃんは自分の名前が言えない
“普通になれなくてごめんなさい”ヒリヒリ青春漫画のマエストロが贈る、もどかしくて、でもそれだけじゃない、疾走焦燥ガールズ・ストーリー。“自分の名前が言えない”大島志乃。そんな彼女にも、高校に入って初めての友達が出来た。ぎこちなさ100%コミュニケーションが始まる──。いつも後から遅れて浮かぶ、ぴったりな言葉。さて、青春は不器用なヤツにも光り輝く……のか?
自分の名前を始めとする、ありとあらゆる言葉(特に母音)を思ったように喋ることができない女の子の話です。もどかしさが全面的に表現されている青春ガールズストーリーと言ったところでしょうか。
周りがバカにしたくなる気持ちも分かりますし、主人公の志乃ちゃんが頑張ってる様子も痛いくらい伝わってくるので良い意味でもどかしいです。私自身、喋る時にしどろもどろになってしまう人はあまり得意でなかったのですが、本作を読んでからは何となく優しくなれたような気がします。
別のマンガであれば自分の意見を言わなかったりハッキリしない主人公に対してイライラしたりってこともあるんですけど、本作は応援する立場になりました。いや、応援する立場にさせられたと言った方が正しいかもしれません。見せ方が上手く、読了後は温かさに包まれる・・・そんな作品です。
説得ゲーム
ゲーム会社の主任・尾崎は、フリープログラマーが制作したというソフト「説得ゲーム」の作者を捜すことになる。そして、苦労して捜し出した作者は、なんと尾崎の高校の同級生の女性だった。自殺志願者を説得できなければ、このゲームは終わらない――。戸田誠二が贈る、切なくて温かい近未来ヒューマンSF短編集!!
主にヒューマンドラマを描いた短編集で、すべてのストーリーにおいて「命」がテーマになっています。それも生きる喜びという前向きなものばかりではなく、中には何かを思わずにはいられないストーリーも用意されているのが特徴です。
表題作にもなっている説得ゲームは、その名の通り「自殺志願者を説得して、自殺を思いとどまらせる」というものですが、なかなか闇が深そうな仕上がりになっています。他にも色んな種類のストーリーが用意されているので、哲学を思わせるような深い描写が好きな人は楽しく読めるでしょう。
パンティストッキングのような空の下
時は21世紀初め、高校生の三上とひろしは待ち望んでいた。平凡で幸福な人生と、テポドンの襲来を…! (パンティストッキングのような空)12年後、ヘイトとポリティカルコレクトネス蔓延る現代日本で、おっさんとなった三上とひろしは今度こそ平凡で幸福な人生をつかむことが出来るのか!?
オムニバス形式で描かれる短編集でリアル志向の強い作品です。生きていくうえでの虚無感というか「明日、世界が滅亡しないかなー」と思うような世界観と言ってもいいかもしれません。
とにかくエロいことばかりを考えている男子高校生の日常から、日本という国はあーだこーだという幅広いジャンルで、作者の思想のようなものが投げかけられているような気がしました。希望に溢れているマンガというよりかは、どちらかというと現実主義な人におすすめしたい作品です。
それにしてもタイトルが秀逸ですよね。なぜ「パンティストッキングのような空の下」という表題なのかはわかりませんでしたが、こういう独特な世界観は嫌いじゃありません。
ピンキーは二度ベルを鳴らす
「同情は善意の悪癖だ」悪党うごめく夜の街に彷徨うトラブルを抱えた女たち――― DVを受ける子持ちのホステス、JKビジネスで働く少女、ワケありハーフの美女、拳銃を手にしたOL… 「他人の為に自分を犠牲にするような奴はいつまで経ってもニセモノさ」危険なアンダーグラウンドの世界で頼りになるのは、この男しかいない! 小人症のヤクザ、通称・リトルピンキーが硫酸を武器に相棒・チーフを従えて裏社会の悪を斬る! うめざわしゅんが描く破格の劇薬コミックノワール!
小さいおじさんヤクザが裏社会の悪を斬るという感じの作品で、小人症で怖いというよりも可愛らしい姿とは裏腹に、硫酸を使って悪人を懲らしめるというバイオレンスな部分の釣り合いが取れていないヤクザ漫画です。
良い意味で今までに見たことのないような裏社会を再現できている作品だと思います。暴力的な感じを残しつつ、トラブルを抱えた女たちを助けていく展開は、最後にすっきりできる復讐モノのような魅力を感じることができるでしょう。
11人いる!
宇宙大学受験会場、最終テストは外部との接触を絶たれた宇宙船白号で53日間生きのびること。1チームは10人。だが、宇宙船には11人いた!さまざまな星系からそれぞれの文化を背負ってやってきた受験生をあいつぐトラブルが襲う。疑心暗鬼のなかでの反目と友情。11人は果たして合格できるのか!?萩尾望都のSF代表作。
宇宙大学の受験を巡る物語です。受験内容は「宇宙船の中で53日間生き延びる」というものですが、受験者は10人の男女と言われていたのに対し、実際には11人いたというスタートを切ります。40年以上前の作品であるにも関わらず、未だに人気の根強い作品です。2016年にはモーニング娘。’16が中心となって舞台化もされました。
SF×ミステリーというジャンルを語るうえで、欠かすことのできない作品と言っていいでしょう。11人目の目的や登場人物全員の心理描写などに注目しながら読んでみてください。
全2巻完結のおすすめマンガ
ドン・キホーテ 憂い顔の騎士 その愛
「学園革命伝ミツルギ」の名コンビが送る待望の新作は世界の名作を完全超訳!スペインのラ・マンチャに暮らすアロンソは、働きもせずに身体を鍛え騎士道物語を読みふける毎日を送る残念な中年男。しかし、ついに本物の騎士を目指す旅に出ることを決心する――!?嫌々ながらもついてくる従者(※美少年)をお供に、心優しき憂い顔の騎士の冒険の旅が今、はじまる!!
