言わずと知れた超人気ボクシング漫画である「はじめの一歩」ですが、気付いたら随分と長編漫画になりましたね。ちなみに発行巻数順に並べたらゴルゴ13、こち亀などに続き第5位(2017/04/24現在)でした。もし「ボクシング漫画と言えば?」という質問でアンケートを取ったら「あしたのジョー」と1位争いをするんではないでしょうか(下手したら現時点で既に勝ってるかもしれません)。
「いじめられっ子がボクシングに出会い、人生が180度変わる」といういかにもなストーリーですが、ひたむきな一歩(主人公)の姿に心を震わされました。私が学生の頃は本当に面白くて、毎週水曜日のマガジン発売日が待ち遠しかったものです。
それが今では・・・。
正直あまり読んでいないのに「つまらない」と言ってしまうのもどうかとは思いますが、たまに見開いてみると休載だったり、ボクシングに関係ない話だったりで嫌気が差したのも事実です。ましてメインディッシュ(宮田戦)が引き伸ばされ過ぎて、もはや「主人公の一歩がどこに向かっているのか」を見失ってしまいました。
私を始めとする読者の大半のみならず、作者の森川先生でさえも着地点を見失っているんじゃないかと思ってしまうほどです。そこで今回は「私が『はじめの一歩』を「つまらない、面白くなくなった」と感じてしまうようになったのは、いつからなのか」について考察したいと思います。
内容に関するネタバレがあるので未読の方はブラウザバックしてください。
~新人王トーナメント
コミックス 第1巻
今読み返すと絵は非常に変わっていますが「この先、どうなっていくんだろう?」というワクワク感に溢れていました。本記事を書くに当たってもう1度最初から読み直しましたが、絵の古さが大丈夫であればめちゃくちゃ楽しめます。
内藤大助選手が世界王者になったときに「実写版の幕ノ内一歩」と言われたように、今でこそいじめられっ子が世界の頂点に上り詰めるという縮図がありふれていますが、そのパイオニアとも言えるべき作品は本作なんじゃないかと思いますね。それこそ始まった当初はジョフレのようなアッパーやカウンター程度の技の応酬だったので、いわゆる必殺技みたいなものがない、本格派志向のボクシング漫画でした。
作者の森川氏もここまでの長編漫画になると思っていなかったのか、最初の方のキャラクタープロフィールには生年月日が書いています。それから察すると現在の鷹村の年齢は…(ヤボなことはやめておきましょう)。
新人王トーナメント
コミックス 第9巻
次々と現れる強敵たちに胸が躍りました。オズマ、小橋、速水、間柴・・・。中でも「小橋に苦戦して、速水に1RでKO勝ち」っていうシナリオが意表を突かれたようで一気に夢中になったのを覚えています。あとは宮田の敗北ですね。ここのおあずけは、今読んでも非常に上手かったと思いました。「ここで一歩vs宮田を描いてしまったら、きっと味気なかっただろうなぁ」と。
初めて読んだ当時、準決勝で敗れた宮田からの伝言で宮田の父親が言った「すまなかった」の一言がめちゃくちゃ響いたんです。当時は若かったのでアレですけど、今読み返したらウルっときちゃいました。怒りに燃えて、拳のケガを顧みずに間柴を倒す一歩の姿にシビれましたよ。ただしこの頃から徐々にショットガンだのフリッカージャブだの必殺技が少しずつ出始めます。やっぱ派手な必殺技がないと少年誌での盛り上がりに欠けると言うことなのか。とりあえずここは普通に面白かったので良しとしましょう。
一方、準主役で化け物みたいな強さを誇る鷹村守が日本王者になったのもこの頃です。この頃から化け物じみた強さはありましたが、タイトル戦でダウンするあたり「まだ人間っぽさ」が残っていたようにも思えます。
全日本新人王~A級トーナメント
コミックス 第14巻
まずは千堂との死闘ですね。「同じタイプのボクサーとの対戦」ということで結果が気になったのはもちろん、劇的な結末を迎えることで、完全にはじめの一歩の虜になっていました。一方で海外に渡ってJOLTという必殺を身に付けた宮田。得意技と言うカテゴリーを振り切って、1キャラに付き1必殺技というスタンスになり始めたのも丁度この頃です。時期系列は詳しくわかりませんけど、ゲームソフトとかを意識し始めたんでしょうか。
