「このマンガがすごい!2017年」 オトコ編1位を受賞した「中間管理録トネガワ」ですが、カイジファンには心の底からたまらない仕上がりになっています。通常のギャグ漫画としても楽しめる本作ですが、カイジの世界観を知っていることでより一層楽しむことが可能です。
ここまでくるともはやスピンオフ作品という枠を大きく超えていると言っても過言ではありません。カイジファンなら「あの利根川がっ!?!?」と度肝を抜かれてしまうことでしょう。今回は「中間管理職トネガワ(全10巻)」を紹介したいと思います。
中間管理録トネガワってどんなマンガ?
カイジシリーズの1番最初の作品「賭博黙示録カイジ」にて、あの帝愛グループ幹部でもありEカードの対戦相手も務めた利根川幸雄が主人公のスピンオフ作品です。本編からは全く想像できないようなコミカルな世界観でもって描かれています。
帝愛グループの幹部として兵藤会長に近い位置にいるために抱えている気苦労や、黒服たちを取り仕切らなければならないという中間管理職ならではの葛藤が面白おかしく描かれており、多くのカイジファンを唸らせた作品と言っていいでしょう。
利根川幸雄とは?
賭博黙示録カイジ 第11巻
そもそも利根川幸雄の何たるかを知っておかないと、本当の意味で本作を楽しむことはできません。利根川は帝愛グループにおいて兵藤会長の近くにいることを許されている非常に優秀な人間です。簡単に言えば「帝愛グループっていうめちゃくちゃでかい大企業の王様の側近」みたいに思ってもらえれば。
時系列的には本作の後になると思われますが、利根川はカイジとEカードというギャンブルに負けて失脚する運命にあります。その際はカイジも「利根川が優秀だからこそ引っ掛かる罠」を使って勝利するので、自他共に認める優秀な人物だと言えるでしょう。また、カイジシリーズの名言の中には利根川が発信したものも数多くあり、中でも「金は命より重い」は、カイジシリーズ屈指の名言となっています。
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中間管理録トネガワを楽しむポイント
黒服いじり
コミックス1巻
これまでのカイジシリーズをずっと読み続けてきた立場からすると、黒服なんてものは「その他大勢」であり、特に個性なんてものは気にしたことがありませんでした。さしずめテレビ番組の「逃走中」におけるハンターのような扱いで、全員が全員ハンターであり、それ以上でもそれ以下でもないと思っていたんですよね。
それが本作では冒頭から徹底的にイジっていきます。初っ端に利根川が言ったのが「いい大人が全員黒い服に黒いサングラスで、区別なんか付くかバカヤロー」的なことだったんですけど、この時点でカイジファンの心は鷲掴みにされたと言っても過言ではないでしょう。
そして1人ずつ自己紹介をさせるのですが、ここがまた秀逸で「わかりにくい名前」だったり「覚えにくい名前」だったりしてクスクス笑いを誘うんですよね。カイジファンからすると「あの優秀な利根川が!?」と思わずにはいられないシーンです。左衛門三郎についてはさて置き、荻野と萩尾はあるあるですよね。
カイジ的な表現いじり
コミックス1巻
本作には随所にカイジの流れを汲んでいる表現が登場します。上手くは言えませんがカイジ芸人として有名な「こりゃめでてーなの伊藤さん」がやりそうな感じのこととでも言いましょうか。アニメのナレーションが目に浮かぶような感じのアレですよ、アレ。
上記画像の「選ばないという選択・・!!」というのも、本来であれば心理戦・頭脳戦の中で起死回生に繋がる発想として使用されるべき描写だと思うんです。それが本作では会長の機嫌を損ねないために日和っただけのことで、それを大袈裟に表現することで読者の笑いを誘っています。
そこに辿り着くまでの心理描写も非常に面白く、突き詰めると「これがあの利根川なのか?」という種類の笑いなのですが、とにかく面白く仕上がっています。本来であれば芸人さんとか同人誌あたりがやりそうなことを、作者の福本さん本人がやっているようなイメージです。
勘違いが生む笑い
コミックス1巻
カイジファンなら知らない人はいないであろう土下座強制機も登場します。しかもこれを使ってバーベキューをするんですから、なかなか粋な角度からボケを放り込んでくるなぁと思わずニヤけてしまいます。てか、なんだよトング掛けって。
このときの描写が楽しそうであればあるほど、心のどこかに「いつかこれで痛い目を見るくせに・・・」というのがチラついて物語に集中できないんですよね。これを読んだ後に賭博黙示録カイジを読むのはなかなかハードルが高そうだと思いました。
シュールな笑いも多め
コミックス1巻
カタカナ三文字がここまで面白かったのって久々なような気がしました。流れとしては非常にシュールで、どれも「あの利根川が!?」というのがあるので何をやっても面白いんですよね。別にパワーポイントだろうが何だろうが別にいいじゃんって話ですもん。
あとは「限定ジャンケン」誕生の裏側を見られるドキュメントのような雰囲気もあって、カイジシリーズのファンとしては非常に満足です。賭博黙示録カイジにて限定ジャンケンのルールを偉そうに説明していた場面が脳裏に浮かびましたが、結局これも部下の黒服の意見だったんだなぁと。
兵藤いじり
コミックス2巻
本編からは絶対に考えられない兵藤イジりを見ることも本作であれば可能です。本編を見る限りでは確実に崇拝していると思ってましたから、まさか裏側でこんなに苦労しているとは夢にも思いませんでした。
「何かを報告するにもイチイチ機嫌を伺うなんて気苦労も絶えないなー」なんて思ってたら、比較的機嫌の良い風呂上りを狙って、かつ眉毛の角度で判断するとかアホすぎるでしょ。しかも「顔パックでそれが見えない!」って大の大人(しかもあの利根川)がやってるんですよ。
圧倒的、誤算!!
特別読み切り
コミックス2巻
特別読み切りとして班長の1日外出を追った様子も描かれていて、とにかくお腹一杯にしてくれます。この圧倒的満足感は、他のマンガでは得られない代物だと言えるでしょう。これに関してはシリーズ化して、色んな登場人物の視点から描かれていくことが予想されますが、メチャクチャ面白いです。
※2017/09/25追記分
「1日外出録ハンチョウ」という名でコミックス化されています。
最後に
作者の福本先生があれこれ手を広げ過ぎているのが少し気がかりですが、本作は賞を受賞しただけあってめちゃくちゃ面白い作品です。しかし本作は本編を知ってこそ楽しめるネタが多いので、賭博黙示録カイジ→中間管理録トネガワの順番で読むことを強く推奨します。
なによりコッチを読んだ後で本編を読もうものなら、緊迫した心理戦すらギャグになってしまうからです。カイジを知っていればこれ以上ないくらいのギャグ漫画に仕上がっていますので、興味のある人はぜひ読んでみてください。
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