聖書の次に読まれているというドン・キホーテを完全超訳した作品で、大まかな流れは汲みながらも完全なるギャグ漫画として仕上がっています。情けないオッサンと毒舌の少年従者の掛け合いは非常に大きな見所で、言葉のチョイスも非常に秀逸です。
絵の雰囲気が真面目な感じなのに言ってることが厨二っぽかったりして、雰囲気だけでもニヤニヤさせられてしまいますね。ギャグの連続で笑わせに掛かってくる作風というよりかは真面目な顔でしれっとふざけたことを言う作品なので、ミエミエの感じがないのも面白い要因の一つだと思います。ギャグ漫画好きの人はぜひ。
All You Need Is Kill
人類は今、かつてない戦争をしている。敵は「ギタイ」と呼ばれる化物。ジャパンの南方、コトイウシ島で繰り返される戦闘。初年兵であるキリヤ・ケイジと戦場の牝犬と呼ばれるリタ・ヴラタスキは、まだ見ぬ明日を求める戦いに身を投じていく――。
小説のコミカライズ作品とのことですが、原作を知らなくても非常に楽しめました。よくあるタイプのSFモノだと思って読み進めていたのですが「時間がループする」という概念によって様々な要素が複雑化されていて、非常に読み応えのある作品だと思います。
人は誰しも「あの時の失敗をやり直したい!」と考えたことがあると思うんですけど、そういう考えが見事にSF要素と融合していて、失敗も自分の糧であるという根本が壮大に表現されていると言っていいでしょう。
デスノートやバクマンで知られる小畑健先生による作画ということもあり、非常に綺麗で読みやすい絵です。SFやタイムスリップ系の話が好きな人には間違いない作品だと思います。
星守る犬
家族を失い、病に身体を蝕まれた“おとうさん”は、飼い犬ハッピーと共に、南へ……。それは残されたわずかな“生”を生き抜く旅でもあった……。ラストは、涙なしには読めません。
「星守る犬」から「続・星守る犬」へと紡がれる、人間と犬の物語です。「犬派?猫派?」って聞かれたら、即「ネコ!!」と答える私ですが、本作を読むと犬派の気持ちが痛いほどわかります。
最初はエピソード毎に完結する読み切りタイプの作品なのかと思いきや、その全てが繋がった瞬間は度肝を抜かれました。本作から貰ったのは、驚きと「どう完結するんだろう?」というワクワクと感動です。
それからタイトルも秀逸。国語のテストなんかで「なぜ作者は『星守る犬』というタイトルにしたのでしょう?」とかやったら、すごく盛り上がるんじゃないでしょうか。犬派だの猫派だのは関係なしにおすすめ。
さよならフットボール
体格に勝る男子と交じり、ひたむきにボールを追う。誰よりも理想のフットボールを求め、試合に出ることを渇望する少女、恩田希。14歳の少女の青春は、ある一人の少年との「再会」によって加速する――
女子中学生が主人公で、サッカーを題材にしたマンガです。本作で描かれている中学校には女子サッカー部がなく、主人公が男子に混じって部活動に励む姿が描かれています。
周りの男子が成長期を迎え、徐々にフィジカルに差が出てきてしまうことに対する焦りを描きながらも、とにかくサッカーが好きな気持ちを全面的に描いていて、非常に爽やかさの感じられる作品だと言えるでしょう。私は本作を読んでから女子サッカーにも興味を持つようになったので、とりあえずスポーツ好き、サッカー好きの人なら楽しめると思います。
続編に「さよなら私のクラマー(全14巻)」がありますが、こちらは本作の主人公が高校生になり、主役の1人になって高校女子サッカー界で活躍する様子が描かれている作品です。
レベルE
『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博が世に問う異色の連作集!宇宙一の天才的な頭脳と美貌、そして最悪な性格の持ち主・ドグラ星第一王子…人呼んで「バカ王子」。その魔の手から地球を守るのは…熱血健康優良野球少年7番レフト・筒井雪隆。襲い来る魔物の群れに…不承不承立ち向かう悪ガキ5人組。その智略を尽くした剣・棒・術・策!塾があるのに…。塾か?世界平和か?そして…廊下は走るな!
みなさんご存知、幽遊白書やハンターハンターでお馴染みの富樫義博先生が描いたSF漫画です。壮大なテーマの中にワクワクさせるような描写や少し考えさせられる部分もあったりして、巻数の割には非常にボリューミーな作品のように思いました。
中でも「原色戦隊カラーレンジャー編」は少年時代に読んで爆笑していたのを覚えています。今読むと爆笑こそしませんが非常によく描かれている漫画だと思いましたし、ハンターハンターに夢中になっている人なら喜んで読めるでしょう。。
笑えるシーンも数多く登場するのでギャグ漫画が好きな人にもおすすめです。コミックスは3巻立てでしたがKindle版は上下巻で構成されているので、価格的にもKindle版はお買い得かもしれません。
ケモノキングダム ZOO
百獣の王ライオンは、気苦労絶えないつっこみ王!?空の貴公子オオワシは、翼の折れたヘタレエンジェル!?飼育員も仰天のマニアック動物たちによる歯止めのきかないボケとツッコミの応酬!作者のあふれる動物愛が歪んだ形で脳内変換(!?)されたアニマル・ギャグ!!
タイトル的には「バトルものかな?」と思ってしまいそうですが、動物たちがボケ&ツッコミの応酬を魅せてくれる本格派のギャグ漫画です。動物それぞれの特徴を上手く笑いに繋げたり、可愛らしい動物が毒を吐いたりするなどのギャップも楽しく、動物好きの人にはたまらない内容となっています。
もちろんギャグ漫画が好きだという人にもおすすめですし、女性が読んでも楽しめるでしょう。誰にでも分かるような笑いで構成されているというのもgood。ツッコミのノリが銀魂っぽい部分があるものの、動物主体の世界観が新鮮で面白いギャグ漫画です。
百万畳ラビリンス
人と関わるのが苦手な礼香はゲーム会社でバグ探しのアルバイトをしていたが、ルームメイトの庸子と共に木造迷路に迷い込んでしまい!? ミステリーファンタジー!
デバッカーのアルバイトをしていた主人公が異次元空間から脱出を図るSFミステリーです。ゲームの不具合を探す仕事をしているキャラが、VRどころかゲームに似た仮想空間を冒険します。
タイプの異なる2人が探検しているということもあり、その展開は予測不能・・・ゆえにワクワクするようなものとなっています。見た目的に異端な方が常識人というギャップも最高ですね。
全2巻にもかかわらずその内容は非常に濃く、読了後は圧倒的な満足感が得られるでしょう。爽やかなタッチの絵で見やすいのもおすすめ。
部活、好きじゃなきゃダメですか?
キラキラした青春? 優しくて優秀な顧問? 強敵との試合でワクワクするチームメイト?? そんなの全部存在しない!!!!! 「理想(イメージ)」でのみ語られがちな部活の「現実(リアル)」を本音でイジる問題作! 部活男子の本音トークコメディー、開幕!!