昔、一歩をイジめていた梅沢の登場は粋な演出だったと思います。これまで対戦相手との絆みたいなものは描かれていても、本当の意味での友情のようなものは描かれていなかったので、足りなかったピースがようやく埋まったというような感じですね。引退発言からなんとか復帰し、鷹村とのスパーリングで涙を流す一歩の絵はとても感慨深いものがありました。戻ってくるのは分かりきってましたけど、実際戻ってきたときは「キターッ!!!」って感じでしたね。
A級トーナメント
コミックス 18巻
コミックスで言うところの16巻からですね。冴木、ヴォルグなどの日本ランカーたちと試合をするようになりました。「これに勝てれば、遂に日本王座に挑戦!」というところで、めちゃくちゃ内容が気になって仕方がなかった時期です。どうしても単行本が読みたくて、でも当時は学生でお金がなく…なんとか昼ご飯のお金を節約して単行本を買ったなぁ。
冴木戦については少し冷めてしまう部分がいくつかあり、例えば「この対戦相手は強いぞ!」という煽りでチャンピオンの伊達が冴木とスパーリングをした際に「何発カスるか試してみるのも一興だった」と涼しい顔で言い放ったシーンです。「あなた王者ですよね?」って思ったりもして、パワーバランスが無茶苦茶な気がしました。いわゆる誇張表現が度を越したパターンというんでしょうか。実際の試合でも「見えないということは言い返せば逆に見えるということ。だから見えない方向にパンチを出す」という部分は「うそー!?」と思わざるを得ませんでした。
真横にパンチ出すって輪島のフェイントじゃないんだから。一方で青木や木村など身近な人間の負け試合を描いたのも、ちょうどこの頃です。会長の言葉が胸に染みます。言うまでもなく超絶面白かったです。軽く批判もしましたが、まだ面白さの方が断然上回っている時期です。多少の不満はまったくと言っていいほど問題ありません。
日本王座挑戦
コミックス 22巻
間違いなく私の中で「はじめの一歩のベストバウト」です。コミックスで言うところの30巻を過ぎたあたりで「ファンが選ぶベストバウト」みたいな特集では3位でしたけど、私の中では断トツでこの試合ですね。もうとにかく読んでほしいです。最近の若い世代の読者だと最初の古い絵に馴染めないという方も少なくなさそうですが、ここまでは間違いなく名作と言えるでしょう。
ただ「ここで終われば良かった」というわけではありませんし、まだまだ面白くなっていきます。「はじめの一歩って本当に面白いなぁ」と再確認する1つの山場といった感じですかね。魔法のパンチという伏線に始まり、伊達の「お前のパンチは軽いんだよ」という挑発。更には「ここに打ち勝てなくて、なにが世界だ!」と言いつつ、一歩の土俵で勝負をする王者・伊達の姿に感服です(ちょっと前に日本ランカーに対して「何発カスるか・・・」とか言ってたヘタレには思えません)。
最後の最後まで試合の行く末が想像できない展開だったのも、面白いと感じた要因の1つだと思います。最後の瞬間もまったく予想をしていなかった終わり方でした。控えめに言ってもめちゃくちゃ面白いです。
復帰戦~日本王座再挑戦
コミックスの24巻で初めて「デンプシーロール」が登場します。これで一歩の必殺技はジョフレアッパー、ガゼルパンチに続いて3つ目になりますがデンプシーロールは後に一歩の代名詞になる必殺技です。最初は「デンプシーロール一辺倒になってから、つまらなくなったんじゃないか?」と思っていましたけど、今後は「このデンプシーロールをどうやって攻略するか」みたいなものを中心にライバルたちが向かってくることになるので、そういう意味では「必殺技が冷めさせた」というわけではないんでしょうね。
