カイジシリーズもいよいよ第3弾・賭博堕天録の紹介です。詮索では高レートパチンコで身の毛もよだつほどの勝負の末、大金を獲得したカイジですが、次に挑戦するギャンブルはイカサマで弱者を食い物にしているという社長との麻雀勝負となりました。
カイジ好き、麻雀好きの人はもちろんですが、麻雀を知らない人には「これを読むために麻雀のルールを覚えてほしい」と思ってしまうくらい、非常に面白い内容になっていると言っても過言ではありません。で今回は「賭博堕天録カイジ(全13巻)」の魅力や面白さをなるべくネタバレしない範囲で紹介します。
第3章 渇望の血
賭博堕天録カイジ 第6巻
今回は「17歩」と呼ばれる麻雀の対決になります。正直言うと麻雀のルールがわからなければ楽しめないかもしれません。というのも複雑に入り組んだ心理戦が繰り広げられるため、麻雀に詳しい人じゃないと意味がわからないと思います。
私は麻雀初心者で簡単な役とルールくらいは知っていますが、何回も読み直してようやく理解できました。麻雀が好きな人にとっては非常にスリリングで面白い展開が待ち受けていると言っていいでしょう。「イカサマは見抜いたことを相手に悟られず、それをいかにして利用するか」を描いている本作はまさに必見の価値アリです。
賭博堕天録カイジ あらすじ
前回の激しいギャンブルが終わり、強制収容所から抜け出すことに成功したカイジは裏カジノで苦難を共にした坂崎の家に住み込んでいたが、業を煮やした坂崎に追い出されてしまった。そんなときにかつて地下収容所の仲間だった三好と前田に出会い、新たなギャンブルを紹介される。
三好と前田は「勝てる方法がある」と言いカイジに近付いてきたが、カイジはイマイチ乗り気にならない。半ば強引に説得され、重い腰を上げるような形で足を運んだギャンブルの場には多くの困難と驚愕の事態が待ち受けていた。
17歩とは?
- 自動卓の機械がシャッフルした麻雀のヤマを立ち上がらせる。
- 立ち上がったら先攻後攻を決める。
- 先番になった者が、自分と相手の前にあるヤマ以外のヤマの好きな牌をめくり、これをドラとする。(その下が裏ドラとなる)
- これらが決まったら、手元の3分の砂時計をひっくり返す。
- 互いに目の前のヤマ17×2の34牌を自分だけが見えるように開け、3分以内に自由に13牌を選び自分の勝負する牌を決める。このとき選ばなかった牌が捨て牌となる。
- このときの手は『満貫以上』でなければならない。(ロンを宣言した時に確定している満貫、裏ドラを考慮してはいけない)
- 基本の掛け金は、勝負がついたときの役に応じて金額も倍増する。(ハネ満=1.5倍、倍万=2倍、役満=4倍、W役満=8倍)
- ツモ上がり、ダブリー、親・子の概念はない。
- 風牌は東・西固定。
賭博堕天録カイジを楽しむポイント
本来なら簡単に勝てる勝負だった…
コミックス4巻
かつての仲間から誘われたギャンブルの場で、いわゆる必勝法をチラつかされて参戦したカイジは、当然「自分が負けること」など微塵も感じていません。相手がイカサマをしているのを知りながら、あえて泳がしつつ自分が勝つようなロジックを組んでいます。しかし雲行きが怪しく、一本縄ではいかない状況にカイジは違和感を感じ始めるのでした。
この設定が非常に秀逸で「自分がカイジの立場だったらどうだろうか?」と考えた時に、カイジの凄さが手に取るようにわかるんです。カウンターの要領と一緒で、自分が相手をハメていると考えているときに「実はハメられていた」と気付いた時のダメージは相当なものだと言えるでしょう。その一連の流れが巧みに描かれています。
1億円を超える勝負
気付いたら1億を超える大勝負へと発展した17歩ですが、カイジはそんな大金を持ち合わせていません。カイジは「負け=死」の負けられない戦いを展開することになります。その死に方も具体的に明かされるのですが、心理的に追い詰めるという点においては非常に効果的だと思いました。
「実際にこういう場面に自分が陥ったら…」と考えるだけで背筋が凍ります。絶対に相手に振り込めない状況で、さらに現物を持ち合わせていない場合、様々な思考をこらすカイジの発想に度肝を抜かれると言っても過言ではないでしょう。
カイジのテンパり具合
賭博堕天録カイジ 第5巻
某バラエティー番組でも紹介されていましたが、ウン千万という勝負になると人は誰しもこうなってしまうのかもしれません。ましてカイジの場合は負けたら自分の命が危ういという状況ですから、普通に考えたらこうもなりますよね。
それにしてもテンパってる感が非常に伝わってきます。こういう焦りなんかの心理描写が非常にうまいので、読んでいるこちらは常にハラハラさせられてしまうし、思わず心の中で「頑張れ!」って応援しちゃう感じがスリル満点で面白いです。
カイジが仕掛ける秀逸なトラップ
賭博堕天録 第9巻
ここに繋げるまでの流れ、伏線、焦り、全てを凝縮させた秀逸なトラップが最後に待ち受けています。もう「すごい!」としか言いようがないです。「麻雀を100理解していたとしても、この発想には辿り着けないんじゃないか?」と思えるくらい、ぶっとんだ発想でトラップを仕掛けます。
これまでのカイジシリーズを読み込んできた方はカイジの勝負強さを見てきたかと思いますが、どのシリーズにおいても物語冒頭のカイジはクズを彷彿させる振る舞いをするため、いまいち勝負師としての姿を忘れがちになってしまいます。しかし、牙は抜けていなかったと言わざるを得ません。最後のカイジが仕掛ける秀逸なトラップはまさに圧巻です。
最後に
賭博堕天録カイジは、これまでのシリーズと違って登場するギャンブルが1つだけです。その分、圧倒的なボリュームがあるのですが、麻雀というジャンルの戦いが読む人を選んでしまう感は拭いきれません。
戦いのやり取りを見るだけであれば麻雀を知らなくても楽しめるでしょうが、細かな心理戦は麻雀を知らないと楽しめないでしょう。しかし麻雀が好きだという人にとっては至極の作品と言えそうです。もし麻雀が大好きで興味がある方は読んでみてはいかがでしょうか。