私は過去に陸上自衛隊に在籍していたことがあり、自衛隊を辞めてから10年以上が経ちました。はっきり言って一生続けるつもりで入隊したんですが、どうしても合わない部分が多くてドロップアウトしてしまったんですよね。
今回は特に「現役自衛官」の方に向けて書きたいと思います。その中でも特に「自衛隊を辞めようかどうか悩んでいる」という人に向けて書きます。私自身、20代の前半は陸上自衛隊に所属していて結果的にはまぁ辞めちゃったんですけど、辞める時にはそれなりに不安がありました。
私の場合は3月に退職したので「夏頃には辞めることを決め、そこから半年は左遷されながらも何とか職務を全うして退職」したわけですが、人によっては「もう限界だ!」という人も少なくないはず。
というわけで今回は、現職自衛官の方で「辞めたいけど、どうしたらいいかわからない」「辞めたいけど、別の仕事に就けるか不安だ」という人へ向けて「自衛隊を辞めたけど別に大したことはなかったし、別にスキルとか無くても何とかなるもんだよ」って話を書きたいと思います。
「シャバは不景気でキツいぞ!」の9割はガセ
私がやめる時はあの手この手で退職を食い止めるための説得がありましたが、多くの幹部あるいは先輩が「シャバは不景気でキツいぞ!」と言ってきました。でも、よく考えてみてください。それを言った人、一般社会で仕事した経験がある人ですか?
自衛隊では自分より年下でも先輩であれば「自衛隊歴が長い=偉い」ということになりますから、先輩の中には「すべてにおいて上回った存在だと勘違いする人」が多いです。
そういう人と四六時中接していることで、知らず知らずのうちにマインドコントロールされている部分って多少なりあると思うんですよね。それが結局「先輩はなんでも知っている」というような錯覚に陥ってしまうパターンになってませんか?
その人が一般社会と自衛隊を比べて物事を判断できるのであれば問題ありませんが、大半は自衛隊の中のことしかしらない堅物です。それに百歩譲って一般社会を知っていたとしても、その人にとってはそうだったというだけですし、一般社会には多くの会社があるので一つ二つ知っていたところで声高らかに語ることはできないと思います。
逆にそんなことを言われたら「じゃああなたは自衛隊を定年退職して体力も落ちてきて1番しんどいときに、そのキツい世界に飛び込もうとしてるんですか?」と聞いてみましょう。←冗談です。
自衛隊はいつ辞めるかの違いでしかない
自衛隊を辞めても多くの人は再就職が必要になる
生涯自衛隊に骨を埋めると言ったところで、今の定年は何歳ですか?私が辞めた当時は55歳が定年でした。奇しくも一般社会では現役世代と言われているバリバリ働く年齢に当たります。
私が当時、自衛隊の幹部たちから聞かされていたのは「自衛官は節度があって礼儀正しく、規律にも厳しいから一般の会社でも人気がある」と聞かされていましたが、実際に一般社会に出てみてそれはないんじゃないかと思っています。
「新卒でもない限りはスキルを持っていて当然」くらいの感じで見られる会社も多いですし、そもそも礼儀が正しくて規律を守るなんてのは社会人として当然です。現にあなたの所属する部隊の定年を控えた上官は再就職先が決まってますか?
いずれにしても辞めた後は隠居生活・・・なんてのは現実的にも難しいんじゃないかと思います。多くの人は自衛隊を辞めた後も再就職はしなければなりません。辞めた私からしたら「それが早いか、うん十年後かってだけの話」です。
再就職するときの武器を持っていますか?