そして鷹村・青木・木村の過去の回想シーンなんかも織り交ぜてきたのも、ちょうどこの頃です。それの反響が良かったんでしょうか、合間に長めの回想シーンをブッ込んでくるのも他のマンガに比べて明らかに多くなったと思います。あ、そうそう。鷹村が素手で熊を倒したのがこの辺りですよ。あと恋愛的な場面が増えてきたのもこの頃です。正直言うと何となく「ノイズが増えてきた」ような気もしなくもありません。いや、まだ面白いんですけどね。
日本タイトルマッチ 千堂戦
コミックス 第30巻
作者の森川先生は作中のどこかで「最終回のつもりで気合を入れて書いた」と語っていましたが、始まりから終わりまで気が抜けない試合になっています。しかも相手が宿敵である千堂ですからどう考えても申し分ないでしょう。ちなみに「ここで宮田と戦うわけにはいかなかったのだろうか」という考えもできなくもありませんが、まだまだ面白いシーンが生まれるので、ここのマッチメイクも結果的には大正解だったと考えるべきですね。
私は「単行本でじっくり読みたい」と考え週刊マガジンを読むのを我慢していた時期でしたが、単行本の表紙でネタバレするという体験をしたのも今では良い思い出です。試合については以前の千堂戦のときと比べて絵も格段に上手くなっていますし、非常に見応えがあります。『ララパルーザ(ラルルアパルルオーザ)』というタイトルも素敵だと思いました。
私がこの試合よりも伊達戦を推す理由としては「最初のダウンが安っぽい」とか「一歩をコーナーに追い込んだ千堂が、苦し紛れに一歩が出したガゼルパンチで簡単にダウンした」とかダウンという演出の安売りです。「一歩のハードパンチをもらっておいてダウンしたにも関わらず随分と簡単に立ち上がるんだなぁ」と思ってしまったんですよね。ガゼルパンチなんてヴォルグ倒した必殺技ですからね。それが弱パンチ扱いですよ。
ただ、それも「ケチをつけるなら」という前提で見つけた粗のようなものなので、普通に読んでいたら面白いことに変わりはありません。最高峰の見せ場だと思っています。
主役変更期
木村の日本王座挑戦
コミックス 第32巻
木村が間柴と日本タイトルを賭けて戦うんですが、これも名シーンが満載の試合です。宮田が登場したり青木との友情が感じられるシーンがあったりとファンには堪らない内容でしたね。試合も劇的な終わり方をするので、後に開かれるファン投票で2位になったのも頷けます。これを機に木村が好きになったという人も多いことでしょう。
ドラゴンフィッシュブローというネーミングはさておき必殺技の発想は非常に面白かったですし、アウトボクサーの木村がインファイトに徹するという展開がこの試合の魅力を引き立てたのではないでしょうか。これが伏線となって後々の板垣VS今井戦に反映されているあたりは流石だと思いました。
ただやはりパワーバランスがおかしい感じはめちゃくちゃ感じます。「一歩に負けた後に階級を上げて減量苦が軽くなって強くなった=死神」が長年振るわなかった木村に追い詰められるという…。個人的にはこの試合の後は間柴に対して強いというイメージがなくなりました。
一歩VS真田
会長の過去を語る伏線を張ったのか、後々一歩の結婚的なものも描こうとしているのか…。一歩の試合ではあるのですが、主役が別の所にいるような気がする展開でした。恋愛要素が急に強くなりましたし。一歩と会長の絆みたいなものを描きたかったのかもしれませんけど。
試合に関しては一歩が苦戦しているものの「どちらが勝つんだろう」というドキドキ感が一切無かったというんでしょうか。「あー、これ一歩が勝つし久美ちゃんも一歩の応援に来るパターンね」というのが手に取るようにわかるというか(ハッキリ言うと茶番だなぁと思いました)。ただ対戦相手が医者志望という異色なカードだったことと初防衛戦という部分は新鮮だったかもしれません。それでも色んな部分で結果が見えるシナリオだったと思います。
宮田VSアーニー
コミックス 第36巻
最初は「宮田って強いなぁ」ってイメージがあったんですけど、間柴に負けたり、海外行ってジミーと戦う前に引き分けてたり、そういうシーンが多いからなのか「イマイチ強い感じがしない」と思うようになったのは私だけでしょうか。