ありそうでなかった逆熱血系のギャグ漫画で、学生時代に運動部に所属していた人であれば思わぬタイミングで「あるある」に襲われてしまう作品です。主人公はサッカー部員の男子2人で、とにかく部活がサボりたくて仕方ないという境遇に置かれています。雨で喜んでいたのに午後になったら急に晴れてしまったり顧問にやたら怯えていたり・・・。
懐かしい青春の1ページが面白おかしく描かれていて、時には熱血系スポーツ漫画をディスるほど。笑いの角度がとにかくエグイです。あっという間に読み切ってしまうこと間違いないでしょう。
しったかブリリア
「イキれ… そなたは美しい」。大学2年の白浪理助は、知ったかぶりで大学内の人望を集めている。彼の前に、新入生・濱崎みなとみらいが現れる。機転を利かせて彼女の信頼を得、頼りになる先輩という地位を手に入れた理助だが、さらに高校時代に失恋相手、加古川姫姫が現れ……? なぜか知ったかぶりしてしまう男女の恋と笑いのバイオレンスギャグ!
私が高校生だった頃に「やまとなでしこ」っていう月9ドラマがありまして・・・。女性の気を引きたくて金持ちの振りをしてしまうっていう男性の物語なんですが、まさにそんな感じで自分を大きく見せてしまうというタイプのコメディーです。
タイトルにもあるように知ったかぶりをしてしまう男子大学生と、それに負けたくないと張り合う女子大生。そしてそこに入ってくる知ったかぶりじゃない本物の知識人という構図が面白く、似たような経験をしたことがあるなら思わず笑わされてしまうと思います。
知ったかぶりをしてしまうという人、過去にしてしまったという人は必見です。
東京トイボックス
東京・秋葉原にある弱小ゲーム制作会社、スタジオG3。代表を務める天川太陽は、「面白いゲーム」を作ることに己の全てを掛ける。東京・大手町の大企業に勤める月山星乃。その仕事ぶりは誰もが認めるバリキャリウーマン。ある日、最悪な出会いを果たした二人だったが、月山は会社からG3再建のために出向を命じられる羽目に――。「売れるゲーム」を求める月山と、ただひたすら「面白いゲーム」を作ろうとする太陽、そして大手ゲーム会社による画策……。働くオトナたちの青春を描く熱血ゲーム業界物語が幕を開ける――!!
簡単に言うとゲーム開発現場を描いたマンガです。ゲームが好きな人なら一度は覗きたいと思ったことのある世界が描かれています。登場人物も熱い人間が多く、大人なんだけど子供らしさを持ち合わせているというか辛い作業を楽しみながらこなしているような雰囲気がするんですよね。
それが読者側にも伝わってくるので、終始楽しみながら読み進められると思います。絵も綺麗でゲーム制作の裏側が見れたようなお得感もあり、ある意味勉強になる一面も兼ね備えたマンガです。ゲーム好きの人には間違いなくおすすめします。
アダムとイブ
衰退するヤクザ社会を立て直すべく、“スメル”と呼ばれる嗅覚に長けた男が結成した秘密結社―― その会合の突如、“透明人間”の襲撃を受ける! 1人、また1人と仲間が死にゆくなか、五感を研ぎ澄ましたヤクザ達が徐々に“透明人間”の姿を捉え始め…変哲なき密室空間が「透明人間VSヤクザ」という比類無きワンダーランドに変わる!
超能力を持ったヤクザたちと透明人間のバトルを描いたマンガです。超能力は五感に特化したものになっていて、聴覚なら足音で透明人間の位置を把握したり、嗅覚なら僅かなにおいの動きから透明人間の位置を把握できるというものになっています。
透明人間と言えど身に着けている物は見えてしまうということで、基本的には素手で襲い掛かってくるので、ヤクザたちは特殊能力と数の利で真っ向勝負するんですが、果たしてどっちが勝つのかっていうハラハラ感がたまりません。銃乱射によって窓ガラスが飛び散り、靴を履かなきゃいけなくなった透明人間が超シュール。
ソラニン
芽衣子さんと種田くん。付き合って6年目、同棲して1年。この国で芽が出たばかりのボクらは、いったいどんな花を咲かせるの…?限りなく不透明なイマを生きる、僕らの青春狂奏曲!!
早い話が自分探し系のマンガです。大学卒業後、普通に就職してありふれた日常を過ごすうちに「これでいいのだろうか」と自分との葛藤に揺れる若者は少なくないと思います。
本作に出る登場人物たちもそのような境遇に置かれていて、不器用にしか生きられない若者たちです。本作を読んで「甘えているだけ」と感じる人もいるでしょうし「気持ちが分かる」と共感する人もいるでしょう。
賛否の差が激しい作品ですが、人生のレールに関して疑問を抱いたことが一度でもある人であれば楽しめると思います。
マンホール
夕暮れの商店街で、全裸の男が怪死を遂げた。検死の結果、体から新種の寄生虫が発見される。ベテラン刑事・溝口とその部下・井上は事件を追う内、ひとつのマンホールへとたどり着く。暗闇の中、そこには謎の“施設”の存在が…!? 加速する恐怖、戦慄のバイオ・ホラー!!
寄生虫を利用した一種のバイオテロのようなものを描いたサスペンスホラーです。そこまでグロいというような描写こそありませんが、眼球に巣食う寄生虫が登場するので苦手な人にとっては苦手かもしれません。
犯人が誰かを突き止める過程で「いつ寄生されてしまうのか」などのハラハラしてしまうシーンが続くので、肝心の「犯人は誰か」についても想像しながら読み進めるといいでしょう。最終的に犯人の目的が判明した時の筋道ができあがった感は非常に爽快です。ちょっと怖くて気持ち悪いけど、なぜか夢中になってしまう不思議なマンガだと思います。
バランスポリシー
女が生まれなくなった世界。国家は女性化政策を始める。真臣の親友・健二は女性に改造されてしまい…!? 親友にドキドキ? なTSラブストーリー!
本作で描かれている世界では著しい少子化に悩まされていて、しかも「女子が極端に生まれなくなった」という状況下にあり、適性のある男子が女子になるという政策が行われています。
急に女子になってしまった本人の戸惑いももちろんそうですが、その周りの反応なども言葉では表せないような感じに仕上がっていて、終始不思議な感覚で読み進めることができるでしょう。
思春期真っ只中に性別が変わってしまったということもあり、ところどころで急に裸になるシーンも散見されますが、まったくエッチっぽくないのも大きな特徴です。男性読者であれば「自分の親友が女になったら?」って考えながら読むと深い物語になると思います。
素晴らしい世界
あてもなく大学を中退してしまったバンドの女性ボーカリスト、ひどいいじめを受けている小学生の女の子とカラスの姿をした死に神、組の金に手をつけて逃走中の暴力団員と女子高生、バンドをやめて普通のサラリーマンになった青年…。心に不安や不満を抱えながらも、いつか素晴らしい世界にたどりつくことを夢見て、それぞれの日々を生きる人たちの日常をリアルに描いた連作短編集!!
