追い炊き機能付きの給湯器であれば、温度がぬるくなった時に追い炊きをする機会も多いと思います。しかし「42℃設定にしているのにも関わらず実際はぬるい」もしくは「設定温度に対し極端に冷たい」という修理依頼が非常に多いです。
その内容は体感的なものによる微々たる差から、明らかに故障を疑うほどの温度差まで様々ですが、中には簡単に解決するパターンも少なくありません。また、お客さんの中には42℃設定にしてお風呂を沸かし、実際の水温計で測定した温度が41℃ということで不良品だと訴える人もいました。
なかなか追い炊きのメカニズムについては知られていないので、今回は「お風呂が設定温度よりぬるいのは給湯器の故障なのか」についてご紹介します。
お風呂の温度の測定位置は給湯器内部
意外と知られていないのですが給湯器で追い炊きをする際、設定温度に達したかどうかを測定しているのは浴槽内ではありません。給湯器の機種によって様々ですが、循環ポンプの手前や熱交換器の手前など…いずれにしてもお風呂の温度を計測しているのは給湯器本体内です。
多くのお家では給湯器の設置場所と浴室は近いことが多いですが、どんなに近くても数メートルは離れているので誤差が生じてしまうのは必然です。そのため新品のボイラーであっても「42℃設定にしていれば42℃ぴったりになる」というものではありません。
特に寒冷地の真冬日においては、給湯器と浴槽の距離に比例して誤差も大きくなる傾向があります。
設定温度よりも極端にぬるい場合
上記の商品を「循環金具、循環アダプター、循環フィルター」と呼びます。浴槽側からは銀色の部分(フィルター)しか見えません。お湯張りするとお湯が出てきて、追い炊きすると熱いお湯が出てくる部分です。
お風呂の温度が設定温度に対してぬるいという場合、給湯器本体よりもこの循環金具に問題があるケースが多いです。以下では循環金具に起こりがちな問題点について説明します。
エラー表示の有無を確認
まずは給湯器リモコンにエラー表示がないかどうかを確認してください。エラーがあると給湯器が運転を停止するので、追い炊き動作も途中でストップしてしまいます。
追い炊き関連のエラーで多いのはE632やE562です。特にE632は後述している循環フィルターの手入れ不足で表示されやすいエラーで、寒冷地の冬場における追い炊きトラブルでも散見されるエラーコードと言っていいでしょう。
循環フィルターはしっかり付いているか
浴槽内の循環フィルターは毎日お掃除しているかと思いますが、そのフィルターを外して掃除した後、斜めに取り付けてしまったということが多いです。この場合、浴槽内のお湯の温度が低いにも関わらず、途中で追い炊きが止まってしまうことがあります。
給湯器で温められたお湯は、浴槽内でしっかりと循環しなくてはいけないにも関わらず、フィルターが斜めに付いてしまっていると上手く循環できません。もしかすると給湯器で温められたお湯が、フィルターに跳ね返るような形でそのまま戻ってしまっている可能性があります。
このとき給湯器は「設定温度に到達した」という勘違いをしてしまい、追い炊きを停止するというわけです。この場合はしっかりとフィルターを付け直すことで解決するので、まずはこちらを試してみてください。
小さなお子さんがお手伝いでお風呂掃除をしてくれたという場合に割と多く見られます。
循環フィルターは綺麗か
フィルターに大量のゴミが付着している場合にも、同様のことが起こることが多いです。本来であれば浴槽内まで行き届かなくてはならないお湯が、フィルターのゴミのせいでそのまま給湯器側に戻ってしまうパターンです。
これはフィルターを掃除してあげることで改善することがあります。そして掃除後にフィルターを装着し直す場合は、角度が斜めにならないように注意してください。
もし汚れがひどすぎて給湯器内部までゴミが詰まっている場合は大幅な修理が必要になる場合がありますが、そうならないためにもフィルターはこまめな掃除を心がけましょう。ちなみに詰まりの程度によっては掃除で直る場合もあり、その場合は部品交換ほど高額修理にはなりません。
循環金具自体の不具合
フィルターはしっかり装着されていた場合でも、循環金具自体が経年劣化している可能性があります。循環金具はパッキン部分にゴムが使われているものも多く、ゴムは熱に弱いのであまり長持ちするような物でもありません。
しかし給湯器を買い替える際にセットで交換するという場合は非常に少なく、循環金具は「不具合が生じてから交換する」という場合が多いので見落としがちな部分とも言えるでしょう。フィルターをしっかり付け直しても改善しない場合は、給湯器の不具合か追い炊き配管の不具合、または循環金具の不具合の可能性が非常に高いため、専門の業者に依頼することをおすすめします。
ただしメーカーのサービス業者は給湯器メーカーの修理業者であり、配管や循環金具は機器外です。給湯器メーカーの業者を手配しても、循環金具に問題がある場合は別の業者(ユニットバスのメーカー)にて対応という場合もあるので、注意してください。
お風呂配管、追い炊き配管の汚れ
乳白色系の入浴剤の使用は要注意
前項でゴミ詰まりが原因の場合について触れましたが、髪の毛や衣類の繊維以外でも皮脂汚れや入浴剤の成分によって不具合が生じている場合もあります。配管自体が詰まっていたり、機器内部の熱交換器が詰まっているせいで正しく熱交換されていないことも少なくないでしょう。
特に乳白色系の入浴剤を使用した場合、温度を計測する部品に膜を張ってしまい、その測定精度を著しく低下させる場合があります。その場合は追い炊き配管の洗浄作業が必要になりますが、程度の軽いものであれば「ジャバ」などの市販されている洗浄剤で改善する場合があるので試してみるのがおすすめです。
入浴剤の使用について
上記はリンナイの公式サイトに掲載されているQ&Aを一部抜粋したものです。入浴剤の使用に対するアンサーとして、条件付きで使用可能としながらも「給湯器メーカーとして入浴剤の使用は推奨していません」と小さく記載されています。
0か100かで語るのであれば、入浴剤は使用しないほうが給湯器自体は長持ちします。とは言いながらも、入浴剤にも色々あって限りなく影響の少ないものも多いので、そういうものを選んで使用する分にはそこまで問題ないでしょう。
その区別は「入浴剤を入れた浴槽内に物を落としたと仮定して、その物がどこに落ちたかがわかるかどうか」で判断するのがおすすめです。このような特徴を持つ入浴剤は、商品によっては「透明タイプ」と表記されているので、これを基準に判断するといいと思います。
バスソルトシリーズは直ちに影響を及ぼすものではありませんが、追い炊きをして残り湯をそのままにしている状態だと給湯器には悪影響なので、配管クリーンなどの機能を使ってケアしてあげることをおすすめします。
お風呂が設定温度よりぬるい まとめ
- 新品の給湯器でも設置状況に応じて±2℃くらいまでなら誤差もあり得る
- 循環フィルターの装着ミス、お手入れ不足は真っ先に疑うべきポイント
- 入浴剤の使用直後から調子が悪いなら配管洗浄で改善するかも
今回ご紹介したのはあくまでほんの一部ですが、お風呂の追い炊きの温度うんぬんについては使用上の不具合であることが非常に多いです。そして修理に行って簡単に直してしまうと、お客さんのほとんどが「この程度のことにお金を払うのが馬鹿馬鹿しい」という感覚になっているのを感じます。
この手の不具合の場合は、機械の不具合であることとそれ以外の不具合であることが半々くらいなので、フィルターはちゃんとついているかなどの簡単な部分は修理業者を呼ぶ前に確認してみてください。