東洋太平洋王者ですから強いんでしょうけど、なんとなく強そうに感じない描写(減量苦)が多いからなのか、あまり強大なライバル感というのを感じなくなりました。もし一歩VS宮田が実現したとしても「普通に一歩、勝つんじゃね?」みたいな。減量でフラフラですし、実の父親に「お前のパンチは軽い」とか言われてますし。
それでも「スピードの次元が違う」という長所には磨きがかかっているようで、東洋太平洋の王者が驚くほどのレベルです。パンチを出したらロープを殴ってしまい、肝心の対戦相手は背後にいるんですからそりゃ驚きますよね。それでもアーニーがそんなに強そうに見えなくて、それに追い詰められている宮田を見たということもあり、後々の「宮田と戦っても一歩は負ける」という言葉の信憑性が低く感じる要因になりました。だってブラッディクロスは一歩に効かねーじゃん。
伊達VSリカルド
個人的にですよ?「あー、やっちゃった」って思う場面が多々ありました。それこそスパーリングとはいえ日本王者が手も足も出なかったり、東洋太平洋王者が簡単にあしらわれたり…。リカルドは初登場の世界王者なんでまだいいです。伊達は一歩との試合が終わってから「お前、精神と時の部屋で修行でもしたのか?」ってくらいパワーアップしてます(もしくは宮田がクソ弱いか)。
実際の試合も差があり過ぎてなんて言うんでしょう。「あ、一歩がリカルドと試合をして勝つことはないな」と悟ったというか。「この物語の終わりは世界タイトルというより宮田との対決なんだろうなぁ」と思いましたよね。そして一見弱そうに見える宮田も精神と時の部屋で修行してくるんだろうなぁと。
このチート級に強いリカルドに勝つ設定を描くとしたら、ぶっちゃけ「加齢によって衰えすぎた」とか「病に侵されている」などの背景を加えないと成り立たないでしょう。そんなリカルドを倒しても読者は誰も喜びませんから、必然的に「リカルド戦は無い!」と思いました。
読んでいて中だるみしてきたように思えますが、それでも伏線だと信じて発売日に単行本を買っていた時期です。ただこのあたりは「単行本の発売日が待ち遠しい!」ということはなく「あ、発売したんだ。じゃあ買うか」という感じでした。
一歩VSハンマー・ナオ
コミックス 第39巻
「中だるみなんて言っちゃってごめんなさい!めちゃくちゃ面白い!」ってなったのがこの試合です。試合が始まるまでの煽りとか演出とか本当に面白かったですね。今読んでも本当に面白い!粋な演出をしますなぁ。ここで秀逸な伏線の回収を垣間見たような気がします。ボディーブローとかノーガードとか、過去のシーンの数々が脳裏によぎりました。何よりもこのタイミングで板垣という後輩ができたことの意味ですよね。
これまでは再起戦以外「どんな相手にも苦戦する」という一歩でしたが、ここにきて初めて「どっちが勝つんだろう」じゃなくて「どうやって勝つんだろう」という試合展開でした。個人的には毎回苦戦して盛り上げるというよりも、こういう展開がもっと多くてもいいんじゃないかと思いますけど…(それはそれで盛り上がりに欠けるような気もしますが)。
今後ますます面白くなっていくだろうと確信した時期です。ちなみにですが、この試合後ゲロ道が登場する時に「顔が元に戻っていた」のには笑いました。
鷹村の世界戦
コミックス 第44巻
途中つまらないって言ったらアレですけど、不要なギャグの描写によって抱いた不満を思いっきり吹っ飛ばして夢中にさせてくれました。試合前の煽りといい実際の試合といい、間違いなく最高峰のボクシング漫画だと思いましたから。泣かせる場面もありますし、鷹村の試合なのに「ちゃんと試合っぽくなってる」っていうのもいいですね。
最後にオチが付くのも鷹村らしくて素敵だと思います。未だに「リアルタイムで10カウントを読んでいた瞬間」が思い出せますもん。体育の授業の後でした(笑)鷹村がカッコ良すぎて授業どころじゃなかったくらいです。鷹村戦に関してはココを超えることはないでしょう。すべてにおいて完璧な展開だったと言えるのではないでしょうか。あー、はじめの一歩おもしれー!