人々の苦悩が入り混じった日常と奇想天外な非日常を使い分けて描かれる短編集で、淡々と読み進めていくだけでは作者の心情が読み取れないことも少なくありません。ゆえに「これは何を意味しているのか」などを自分なりに考えながら読み進めるところまでが本作の楽しみと言えるでしょう。
ジャンルとしては青春マンガに該当し、私の中では一種の文学作品のような魅力を感じました。ある人によっては共感の連続で、ある人にとっては懐かしく感じる・・・そんなマンガです。
読者の年齢やこれまでの生き方で、本作に感じる印象は大きく変わると思います。10代の頃に誰しもが感じた空気感を堪能したい人はぜひ。
となりの外国人
マリオ・フランチェスコ・ベルナルドーネ。生まれも育ちもイタリアですが、好きな国は日本です!!!毎年老人を死に追いやるという恐ろしい食べ物“MOCHI”におびえたり、魔法の箱「こたつ」の虜になったり、おみくじの「天中殺」におびえてニンジャ修業をしたり、理想の日本女性(ヤマトナデシコ)に一目惚れしたり……愛すべきマリオのニッポン騒動記、始まります。
2012年~2013年頃の作品で、生粋のイタリア人・マリオがかねてから憧れていた日本に訪れ、隣のお家と家族ぐるみで付き合う様子を描いたほんわかコメディーです。外国人タレントが時折見せる面白い様子が好きな人なら、ものすごく楽しく読めることと思います。
マリオがとにかく憎めない性格で、お隣のご家族も非常に温かい人たちなので心が温まる物語と言っていいでしょう。イタリア人ならではの視点から描かれる日本の文化は新鮮ですし、どんな人にもおすすめです。結末の「この後どうなるんだろう?」という余韻に浸れる感じも素敵だと思います。
ヤサシイワタシ
イヤな女?カワイイ女?純情青年が大学の写真部で出会った先輩は、部の「要注意人物」だった。やがてふたりは付き合い始め──。大ヒット野球漫画『おおきく振りかぶって』の著者が、注目の新人時代に放った、普遍的で深刻なテーマをシリアスに描いた初単行本。切なさに体温があり、甘さには血が通う。告白にも似た傷つけ合いは成長すら痛々しい。リアルな人間像を熱く描く、悲しきジェットコースターラブストーリー、開幕!
傍から見れば、俗に言う「リア充」にも思える大学生の日常を断片的に切り取ったようなマンガなのですが、キャッキャウフフの展開などではなく、終始重さが付きまといます。良くも悪くも「何かを考えさせられる」という意味では非常に面白い作品だと言っていいでしょう。
ジャンルとしては「悲しきジェットコースターラブストーリー」とのことですが、ヒューマンドラマに似たような感じですね。大人と子供の境界線に立っている世代の複雑な想いが巧みに表現されています。
純粋な恋愛モノでもなければ、「人生最高!」と言わんばかりの充実ぶりを描いた作品のため、もしかすると読む人を選ぶ作品かも。バッドエンドの作品に抵抗がないという人はぜひ読んでみてください。
ミュージアム
悪魔の蛙男、“私刑”執行。“ドッグフードの刑”“母の痛みを知りましょうの刑”“均等の愛の刑”“針千本のーますの刑”“ずっと美しくの刑”――。すべては、ある1つの裁判から始まった。超戦慄連続猟奇サスペンスホラー、絶望大解禁!!!
カエルの被り物をした人物が、様々な理由をつけて私刑に勤しむ姿を描いたサスペンスホラーです。主演が小栗旬さんで映画化もされて一気に有名になりましたよね。
映画の「SAW」に似た世界観を持っていて、快楽殺人者の目的を突き止めるまでが本作の醍醐味ですが、その私刑のやり方の時点で結構な刺激を受けるので、人によっては面白さよりも気持ち悪さが先行してしまうと思います。
最初は相当なインパクトから始まるのですが慣れてきたのかマンネリ化するのか、後半に進むに連れて恐怖感みたいなものが薄れてしまう部分は少し残念に思いました。要グロ耐性です。
モンキーサークル
謎の猿人を撮影する為、鬱蒼とした森を訪れた10人の動画配信者グループ。モラル無き一同の前に、その“猿”は現れ、森は、人は、殺意と恐怖に包まれる…!! 志名坂高次&粂田晃弘の最強タッグが描く、「モンキーピーク」の正統外伝!! もう一つの“鬼猿”物語が動き出す!!
モンキーピークの外伝という立ち位置の作品で、正体不明の猿が襲い掛かってくるというパニックホラーです。オリジナルの方では「猿の正体は誰なのか」というサスペンス要素が大きな見所でしたが、こっちは猿の正体にはほぼ触れられておらず、完全に「猿を相手にこの森から無事に帰還できるか」という部分がテーマになっています。
行方不明者が出ているといういわくつきの森でロケをする動画配信者という設定が非常に分かりやすく、犠牲者が出ても重く受け止めない姿勢が大事態に発展していくという様子にリアリティと恐怖感があると言っていいでしょう(猿自体にはリアリティないけど)。ゾンビ作品以外のパニックホラーが見たいという人におすすめです。
全3巻完結のおすすめマンガ
服なんて、どうでもいいと思ってた。
オシャレ、なにそれコワイ…! 流行やオシャレに無縁の男たちが、女性ファッション誌の編集部へと異動となり、日々オシャレな誌面づくりやオシャレな女性文化に翻弄されるギャグマンガ!