実際に私が就職活動、転職活動を通じて痛感したのは「即戦力になれるようなスキルや武器を持っているかどうか」です。新卒の若者なら一から育てようという会社も少なくないでしょうが、それを人生折り返しの人間に対してリソースを割いてくれる会社は少ないような気がします。
もちろん「自衛隊でやっていたことを直接活かせる」という職場に再就職するのであれば問題ないでしょう。私は通信部隊に所属していましたが、だからと言ってNTTなどに行けるような感じでもありませんでしたし、ラジオ局やテレビ局に行くのも難しいような感じでした。
私はまだ若さを武器に立ち回れる二十代前半で自衛隊をやめたこともあり、何とか一般社会で経験を積めたことは不幸中の幸いだったと思っています。今、仕事を通じて磨いている技術こそが潰しの利く技術だと思っているからです。
私が自衛隊を辞めた理由
何かにつけて行われる宴会・飲み会がとにかく苦痛
仕事が楽しくない
自衛隊には常識のない大人が多いような気がする
二十歳を過ぎて「挨拶したorしてない」でケンカになる世界に嫌気が差した・・・etc
私が自衛隊を辞めるきっかけになったのは主に上記の4点です。他にも色々ありますけど、一言でまとめると「この世界であと30年間やっていくのが自分には無理なような気がした」という理由に尽きます。
お酒が飲めなかったのでとにかく宴会・飲み会は辛かったですし、みんなの前でやらされる余興も結構きつかったです。笑わせるのは好きでも、笑われるのが好きな人ってそんなにいないでしょうし。
私は根本的に自衛隊に馴染めない人間だったんだと思います。自衛隊って普通の人とは違う感性を持った人が多いような気がしたというか、言葉を選ばずに言うなら「井の中のジャイアン」的な。お山の大将気質の人って言うんですかね。
私は後輩でも年上の人にタメ口で喋れなかったり、人に対して「お前」と呼ぶのは抵抗があったので、そういう面でも向かなかったんだと自分でも思っています。
自衛隊を辞めて後悔していないか
自衛隊を辞めることは大したことじゃない
正直な気持ちで「辞めて後悔していない」とハッキリ言えます。ただ「続けられるんだったら続けた方がいい」とも思います。私は直感的に無理だと思ったので辞めましたが「辞めなきゃよかった」と思ったこともなければ「辞めて良かった」とも思っていません。
自衛隊で山ほど理不尽な経験をしたから、今の仕事で役に立っている部分もありますし、自衛隊の頃に知り合った人の中には未だに交流を持っている人もいます。そういう財産もしっかり残っているので、入隊したこと自体を後悔している気持ちも全くないですね。
私自身、一生続けるつもりで入隊したのにドロップアウトすることを決めたときは、はっきり言って「人生詰んだ」くらいに思いつめたこともありました。確かに自衛隊を辞めると決断した当時は「人生の大きなターニングポイント」のように感じましたけど、今思えば全然大したことないです。
今思えば自衛隊の休みの多さは異常だったと思う
私も一般社会のすべての会社を知っているわけではありませんが、私の経験や周りの友人たちと照らし合わせて見ても「自衛隊の休みの多さ」は超優遇されていると思います。当直だなんだと言われ、休みでも外出できない日なんかがあると嫌な気持ちになるのも分かりますが、それを差し引いても休みはめちゃくちゃ多かったことは間違いありません。
仕事に生きがいを探すのも大切で立派なことだと思いますけど、私としては「仕事は生きるための手段と割り切り、休みを有意義に過ごして人生を有意義にしていく」方が実現しやすいんじゃないかと思いました。
それを一般の会社でそれなりの給料を目指しながら実現するのには、それなりのセンスや才能がないとやや厳しいような気がします。
自衛隊で時間を有意義に使ってスキルや知識を磨くといい
もし今の私が「仕事をしながら何かの資格を取る」ことを考えたら、時間の面でやや難しいです。でも自衛隊にいた時は割と時間があったので、それを上手く使えれば自衛隊にいながらスキルを身に付けることが可能だと思います。
実務経験は難しくても即戦力になりえるような資格を取ったりすることは可能なので、そういう目線で自衛隊にいられれば一番いいのかなぁと思いました。安定した給料にあぐらをかいているのではなく、退官の時を考えて準備をしておけば50歳を超えてから急に慌てるってこともないはずです。
とりあえず自衛隊でお給料の一部をしっかり積み立てながら、FP(ファイナンシャルプランナー)とかの資格取得はおすすめです。今後、重要になってくる資格じゃないかと思いますし、難易度もそこまで難しくないし・・・。何か形にできれば自信も付くと思うのでおすすめします。
最後に
自衛隊って簡単に辞めさせてくれない感がありますけど、毅然とした態度で「辞めたい」って意志を伝えたら、ちゃんと辞めさせてもらえます(くれぐれも脱柵などはしないように)。
案外「辞めたい、辞めたい」って言っている人間が続いたりもするので、そういうのを吐き出せないような変に真面目な人間が一番追い詰められてしまうんじゃないかと思いました。自衛隊では「辞めたらこの世の終わりだぞ」みたいに言われる人も多いでしょうけど、そんなことはないですよ。どうにでもなります、大丈夫です。