子供の頃に読んだことがあって、あるシーンが長らくトラウマになっていたのがこちらの「無頼伝 涯」です。面白いと思いながらもスリル満点の描写の数々は、子供の頃の私にとって何とも言えない恐怖感みたいなものがありました。
大人になってから「そういえば…」と思い、絵の雰囲気からカイジを読みあさるもののトラウマになったシーンは発見されず。「なんだっけなー」と探し続けてようやく見つかったのがカイジと同じ福本作品の本作だったんですよね。そこで今回はカイジとはまた違う魅力のある「無頼伝 涯(全5巻)」を紹介したいと思います。
※若干のネタバレありです。
無頼伝 涯ってどんなマンガ?
権力者にハメられ殺人事件の濡れ衣を着せられた主人公の涯が冤罪を訴えながらもそれを聞き入れてもらえず、遂には真犯人の証拠を掴んで人間学園からの脱走を試みるという物語です。人間学園では非人道的な扱いを受けながらも上手く立ち回る様子や、現地の教官たちに見つからないように逃げ回る様子がスリルたっぷりに描かれています。
絵こそカイジのような雰囲気がありますが中身は全く異なり、頭脳戦が描かれることの多い福本作品にしてはアクションシーンが多く、福本作品を全体的に見回してみても異色の作品だと言えるでしょう。連載当時は1年で打ち切りを迎えていますが、いたずらに長く引き伸ばしている作品よりも全然良いと思います。
無頼伝 涯を楽しむポイント
人間学園からの脱走シーン
コミックス3巻
1番の見所は人間学園からの脱走シーンです。断崖絶壁に建てられている人間学園、しかもゴム弾とはいえ殺傷能力のある銃を手にしている教官たちを見事にかいくぐって、生きて脱走できるかどうかというのがスリル満点に描かれています。見つかった際の拷問、下手すると殺されかねないという狂気も合いまって脱走シーンを読み進める手にも力が入ることでしょう。
コミックス4巻
冒頭にも書いた私のトラウマシーンはこちらです。脱走したと見せかけてまだ現場に残っているというシーンなんですけど、その隠れる場所と言うのが「灯台下暗し」もいいとこなんですよね。「くしゃみでたらどうすんの?」とか「お腹鳴ったらどうすんの?」って部分が引っ掛かって、ハラハラしながら読んでいたのを覚えています。
作品のタイトルとかも忘れるくらいだったのに、このシーンだけはずっと忘れることはありませんでした。
迫力あるアクションシーン
コミックス1巻
いわゆるバトル漫画のような目を見張るアクションシーンという種類ではなく、やはりカイジっぽさが垣間見えるようなアプローチです。ただし主人公の設定が割と武闘派の位置付けだということもあって、妙な威圧感のようなものが感じられます。
相手が何を考えているかを探って隙を伺うというような、一種の心理戦の延長とも思えますね。ただ本作では殴ったり殴られたりというシーンが結構出てくるので、そういう意味では本作のスリルに色を添えているという意味でも新しい作風と言えそうです。
福本作品ならではの恐怖の煽り
コミックス1巻
指を切り落としたり、血を賭けて麻雀したり…なんてことを思いつく漫画家さんが描いているわけですから、読者に対する恐怖の煽りはお手のものです。感情移入していればしているほど恐怖を覚えることになります。
実際にグロシーンみたいなものはでてこないので、あくまで恐怖心は読者の脳内で補完されるものなのですが、それって結構な高等技術ですよね。こういう部分を見ていると福本先生の凄さが伝わってくるような気がします。
涯が陥れられたトリック
ちょっと無理矢理感はありますが、一応「なぜ無実の涯が罪を押し付けられてしまうことになってしまったのか」の一部始終についても、物語を読み進めていくうちに明らかになっていきます。
実際に「人間学園」みたいなものが存在している世界の話ですから、そこまで現実志向ではありません。それでも真犯人の証拠を見つけ、それで自身の無罪を主張するまでの流れはしっかりと描かれています。
一種のヒューマンドラマ
本作には人間学園にて恐怖で洗脳されている全員を立ち上がらせるという、一種のヒューマンドラマみたいなものも垣間見えます。打ち切りを受けての急発進・急停止感こそないものの、最終的には「なんのマンガ読んでんだっけ?」ってなるケースも少なくありません。
もしかすると打ち切られるということで、シナリオをまとめるための苦肉の策だったのかもしれませんが、最後のエンディングに対して思う部分があまりないというのは残念でした。
最後に
スリルのある鬼ごっこだと思えば途中の脱走シーンは本当に面白いと思います。脱獄系のドキュメンタリーとかが好きな人なら絶対に楽しめるはずです。ボリュームも全5巻と読みやすくなっているので、興味がある人はぜひ読んでみてください。
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