ファッションセンスが微塵もない男性主人公×4人が女性ファッション誌の編集部に異動になってしまい、自分たちなりに「女性とは?ファッションとは?おしゃれとは?」について真剣に考えていくというギャグマンガです。
「人は見た目が100パーセント」は女子が女子力を磨くという感じでしたが、こちらは男性が女子力を勉強するというテーマになっているので、余計にコレジャナイ感が際立っていると言っても過言ではありません。
モテ力みたいな部分に通じるところもあり、女性の扱いや男性の扱いについて正論っぽいことが展開される面白さは本作ならではの大きな魅力と言っていいでしょう。オシャレな人もそうでない人も楽しめるファッション系ギャグマンガです。
生存~LifE~
数年前に妻を亡くし、自らの体もガンに冒されていることを知った武田(たけだ)は、人生に絶望していた。自殺しようとしていた寸前、警察から一本の電話が入る。それは14年前に行方不明となった、娘の佐和子(さわこ)がなんと死体で発見されたのだという。時効を間近に控え、警察も諦めたこの事件に、武田は残された生命を懸け、犯人を見つけ出す決意をする──。
14年前に娘が失踪、数年前に妻を亡くし、自身もガンに侵されている主人公が自殺を決行しようとしたタイミングで娘が遺体で発見されたというところから物語は始まります。何の因果か自身のガンも進行していて余命が半年、そして娘を殺した犯人の時効成立までも半年という事実から、この事件の真相を突き止めようと思い立ったというストーリーです。
実際に時効寸前で捕まる犯人も少なくないと聞きますが、警察の捜査だけでなく、被害者の父親が自らの命を顧みずに捜査しているという部分に燃え盛る炎に似た執念を感じました。うまくいきすぎてる感こそあるものの、勢いがすごくて読まされているという感覚はまさに圧巻の一言です。
全3巻という短いボリュームであるにも関わらず、張り巡らされた数々の伏線がサスペンスとしての完成度を高いものにしています。読了後は名作映画を見終わったかのような満足感に包まれることでしょう。
千年万年 りんごの子
親を知らない夫。りんごと育った妻。夫婦は、りんごの村の禁忌を破った。――雪深いりんごの国に婿入りした雪之丞(ゆきのじょう)。昭和の激動から離れ、北の家族と静かに巡る四季は親を知らない彼の中になにかを降り積もらせてゆく。それは冬、妻の朝日(あさひ)が寝込んだ日。雪之丞の行動が、りんごの村に衝撃を与えた。
おとぎ話や言い伝えといった類の話を上手く盛り込んでいる作品で、物語は「新婚夫婦の旦那さんが奥さんに食べさせてあげたリンゴが禁断の果実だった」というところから始まります。本作を読んだとき、単純に圧倒されました。
マンガというか映画にも似た作風で、日本人ならではの風習や考え方の根本に訴えかけてくる作品だと思います。面白いとか面白くないではなく、普通に文学作品として感銘を受けると言っても過言ではないでしょう。
悲しくも重いテーマがしっかりと生かされていて、最後の結末に至るまで完璧です。ちょっと言葉が読みにくくて取っ付きにくい部分はありますが、それらを差し引いても名作であるという評価に変わりはありません。
ヴォイニッチホテル
太平洋南西に浮かぶ小国・ブレフスキュ島、その小さな島のホテルが舞台。陽光降り注ぐのんびりした南国ムードの中、一癖も二癖もある宿泊客達の悲喜交々ドラマ。
太平洋の南西に浮かぶ小さな小島に建つホテルで繰り広げられる非日常的な日常を描いた作品で、これといったジャンルが無い何でもアリな空気感がたまりません。ちょっと下ネタとグロ要素が多く、血のシーンが多いのが気になるかもしれませんが、そこまで暗いという雰囲気はないです。
島の歴史、島で起こる事件、ホテルの客と従業員の蜜月などなど、あれもこれも楽しめるのに話が散らかっていないのは圧巻の一言。特にブラックユーモアに溢れたギャグやジョークが面白い!
じこまん
全てはじこまんのためである!!自己満足――それは69億人、全市民に残された最後の価値観。実体験こそ最もじこまん度が高い!幸福の原風景がそこにあるからじこマンズ。身体を制御した者こそ人生の勝利者となるのである!貴様だけには負けん!究極のアイテムこそが自転車。終わるために走るのである。まごうことなき一生モノ!実録こだわり自転車DAYS!!
ロードバイクあるあるが詰め込まれた全3巻。自己満足、略して「じこまん」です。・・・趣味なんて大半が自己満足なんですけどね。ロードバイクに興味があまりない私も「ロードバイク始めようかな?」と思えるくらいの魅力に溢れている作品です。
「ロードバイクは楽しいよ!」みたいなゴリ押しのおすすめじゃないのに、興味をそそられてしまうのは何故でしょうか。きっと作者自身が楽しんで描いているからに違いない!現在進行形でロードバイクやクロスバイクに乗っている人なら間違いありません。そして自転車に少し興味があるという人も夢中になります。
G線上ヘヴンズドア
人気マンガ家である父に反発し、ひそかに小説家を志す堺田町蔵。幼い頃から、マンガだけを心の拠り所として生きてきた長谷川鉄男。まるで正反対な性格を持つふたりの高校生。しかし、お互いの心の内に、共通する情熱があることに気づいた鉄男は、町蔵に手をさしのべた。運命的ともいえる出会い……ふたりの目的はマンガを創りあげること――!!戦友とはいったいなんなのか、その意味を探り続ける著者渾身のコミック!!
なんとなく版画を思わせるような独特の絵のタッチに好みが大きく分かれそうですが、内容は非常にドロドロしていて熱いマンガ家の物語です。正確に言えば漫画家になるまでの途中段階でしょうか。
マンガを通じて心を通わせた2人の男が主人公で、その2人はマンガを好きだと言えずに育ってしまった家庭環境があり、でも心の奥底ではマンガが好きなんだという少し複雑な心理描写が見所となっています。
描かれているマンガ家の世界が結構ドロドロしていて華やかさのようなものはありませんが、その世界に足を踏み入れようとする2人の姿がとにかく熱い!情熱を感じたい時はこちらをどうぞ。
暴れん坊本屋さん
切なくも心暖まる作品を描くマンガ家・久世番子。実は彼女にはもうひとつの顔があった!ある時は自分のコミックスを大量に発注し、ある時はマナーの悪い立ち読み客を呪い、ある時は注文した本が届かないとぼやく。そう、彼女は「暴れん坊本屋さん」だったのだ!!マンガ家兼書店員の久世番子が本屋さんの本音や裏話を描いた赤裸々エッセイコミック登場!!
本屋さんが好きだという人におすすめしたい「本屋あるある」などをふんだんに織り込んだエッセイコミックです。作者さんの実体験に基づいて描かれているので非常にリアリティがあり、楽しみながらも勉強になる一面も兼ね備えています。
笑える箇所も多くて、本屋さんに頻繁に足を運んでいるという人であれば誰しもが思っていたようなことが描かれていたりします。私自身も幾つか疑問に思っていたことが本作を読んで解決しました。
本屋兼マンガ家という特殊な目線だからこそ描けたマンガです。絵も可愛らしいタッチで読み進めやすいので、とにかく本屋さんが好きだという人であれば、男女問わずに楽しめるでしょう。
名探偵キドリ
「自首して下さい。証拠が無くても、アリバイがあっても‥‥ きっと貴方が犯人だと信じています。今ならばまだ間に合います。」突如、学校に転校してきた貴鳥くん。そのいでたちは、あの名探偵を彷彿とさせるが、彼には別に「じっちゃんが名探偵」なわけでも、「謎の組織に薬で小さくされた」わけでもなく、ただ推理がしたいだけの“名探偵気取り”だった!! 唯一無二のミステリー風ギャグがここに開幕!
