変幻自在のトリックスター・WORLD ORDERとして活躍した須藤元気の魅力を語る

格闘技ブームが来てた頃、それこそ様々な選手がいましたが『変幻自在のトリックスター』という異名を持ち、多くのファンを魅了した須藤元気という1人の男がいました。その魅力は計り知れませんが、入場のパフォーマンスから試合中の闘い方など、他の試合では見られないような驚きの数々に、私たちファンは衝撃を受けたものです。

試合前の舌戦なんかは割と控えめで、相手を悪戯に挑発するような行動は取らず、試合後も相手の選手と抱き合うというような『格闘家の鏡』のような選手ですが、とにかく面白い試合をします。アゴを出して挑発したり、身体をくねらせて踊ってみたり、背中を向けて闘ったり、前転したりなどの破天荒な闘いぶりは、今見ても面白いですよ。

今回は、試合の結果だけでなく、色んな角度からファンを楽しませてくれた須藤元気選手について紹介したいと思います。

目次

須藤元気の魅力

変幻自在のトリックスター

(出典:http://www.boutreview.com/

格闘家にはキャッチコピーというか独特の愛称のようなものがあり、須藤選手は『変幻自在のトリックスター』と呼ばれていました。試合中は、とにかくトリッキーな動きをします。良く言えば「相手の意表を突く戦い方」と言えますし、悪く言えば「正攻法じゃない」と言えるでしょう。

得意技が『バックハンドブロー』ですし、モハメド・アリじゃないですけど本当にリングの上で舞っているような感じです。

 

入場パフォーマンス

「本当に格闘技の試合!?」と思うような入場パフォーマンスです。これだけでもお客さんが入るんじゃないかと思えるほどの圧倒的なクオリティーですよね。

これについても練習していたことを考えると、その時間も格闘技に充てていたらもっと強かったんじゃないかという嫌味すら言えそうになるくらい、魅了されてしまいます。

実はこれらのパフォーマンスなんですが、衣装やセット、バックダンサーの経費などは全て自腹だったそうです。

 

主な戦績

VS 小比類巻貴之

(ゴングは1:00頃)

元々、総合格闘家としてある程度の戦績は残していたものの、スタンディングルールのみのK-1デビュー戦の相手がミスターストイック・小比類巻選手でした。

相手は打撃が本業ですから圧倒的に分が悪い闘いなのにも関わらず、バックハンドブローでダウンを取っていますし、K-1の世界に須藤元気の名を知らしめる試合となったことは間違いないでしょう。

 

VS キム・ジンウ

(ゴングは4:45頃)

K-1ルールでの試合2戦目です。相手がテコンドーの選手ということもあり、パンチでダウンを2回奪って完勝です。バックハンドブローが必殺技として定着した試合ではないでしょうか。相手が予想だにしない角度からもらうのもあって、効くんでしょうね。

それにしても本当に盛り上げるのがうまいです。調子に乗ってるようで表情は真剣そのものっていうのも、怖い魅力があると思います。

 

VS バター・ビーン

体重差110kgという明らかに何かがおかしいマッチメイクですが、鮮やかなヒールホールドでKO勝ちです。立ち上がりの段階で、引きで見てても腕の太さから何から違い過ぎて笑えてきますね。

しかし寝技ありのルールは、レスリング出身の須藤選手の土俵ですから、速攻でタックルして関節技に移行するかと思いきや、前半戦は立ち技オンリーでしつこいくらいに膝を狙っています。

これまでの試合でも立ち技に対するこだわりを見せていた須藤選手ですが、本気でバター・ビーンに立ち技で勝つつもりだったのかもしれません。

 

VS 高谷裕之

(ゴングは32秒)

私の中で須藤選手のベスト・バウトです。スタンディングでは完全に高谷選手に分があると判断したのか、途中からは「いかに寝技に引きこむか」という闘い方にシフトしていきます。

映像上の5分経過するかしないかでタックルを出したものの、その後は完全に警戒されていますね。あえて飛びついて寝技に引き込んだのも、自分の土俵だという自信の表れでしょう。

最後の腕ひしぎからの三角締めがもはや芸術の域で、UFC-JAPAN王者らしい見事な1本勝ちでした。

 

VS 山本KID

(ゴングは2:17)

当時、レフェリーストップのタイミングについて賛否両論あった試合でしたが、山本KID選手はレフェリーが止めてからも無視して殴り続けるような選手なので、須藤選手の意識がしっかりしている時点で試合が終わったという点については、ファンとして喜ぶべきなのかなぁと。

試合の形勢は完全に山本KID選手寄りでしたし、両者ともレスリングの選手ということを考えても、寝技をすれば須藤選手に完全に分があるというわけでもありませんから。結果、仕方ない部分もあるのかなぁと思いました。

それでも白熱したいい試合だったことは間違いありません。というか、この頃の山本KID選手はギラギラしてて凄かったですからねぇ。

 

VS ジャクソン・ページ

(ゴングは5:23)

須藤選手の引退試合です。急に発表したようなカタチだったので、非常に驚いたのを覚えています。相手の打撃がすごかったので須藤に不利な状況だと思っていたのですが、そこからの三角締めで鮮やかな1本勝ちを収め、自身の格闘技人生を華やかに飾りました。

2回目の三角締めで仕留めているあたり、自分が下になってから勝つことを想定していたのかもしれませんね。見事です。

引退後

映画監督・映画俳優としての活躍

元々、現役の頃から『狂気の桜』という映画で俳優デビューしていますし、そういう道にも興味があったのでしょう。

日本映画の『R246 STORY』の中の短編の1つである『ありふれた帰省』で初監督を務めています(自身も出演)。後に『仮面ライダー』の出演も果たしました。

 

芸術家としての一面

書道展において何度も入選を果たしたうえに、2008年には『泰書展 新人奨励賞』を受賞しています。

格闘家としては非常に知的なイメージがあった人なので、こういった側面を持っていることに関しては驚きませんでしたが、賞を獲るほどのレベルというのはすごいですね。

 

レスリング部監督に就任

拓殖大学レスリング部の監督に就任した翌年、リーグ戦にて優勝を収め、最優秀監督賞を受賞しています。

その他にも『世界学生レスリング日本代表監督』を務めたり、日本オリンピック委員会のレスリング強化スタッフに就任するなど、格闘家を引退してもなお、後継者の育成に尽力を注いでいるようです。

 

WORLD ORDER

2009年に結成されたパフォーマンスユニット『WORLD ORDER』は、ミュージックシーンにおいても衝撃を与えました。見ていて非常に面白い映像です。

この発想はまさに、現役時代のパフォーマンスからきていると言っても過言ではないでしょう。きっと、観客を喜ばせるのが心の底から大好きな人なんでしょうね。

残念ながら2015年の後半から、須藤元気さんは裏方に徹するということで表舞台からは去ってしまったようですが、今後も一風変わったアプローチをしてくれることでしょう。

 

最後に

意外と負け試合も多く、K-1などのビッグタイトルを獲ったという成績もありませんが、人を惹きつけてやまなかったのが須藤元気という格闘家です。自身の才能を遺憾なく発揮し、現役を引退してもなお輝き続けている姿は、本当に人間としても優れていることを証明していると思います。

ビッグマウスで観客を惹きつける格闘家は山ほどいましたが、パフォーマンスという別方向から観客を魅了し、試合前後は紳士的な行動を取っていた選手は、他にはいないのではないでしょうか。名実ともに『変幻自在のトリックスター』だったと言って、間違いありませんね。

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