ちなみに対戦相手のブライアン・ホークについては実在するボクサーをネタに描かれたと知って、当時は度肝を抜かれました。その選手の特集記事も書いていますので興味のある方は覗いてみてください。
【関連記事】もはやマンガの世界!ボクシング元世界王者『ナジーム・ハメド』について語る
会長の過去
良い話ではあるんですけど結構長くてしんどいです。もう主役の一歩が蔑ろにされてから結構な時間が経つので、いまいち腑に落ちない感じと言うんでしょうか。「こういうのはスピンオフでやってくれ!」って思うの私だけ?終戦当時の会長と猫田が米軍と戦った話なのですが、つまらないわけじゃなくて普通に面白いんです。
でも「早く一歩の試合を見せてくれ!」って思ってたのも事実です。ブライアンホークのトレーナーと前に会っていたとか、どうでもいいんですよ。体格の違い過ぎる米兵をボディーブロー1発で沈めたっていう武勇伝とか、自分が猫田よりもモテた過去とか…こんなんもう「熊を撃退した」ってワイドショーのカメラに向かって自慢げに語るおじいちゃんみたいですもん。
一歩VS島袋
コミックス 第49巻
このあたりから宮田戦を意識させ始めます。それと同時に「デンプシーロールはカウンターに弱い」というテーマに沿って物語が進んでいくわけですが「この先どうなるの?」というドキドキ感がありました。というのも対戦相手の島袋は「打たれ強さに自信がある選手」なわけで、相打ちでも自分が勝つという自信を持った選手だったので「これ、カウンターパンチャーきたらどうなるの?」というまさに森川マジックにハマった瞬間です。
試合自体は良くも悪くも予想通りですし、島袋をダウンさせて有利なはずの一歩が「ボクの負けだ…」と言い放ったりする過剰な演出を多々感じますが、今後の伏線になるいい試合だったと思います。「どうせ一歩が勝つんでしょ?」とは思いながらもまだ夢中になって読んでいた時期です。
青木の日本王座挑戦
コミックス 第50巻
ギャグ感がありながらも普通に面白い試合でした。「よそ見」とか秀逸すぎるでしょ。基本的に青木と木村の試合結果は同じになるので、木村がタイトル挑戦に失敗している以上は青木も普通に負けるもんだと思っていましたが、意外な結果になりました(勝つことは無いという意味では予想通りでしたが)。
しかし木村の時とは違って特に感動はしませんし、ウケるとは言っても笑ったりはしません。こういう試合があってもいいのかなぁなんて思う反面、やはり木村の二番煎じでしかないように思ったり思わなかったり。対戦相手で王者の今江は、森川氏の友人(?)であるバス釣りのプロの方から名前をいただいたんでしたっけ?その辺りも「なんかなぁ…」って感じでした。
一歩VS沢村
コミックス 第55巻
読み直して色々考えた結果、私が思う「はじめの一歩のピーク」がここです。理由については後述しますが、とにかくこの沢村戦がめちゃくちゃ面白かった!試合前の描写、試合の進行の仕方、最後のフィニッシュに至るまで本当に目が離せない展開だったと思います。なにより「デンプシーロールが攻略される恐怖」みたいなものを試合前からひしひしと感じましたよね。
ヴォルグが登場したことも千堂が登場したことも、そして宮田が登場したことも。すべてにおいて熱い試合だったと言えるでしょう。「∞の可能性を秘めたデンプシーロール」とかカッコ良すぎ。何発かのカウンターに耐えられた理由みたいなものもしっかりと用意されていたし、試合の結果を知っている今もう一度読み返しても本当に面白い試合だと思います。
ちなみにこの前後で鷹村がタイトルマッチにおいて「よそ見」をしたりしますが、世界タイトル奪取にしかチカラを入れない感が凄まじいです。∞に手抜きしすぎ。
鷹村の2階級制覇挑戦
コミックス 第61巻
梅沢がマンガ家を目指すくだりや鷹村と宮田の合宿、板垣・青木・木村の試合、鷹村に網膜剥離の疑いなど色々ありますが、どれも蛇足感が否めません。…鷹村の網膜剥離のやつ、いる!?!?個人的には「梅沢がマンガ家を目指すために釣り船屋をやめるところ」は結構好きですが、一歩の試合と合わせて描いてくれたらいい描写だと思うんですよ。それが「数ある蛇足の中の1つ」みたいな感じになってしまったような気がします。
そして遂に鷹村の世界戦です。1度目が気合入り過ぎてたのか色んな意味で残念に感じました。端的に言うと「イーグルは強くない」ように見えたんですよね。ホークの方が断然強いような気がします。というか鷹村はタイトルさえ獲ってしまえば、その後の防衛戦は無傷で勝ったりするので、そういう意味ではこの試合も手抜きと言えば手抜きなのかもしれません。この試合が終わり鷹村の2階級制覇が成功すると、むしろ「外野の試合はもう必要ない」とさえ思うようになりました。
これ以降の話
ここから先は惰性でコミックスを買っていました。板垣にスポットが当たったりギャグ要素が強くなってきたりと、かなり迷走し始めたんじゃないかと思います。肝心の一歩の試合においても「明らかに格下」というか魅力に欠ける選手とのマッチメイクが目立ち始めました。
これまでは「もしかしたら一歩は負けるんじゃないか」と思ったり、あるいは「勝つのはわかるけど、どうやって勝つんだろう」というような試合ばかりだったのが、この前後では「普通に勝つんでしょ?」というような感じと言うんですかね。「板垣VS今井」は白熱した試合にはなっていましたが、所詮「一歩VS宮田の劣化版」というか、恋愛感情なんかも持ち込んできたりして個人的にはとても微妙でした。
宮田との試合!?