名探偵コナンや金田一少年の事件簿を気取った雰囲気の推理系ギャグマンガ。全体的な雰囲気こそミステリーっぽさがあるものの、中身を見てみると完全にギャグマンガです。しかも相当くだらないレベルで思わず笑わされてしまいます。
肝心の内容は推理モノとしてはのっけから破綻していて、「小学生が名探偵コナンのようなものを考えてみました!」みたいなめちゃくちゃな展開が面白いです。少なくとも推理モノとして読むのはお門違いと言っていいでしょう。
ミステリあるあるが多く使われていて、この手のマンガを茶化したりパロったりする展開が好きな人には鉄板!
天獄の島
謎に包まれた孤島で繰り広げられる、死と隣り合わせのサバイバルミステリー!死刑制度を廃止した近未来の日本では、それに代わる極刑として島流しが復活していた。戦場ジャーナリストだった御子柴鋭(みこしば・えい)は、家族を惨殺した榊(さかき)を追うために、罪を犯して流刑島の天獄島に送られる。そして、島に降り立った御子柴達は突然、弓矢で襲われて……!?
死刑制度が廃止された日本が舞台になっていて、そこでは死刑の代わりに「島流し」をされることになっています。自分の家族を殺し、島流しに遭ったであろうかつての親友と再会するために、人を5人殺して島流しに遭った1人の男が主人公です。
凶悪犯が流されている島ということもあって、さぞヒャッハーというような無法地帯が形成されているかと思いきや、良い意味で拍子抜けするくらい秩序のようなものがある世界でした。それが返って不気味に感じるので、サスペンスものとしては非常に面白いと思います。
タイトルとあらすじから察するような「ならず者たちの殺し合い」というような分かりやすい展開はなく、なぜかつての親友が自分の家族を殺したのか等の真相に向かって淡々と読まされる感じのマンガです。死刑に代わるのがなぜ島流しだったのかという部分にも、それ相応の理由が用意されていて満足できる作品だと思います。
宇宙を駆けるよだか
かわいくて素直な性格のあゆみは大好きな人と恋人同士になったばかり。だが、初デートに向かう途中で同じクラスの然子の自殺を目撃し、意識を失ってしまう。目が覚めると、あゆみは醜い容姿の然子と身体が入れ替わっていて…。 容姿も性格もまったく違うふたりの運命が、奇妙にねじれながら交錯していく――。
言葉を選ばずに説明するのであれば「性格の良い美人と性格の悪いブスが入れ替わる物語」です。非常にファンタジー要素の強い作風になっていますが、外見が変わることによってもたらされる影響が殺伐と描かれています。
綺麗事はいくらでも言えますが、仮に自分の立場に降りかかったことを想像すると少し考えただけでもゾッとしてしまいました。怖いもの見たさのような魅力もあって全3巻を一気に駆け抜けてくれることでしょう。
結末には賛否両論ありますが、まぁ想像通りですよね。「どうせこうなるんでしょ?」というビジョンは浮かびやすいですが、そうとは知りつつも読破させるだけの魅力に溢れている作品です。
君の名は。
夢で見た少年と少女が経験する恋と奇跡の物語。山深い田舎町に暮らす女子高校生・宮水三葉が夢で見た、東京に暮らす男子高校生・立花瀧。出会うことのない二人の出逢い。少女と少年の奇跡の物語が、いま動き出す。
言わずとした話題作ですが残念ながら私は映画を観ておらず、マンガで初めて「君の名は。」に触れました。これは事前情報無しで読んだ方が面白い気もしたので、あえて作品紹介はしないことにします。
Kindleのレビューでは「こんなのは君の名は。じゃない!!」くらいの感じで否定している意見も散見されますが、全体的には高評価で個人的にも面白かったです。映画を観てないので比較はできないんですけど、ちょっと駆け足感があって「もうちょっと掘り下げて物語を描いて欲しかった」という気持ちはありました。
月並みですが「これは流行るのも分かる気がする」という圧倒的なスケールのようなものを感じましたし、全3巻で一気に読めるのもおすすめ。映画を観た人もそうでない人も楽しめるのではないかと思います。
予告犯
インターネット動画投稿サイトで犯行予告動画を投稿する謎の男。果たして予告された事件は起きるのか…!?高度に情報化された現代のテロリズムを描く、緊迫のサスペンススリラー開幕!!
インターネット上に犯行予告をする「シンブンシ」と呼ばれる男の姿を描いたサスペンススリラーで、人間なら誰しもが心のどこかに持っているような心情が描かれています。これまでの人生で1度も「あいつ死ねばいいのに」って思ったことのない人以外は多少なり共感できると思います。
まさに情報化されている現代社会を表現しているかのような作品で、似たようなニュースを実際に聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。しかし本作で描かれているそれは、単なる愉快犯であったり残酷性を表現しただけのものではありません。
私刑を加えているということもあり、社会的には「悪」であることは間違いないのですが、単純に「悪」と括っていいものかどうかもわからない壮大なスケールの物語です。
うなぎ鬼
借金に苦しんでいた倉見勝は千脇に拾われ裏稼業に励むことに。勝に課せられた任務は重さが50~60キロのコンテナをマルヨシ水産に運ぶというものだった。コンテナの中身とは一体…サイコホラー!
終始、見えない恐怖に支配されながら読み進めることになるであろうサスペンスホラーです。いたずらにグロい描写を挿入して恐怖心を煽ってくるようなマンガと違い、読者に先の展開を想像させることで恐怖心を煽ってきます。
物語も非常に良くできていて、単に怖いだけじゃないという部分も大きな見所です。登場人物それぞれにドラマが用意されていて、そのあたりも巧みに描かれているように思いました。
矛盾するようですが「人は外見」という考え方と「人は見た目じゃわからない」という、相反する二つの見方が同居している部分は何かを思わずにはいられないでしょう。
夕焼けロケットペンシル
サトミは家の文房具店を手伝う小学6年生の女の子。父親が引きこもりのため、実質ひとりでお店をきりもりしている。そこに降ってわいた店の取り壊し話。少しだけどお店を頼りにしてくれるお客さんがいる。いなくなっちゃったお母さんの帰る場所も守らなくちゃいけない!サトミは父からお店を譲り受けて営業を続けることに。売れないマンガ家さんや元気な女子大生。初めての恋心を薄い胸に秘めながら、サトミのお店、本日も営業中です。
小学生ながらに文房具屋さんをきりもりする主人公と、それを取り巻く近所の人たちによるハートフルな物語です。とにかく何もかもが懐かしい空気に包まれています。
若い世代の読者だとあまりわからないかもしれませんが、昔は文房具屋とか駄菓子屋などの個人商店が結構あったのに、最近は次々となくなってしまったように思いませんか?
便利になるのは大歓迎、でも近所がコンビニだらけというのもなんだか寂しいものです。本作に描かれているのは少し懐かしく、とても暖かい…そんな物語です。タイトルもノスタルジーな雰囲気を感じさせてくれて、物語のイメージと非常にマッチしていると言っていいでしょう。
イヴの時間
未来、たぶん日本――。社会ではアンドロイドを“家電”として扱う事が一般化され、リクオの家にもまた、自家用ハウスロイドであるサミィがいた。ある日リクオと友人のマサキは、「アンドロイドと人間を区別しない」というルールを掲げた不思議な喫茶店「イヴの時間」に行き着く。そこには、アンドロイドと人間が織りなす、ほろ苦くも優しいストーリーが待っていた――。
本作は未来における人間とアンドロイドの関係性について描かれた作品です。いわゆる「アンドロイドは家電と一緒か否か」という、ロボットものの永遠のテーマのようなものが、かなりリアルに感じられる距離感で描かれています。
「アニメ→映画→マンガ」という順番で世に輩出された作品なのかな・・・。私はマンガから入ってアニメを見ましたが、結末が違っていてどちらも楽しく堪能することができました。
いずれにしても本作だけを堪能して満足できるようなものではなく、確実にアニメも見たくなるほどのクオリティを兼ね備えた作品です。SFチックな雰囲気が好きだという人にもおすすめ。
午前3時の無法地帯
イラストレーターを夢見るももこが就職したのは超多忙なパチンコ専門のデザイン事務所!!ヤクザまがいの営業や、夜中についつい脱いじゃうデザイナーなど、社員はちょっと……いや、かなり個性的!!徹夜続きで家にも帰れず……。充満するタバコの煙の中で女子力は下がる一方で――。「あたし何でここにいるんだろう――?」
非常に柔らかくてポップな絵が特徴的ですが中身はかなり現実味を帯びていて、例えるなら「大人の女性に向けた少女漫画」というような印象の作品です。
就職したものの理想とは違う境遇に疑問を持ったり、仕事の締め切りに追われて過ごす1人のOLの日常が描かれています。仕事に対する向き合い方や、姿勢が徐々に変わっていく様子が大きな見所です。
恋愛要素もありますがちょっとワケありの男性に惹かれてしまったり、仕事が忙しくて女子力を失っていく様子なんかも描かれているので、本当に大人向けのマンガと言えるでしょう。カッコイイ女性の姿が見たいという方はどうぞ。
サマーウォーズ
高校2年の夏休み、健二は憧れの先輩・夏希にアルバイトを頼まれ、彼女の曾祖母の実家に行くことに。だが、アルバイト内容は夏希の「フィアンセ」のフリをする事だった!?大勢の「ご親戚」一同を前に健二は…!!
個人的には「映画がめちゃくちゃ流行ってたよね」程度の印象でしたが、マンガを読んでみて本作の映画が人気を博した理由が何となく理解できました(私自身は映画観覧していません)。
本作における大きなテーマは「サイバーテロ」や「ハッキング」などの近未来的な要素になっていて、その中にもちょっとした恋愛要素や、主人公の男の子が自分自身と向き合う姿などが描かれています。
コミカライズ作品ですが、映画ファンにとっても読みやすい内容になっているとのこと。映画を観た人もそうでない人も、双方が楽しめる仕上がりになっていると思います。
君の庭。
両親を交通事故で亡くし、一度も会ったことがない祖父の家で暮らすことになった岡野かりん、16歳。そこで同い年の庭師見習い・藍川樹一と出会う。はじめは、無愛想な藍川に苦手意識を持つかりんだったが、彼の庭への熱い想いに触れていくうち、次第に二人の心の距離は縮まり始めていく。恋と夢きらめく胸キュン青春譚、開幕!!
造園×純愛×人間ドラマ的な組み合わせがマッチしていて、全3巻という読みやすいボリュームに綺麗にまとまっています。絵も綺麗で所々に登場する庭造りに関する知識と生き方を照らし合わせる部分なんかは、とても響いてくることでしょう。
私は庭師という仕事に興味も知識もありませんでしたが、とても感性が重要だということと庭師という仕事の奥深さが伝わってきました。過剰なエロ描写こそないものの、ナンパな雰囲気が感じられるのが個人的に残念です。
徹底的に純愛路線だった方がもっと面白くなったんじゃないかと思うし、私の中でもそっちの方が好みでしたが、このままでも十分面白いし綺麗にまとまっていると思います。
ミスミソウ
「私は家族を焼き殺された――。」三角草(ミスミソウ)。厳しい冬を耐え抜いた後に雪を割るようにして咲く花。閉鎖的な田舎町の中学に転校してきた少女「春花」を待っていたのは、壮絶なイジメだった。せき止められない憎しみに、少女の心は崩壊する―――!!
ものすごい残酷さと不条理が掛け合わさったダーク感満載の全3巻です。イジメなどに耐性がある人でないと読むことができないくらい、全体を通して暗い雰囲気で描かれています。
お世辞にも絵が綺麗だとは言い難く、登場人物の顔がアップになって髪型などの判別が出来ない状態では、誰のことを描いているかわからないような場面もありますが、それを踏まえても有り余るほど世界観を持っていると言っても過言ではありません。
決して読んでいて気持ちのいい作品では無いので、間違いなく読む人を選ぶ作品と言えるでしょう。胸くそ悪くなるような描写も1つのエンターテイメントとして楽しめる人なら、物語全体を通して楽しめる作品です。
完全版と名前を変えて全6巻構成へと変わりました。
デスペナ
天才ギャンブラー・柏木はラスベガスでしのぐプロのポーカープレイヤー。5年ぶりに日本に帰国したその日、何者かに睡眠薬を飲まされホテルから拉致される。目覚めた柏木は奇妙な椅子に拘束・監禁され、命を賭けた強制ギャンブルゲームに参加することに。第1ゲームはカード4枚の数字を揃える「4枚神経衰弱」と判明するが……。最初の犠牲者となるのは誰だ!?
心理戦を題材にしていて、ギャンブルや水面下での相手との駆け引きなどが好きな人には楽しめるマンガです。本来であればもっと続きそうな雰囲気なのですが、残念ながら打ち切りになってしまった作品でもあります。
カイジとかライアーゲームなどの作品が好きな人なら、かなりハマるのではないでしょうか。今流行りのデスゲームっぽさも併せ持っていますが、内容自体はしっかりとした心理戦・頭脳戦になっているので、いたずらに残酷なだけじゃないというのもgoodです。
「人気はあったんだけど単行本が売れなかったために打ち切りになった」みたいな噂も出ているくらい、なぜ打ち切りになってしまったのかわからない魅力をもったマンガだと思います。
ワールドエンド:デバッガー
完璧人間のミハルにとって、人生なんてイージーモード。日々すべてを舐めきってすごしていたが、ある日「未来からやってきた」と名乗る男・ロミヲがあわれて、すべてが一変!?君と未来と世界のための、命をかけたゲームが今はじまる!!