東洋タイトルマッチが内定
コミックス 第67巻
冷めていた熱が急に戻って来たような感じでしたよね。寝耳に水というか青天の霹靂というか、とにかく驚いたのを覚えています。「リカルド放り投げるの!?」とか「鷹村の6階級は!?」とか色々ありましたが、宮田と試合してストーリーが続くとも考えにくかったのもあり、最終回が近いかもしれないと本気で思いました。
沢村を倒したことで昇華したデンプシーロールと天性のカウンターパンチャーの戦いが楽しみで楽しみで仕方なかったです。大袈裟に言うと「地球に生まれて良かったー!」と叫びたくなるくらいワクワクしたのを今でも鮮明に覚えています。
一歩vs宮田の試合が一旦流れる
コミックス 第71巻
宮田が拳をケガしたということで当初の予定を延期するというカタチになりましたが、この時点で完全に「あ、やらないのね」と思いました。「どうせ延期でもなくなるんでしょ?」と。一方で「鷹村の雑な世界戦」や「間柴VS沢村の日本タイトルマッチ」なんかもありますが、どれもかつてのドキドキ感が無くなったように思えます。
何て言うんでしょうか…「宮田との試合やるやる詐欺」というか何というか…。例えば昇給の話を社長にされて「次こそお前の番だ!」と言われ続けているうちに「昇給とかもうどうでもいいわ」ってなるような感じって言うんでしょうかね(←たぶん違う)。
そしてこれまで話が脱線するときは大体「釣り」が相場だったのですが、遂に「野球」にまで手を出したときは唖然としましたね。更には板垣の試合まで手抜きになるという始末。新人王を決めるというシーンは、かつての「一歩VS千堂」と同じカードであるにも関わらず、一歩の時と板垣の時の熱量の違いには溜息しかでません。正直「こうなるなら最初から書かない方がいいんじゃないか」と思えるほどです。
一歩と宮田の試合が破談
コミックス 第76巻
恐らく、ここが「完全に冷めた瞬間」だと思います。宮田との試合がおあずけになった瞬間ですね。この後もしばらく単行本は購入していましたが週刊マガジンを楽しみにして購入することはなくなりましたし、単行本を買うのも90巻を迎えたあたりから滞っています。
印象に残っている試合なんかもあまりありません。最近は読むこともなくなりましたが最新刊のAmazonのレビューなんかを見ていると「やっぱりか…」という気持ちになってしまうんですよね。
最後に
今回の「私がはじめの一歩をつまらないと感じてしまうようになったのはいつからなのか」についての結果は「沢村戦が終わり、宮田との試合が流れた瞬間」という結果になりました。その前の沢村戦がメチャクチャ面白かっただけに、その勢いでもって宮田戦をやっていたら絶対面白かったはずなんですよ。それが破談になってしまってショックというかガッカリしたんですよね。
いくらニンジンを目の前にぶら下げられていても、それが食べられないと悟った瞬間って冷めるじゃないですか?恐らくそんな感じではないかと。どんな名作マンガでも作者の思惑だけでは簡単に完結させられないというような、様々な大人の事情があるのでしょう。
明らかに「止め時を見誤った作品」というのを数多く見てきましたが、どう考えても現在のはじめの一歩は脱線しているように思えます。これがどうでもいいマンガであれば構いません。かつて心を震わせてくれたマンガだと思うからこそ残念で仕方がないです。「終わりよければ全て良し」ではないですが、最終的に「いい終わり方をした」という話が聞こえてきたら一気に読めるということを楽しみにしていたいと思います。
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