成績優秀・容姿端麗という何でもできる系の主人公が、Dゲームと呼ばれる「負けたら死亡」ルールのゲームに巻き込まれてしまった一部始終を描いた漫画です。なんと言っても大きな見どころは、未来の自分と2人1組になってゲームに参加するという部分でしょう。
ゲームの内容も様々で、わかりやすい殴り合いから女の子を口説き落としたほうが勝ちという手の込んだものまで多種多様です。せっかく面白そうなゲームが幾つかあるのに駆け足で決着が着いてしまう部分に少し物足りなさを感じてしまいますが、残酷な描写が苦手な人にはいいのではないでしょうか。
未来の自分があまりにもキャラが違って、最初から違和感が半端ないのにも理由がちゃんと用意されているので、納得のできる仕上がりです。
中村工房
鬼才中村光が送る新感覚脱力系ギャグがついにコミックスに!怪しさと不思議さが渦巻く中村ワールドに君もトリップしよう!!
「聖お兄さん」や「荒川アンダーザブリッジ」などで知られる、中村光先生が手掛ける全3巻完結のギャグ漫画です。
その世界観はかなり独特なものになっていますが、登場人物などは荒川アンダーザブリッジに繋がる部分もあるので、ファンなら絶対に楽しめる内容となっています。Kindle版ではあまり評価されていませんが、確かにファンじゃなければ黙って聖お兄さんを読んでた方が幸せになれるかも。
ピコピコ少年
あの頃ゲームがなければ、死んでいたかもしれない。今だから語れる、自伝的ゲーム青春グラフィティ!
1980年代を生きた人(ゲーマー)にとっては、間違いなくドハマりするであろう作品です。イー・アル・カンフーやスパルタンXを知る世代におすすめ。懐かしさが溢れる当時のゲームと触れ合う子供の姿が描かれているので、ドストライクの人にとっては懐かしさのあまり涙が溢れてしまうかもしれません。
私はスーファミ世代なのでちょっとついて行けない部分もありましたが、自分なりの思い出と向き合いながら楽しむことができました。おじさんゲーマーには文句無しにおすすめです。
ピコピコ少年、ピコピコ少年TURBO、ピコピコ少年SUPERの三部作です。ピコピコ少年EXはちょっと趣旨が変わってる気がするので。
あそびあい
自分の欲望と快楽に素直すぎて、いろんな人とエッチしちゃう小谷さん。彼女を独占したいピュアボーイ・山下くん。そんな二人のストレンジラブストーリー。束縛とか嫉妬とか喧嘩とか倦怠期とか、泣いたり悩んだりノタウチまわったり、面倒くさいだけなのに。それでも、どうして人は恋だの愛だのを繰り返しするんだろう。――全世界共通の病・“恋愛”をえぐる革命的作品!!
高校生らしく、頭の中が「性」で埋め尽くされている感が巧みに表現されているのですが、特筆すべきは恋愛感情と性の結びつきです。良くも悪くも「本作の評価=女の子の貞操の緩さについてどう思うか」みたいな部分が大きく、そこに対する考え方によっては不快感を感じる人も少なくないでしょう。
個人的にはちょっと病的な感じにも思える女の子の行動や、終始独特な空気で進んでいく不思議な雰囲気に魅了されて、一気に読破してしまいました。両極端な「悪意のないタチの悪さ」が垣間見れるという意味では面白い作品だと思います。
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全5巻以内完結のおすすめ漫画
甲賀と伊賀の忍者がお互いを憎しみ合っていた中、互いの次期頭領が結ばれることで本当の意味での和睦が成立する寸前に、両者が殺し合うことになってしまった悲劇を描いた物語です。どっちが正義でどっちが悪ということの無い戦いなので、読み進めていくうちにすごく複雑な感情が巻き起こってくるでしょう。それも含めてバジリスクの魅力ではないかと思います。
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全10巻以内完結のおすすめ漫画
地球にやってきた寄生生物と、主人公が戦うというバトルものなのですが、単純なバトルではなく様々な立場の思惑が交錯している作品です。主人公自身も普通の人間だったのに右手を寄生されてしまい、本来であれば敵である右手の寄生生物とお互いの命のために共闘するという展開は今も色褪せない熱い展開だと思います。
無駄に気持ち悪いとか無駄にグロいっていうんじゃなく、根底にちゃんとしたストーリー性があるから全てを楽しめる作品と言っても過言ではありません。全10巻で無駄な描写が一切なく、芯まで楽しめる名作です。
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全20巻以内完結のおすすめ漫画
夜が明けない地で、人々の気持ちがこもった手紙を命を賭して届ける配達員が紡ぐ物語です。手紙を届けるための道中には鎖虫と呼ばれる存在がいるため、一筋縄ではいきません。
ファンタジー要素が強い本作ですが、とにかく感動してしまうことは間違いないでしょう。心が洗われるようなエピソードの数々は、まさに少年漫画の理想と言ったところです。
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全30巻以内完結のおすすめ漫画
終戦直後の荒んだ時代が舞台で、各々いろんな事情によって少年院に収監されてしまった7人の物語です。看守によって理由もなく虐げられたり、時には仲間割れしたり・・・。不条理な世の中に生まれた七人の絆が少しずつ強くなっていくプロセスには、何かを思わずにはいられません。
命が脅かされるような鬼気迫る感じや、青年漫画特有のダークな雰囲気が好きな人におすすめです。
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全40巻以内完結のおすすめ漫画
完全版やら新装改編版など、何度も新しくなっている名作中の名作です。私はスラムダンクをつまらないと言っている人を見たことがありません。そして私自身、小学生の低学年くらいに本作に出会っていたら、おそらくバスケをやっていたと思います。それくらいの影響力を秘めている作品と言っていいでしょう。
軽々しく使う言葉ではないと知りながら、あえて「神作品」と言いたいです。まだ読んだことがないという人には、絶対に読んで欲しいです。
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最後に
本記事で紹介したマンガはどれも1時間~2時間程度の空き時間があれば、最初から最後まで読むことができる作品ばかりです。マンガは長編になればなるほど中だるみやマンネリが目立ってしまうことも珍しくありませんが、全3巻以内に完結しているものは一気に駆け抜けてくれること間違いないでしょう。
寄り道が少なくテーマに沿って描かれていることが多いので、好みの作品が見つけやすいのも大きなメリットだと思います。興味のある作品はぜひ手に取ってみてください。